『その顛末』
「想像通り、彼らの就寝中に結界石の効果……おそらく動力が切れたのね。
それで凍死した。
まずはそれが真相ね」
マティアスはそれを想像して、ゾッとする。
おそらく前夜と同じく、深く寝入っていたのだろう。彼らが“手に入れた“結界石を信じて、見張りも立てずに。
「普通なら気がつきそうなものだけど、一瞬で凍りつくほど気温が下がっていたのかもしれない。
……ダンジョンも本気を出したのかもしれないわね」
「ダンジョンの本気……」
「ダンジョンは自らの中で命を失ったものを吸収して、おそらくそれが活動源だと思うの」
それは今目の前でも行われている。
凍死した元傭兵たちを“捕食”しているのだ。
「着目すべきはそれではないの。
そう、ダンジョンは、この階層は是が非でも“贄”を欲しがったのよ。
……私は、この階層の吹雪が侵入者を閉じ込め、取り込むものなのではないかと考えていたの。
なので17階層への階段を発見してから実験をするつもりだったのよ」
「実験?」
「そう、異空間収納に入っている魔獣の骸を取り出して、ダンジョンに“与える”つもりだったのよ。
そして、それがどれだけの数必要か、そもそも魔獣でも良いのか、人でなければダメなのか……どうすれば吹雪が止むのか試してみるつもりだったの」
そうこうするうちにタイミングよく元傭兵団の連中がやってきて、貴重な実験材料になってくれた、と言う顛末なのだ。
吹雪が止んだのは、砕いて言えば『お腹いっぱい、ありがとう』と言うことなのだろう。
「止んだ状態がどれくらい続くのか、それも観察した方がいいわね。
……ハァ、そこまでする必要があるのか、甘すぎるかしらね」