『巨大樹の森』
「いつも思うんだけど、ダンジョンってホントでたらめよね」
目の前の森、それは超巨大な幹を持つ、そのてっぺんを窺うことのできない巨大樹の森であった。
それが視界の先まで続く光景……圧巻だった。
「これは、このダンジョンがランクアップしたのかもしれないな」
「ランクアップ?」
「そう、ダンジョンとは発生した時には大体縦穴だけなんだ。
それが年月を経て魔素や生き物の命を取り込み、だんだんと大きく、階層を増やしていくんだ」
「ほぉ〜」
オフェーリアの知識は魔法に偏っていて、特に冒険者としての知識は駆け出しに近い。
「確かに10年ほど前に来た時は、もっとシンプルだったね」
浅階層は基本洞窟や岩場タイプで、どちらかと言えば暗い。
それが5階層くらいから突然草原タイプとなって、どういうシステムなのかここには太陽が輝いていたりする。
オフェーリアたちが手こずった16階層でも、吹雪の中ちゃんと昼夜があるのだ。
「それでもこれは説明つかないよ。
まるで巨人のための森だね」
2人は森の中に足を踏み入れ、特にオフェーリアは【探査】しながら進んでいく。
「……マティアス、この森にはずいぶんな数の魔獣がいるわよ」
「16階層がアレだったからな。
しばらく誰も来てないから溜まってるんだろう」
オフェーリアはどんな魔獣が来るか、ワクワクする。
願わくば、調薬の素材になるものなら大歓迎なのだが。
「!
さっそくおいでなさったようよ!
前方左側……あれはっ!?
マティアス、待って!」
2人に向かってくる、その姿を見た途端、ストップをかけたオフェーリアは一歩前に足を踏み出した。
「あれは【ベルベットモンキー】
それも貴重な白色だわ!
マティアス、これは私に任せて!」