『ダンジョンの進化』
翌朝マティアスは、すでに出発の準備を行なっているリーダーの元を訪れた。
「やあ、おはよう。よく眠れたか?」
「ああ、おかげさまでぐっすりだ。
久しぶりの酒は美味かった」
「ちょっと話があるんだが、今いいか?」
マティアスは、まだ荷造りの真っ最中である冒険者から少し離れたところにリーダーを誘った。
「昨夜の話なんだが……
このダンジョンは最近、かなり様変わりしている。
あんたたちが持ってるかどうか知らないが、ギルド発行のダンジョン地図はもう役に立たないほど変化してるんだ。
「レベルアップか?」
「ああ、昨夜俺が聞いた雪の積もっていた階層、16階層なんだが、つい最近まであんなものはなかったんだ」
マティアスは16階層の情報を、彼らに教える許可をオフェーリアからもらっていたのだ。
「あんたたちがあそこを通り抜けられたのは、単に運が良かっただけだ。
あの階層は“餌”を求めていて、満腹の時だけ吹雪が止むんだ」
まるで与太話のようだがマティアスは真剣だ。
その様子を見て取って、リーダーは一度腰を下ろすことにした。
それにマティアスも続く。
「え……っと、あんたたちのパーティーは最近このダンジョン都市に来たのかな?
俺もそんなに長くないが、町で見かけたことがない」
「ああ、そうだ。
冬季ギリギリにこの町に着いて、準備を整えてすぐに潜ったんだ。
昨日も言ったが宿屋で無駄遣いするつもりはなかったからな」
「じゃあ少し前に“湧き”があったことも知らないんだな。
……たぶんそれが原因なのか、結果なのか。
浅層は大して変わらないが、10階層くらいから出現する魔獣のレベルが上がっているんだ。
以前は15階層くらいまでなら下っ端たちでも行けたが、今は格段に強い奴が上がって来ている」
「あの穴熊か。
確かに下っ端には手が余るだろうな」
「ああ、それで知っておいて欲しいのは16階層の通り方だ」