『因果応報』
「そもそもあの人たちに貸し与えた結界石……あれは半日ほどしか結界を維持できないのよ」
「それは……」
「あの手の魔導具は、効果の付与とともにそれを維持できる力というか、燃料?を付与してあります。
その残量が半日ほどだということなの。
だから……」
今頃はただの石になっているだろうと、オフェーリアは続けた。
「では、連中は?」
オフェーリアは黙って肩を竦めた。
そして。
「だからマティアスが思い悩むことないの。
今頃どうなってるのか、まあ想像はつくわよね」
それと、とオフェーリアは言う。
「私の推測が証明されたようだから、これからは対策を立てられるわ」
マティアスにはその意味が理解できない言葉を発して、にっこりと微笑んだ。
「うふ、すっかり雪が止んでこの階層の全容が現れたわね。
ねえ、まずは例の人たちの状況を確かめてから、一度16階層の入り口まで戻っていいかしら」
「それはいいが……
また降り出したらどうするつもりだ?」
「ん〜、おそらく大丈夫だと思うけど、その時はその時ってことで」
結構大雑把なところがあるオフェーリアだ。
「では支度して出発しましょうか。
おそらくもう残っていないでしょうが、痕跡くらいはあるでしょう」
オフェーリアの言っていることにピンとこないマティアスだったが、その意味はすぐにわかることになる。
「あの吹雪だもの、そんなに遠くまでは行ってないわ。
……ではいきましょうか」
結界を解き、天幕を収納する。
そして【探査】をしながら進んでいった。
そして一刻ほど進んだところにそれはあった。
「テントなんかはそれなりに残ってるのね。
……見張りも無しに、無防備に寝てたみたい」
マティアスと2人、半ば雪に埋れたテントを改めていく。
そうするとオフェーリアがあるテントでそれを見つけた。
「マティアス、こっち」
マティアスは言われるままにそれを見て、ギョッとした。
「“喰われている”最中のようね」
それは、マティアスには見覚えのある若い男の、この世での最後の姿だった。