『質問』
「うちは主が生産職なので、素材の収集がメインでここに入って結構経つが、あんたたちはいつ入ったんだ?」
警戒しているだろうリーダーに、マティアスが水を向ける。
「正確な日数はちょっと……
だがひと月は経っていると思う」
ダンジョンは階層によって昼夜が曖昧なところもあって、オフェーリアのように時を刻む魔導具を持っていないと、時間の経過がわからなくなったりする。
連中はそういう状況であるようだが、多くの冒険者たちと同じように案外頓着ないようだ。
「そうか、ところでこの階層までくる途中、雪の降っていた階層はなかったか?」
「結構最初の頃、雪の積もった階層があったな……
おい!マルコ!
あの雪のあった階層は何階層だった?」
声をかけられた男、マルコは副リーダーのような存在のようだ。
「……15〜16くらいじゃなかったですかね?
それが何か?」
リーダーはもういいと手を振る。
そうするとマルコは酒宴に戻っていった。
「雪は止んでいたんだな?」
「ああ、寒かったが一気に駆け抜けたよ。
あんなところで夜を明かすなんて御免だね」
どうやら彼らの直前に、ダンジョンが“食事”をしたようだ。
「ふうん……
つかぬことを尋ねるが、あんたたちの前にダンジョンに入ったか、途中で抜いたパーティーはいなかったか?」
「俺たちがもぐった頃は、例年より地上が冷え込んでいて、宿にあぶれた連中が緊急避難的にダンジョンに入っていた。
そんな連中は結構追い抜いて来たが、俺らの前にいた連中の事はわからないな」
でもどうやらそれなりの数の冒険者が入っていたようだ。
「そうか、上には結構いるんだな。
わかった、悪かったな」
一緒に飲もうという誘いを断って、マティアスは天幕に戻っていった。




