『吹雪……そして』
「まあ……気分が悪いから、ここでもう一泊しましょう。
そんなにカリカリしないで。
私は気にしてないから」
マティアスが思ったほど、オフェーリアは感情的にならない。
そのことを訝しく思いながらも、彼は装備を外して椅子に座る。
「さあ、お腹空いたでしょ?
遅くなったからお昼と兼用ね」
まずはチャウダースープとパン。
スープの具材は定番の玉ねぎとベーコン、パンは黒パンだ。
そこに特大のオムレツと厚切りハムを添えた。
マティアスがあまり好きでない生野菜も出されて食事が始まる。
そして満腹になるころには、すっかり機嫌は治っていた。
「ところでマティアス、あなた凍傷とか大丈夫?」
ドアを開けて、外の吹雪の様子をみているオフェーリアが、隣にいるマティアスに話しかけた。
「足先はもらった護符で、指先は手袋をはめてたので問題なかった。
本当に助かった」
まさか冬籠りのためのダンジョン行でこんな目に遭うとは思いもよらなかったマティアスが苦笑している。
「そう、それならいいの。
でも念のため、今夜もゆっくりと湯に浸かってていねいにマッサージをして」
オフェーリアがマティアスの大きな手を取ってマッサージの見本を見せる。
その時マティアスの頬が上気していたのは血行が良くなったからなのだろう。
異変が起きたのは翌朝、それも夜中と言っても良いような早朝だ。
それまで視界を遮るような吹雪が、突然止んだのだ。
その時はオフェーリアとマティアスの2人ともが就寝中だった。
朝になって雪が止んでいることに気づいたオフェーリアが不敵な笑みを浮かべていたのだが、マティアスにはその理由がわからずにいた。
それは雪の止んだ早朝に起きたある事象が起因していた。
その主役は、結界石を持ち去った元傭兵団。
さて、彼らに何が起きたのかと言うと……