『新たな結界』
「リーダー!一体どうなるんだ!」
天幕に入っていったマティアスを見て、若手たちが騒ぎ始める。
中にはまた得物で結界を叩き始める者も出る始末。
ベテランたちは慌ててその連中を止め、叱り飛ばしている。
「大人しくしろって言ってるのがわからんのか?!
人様の庭先で騒ぐんじゃない!」
リーダーの怒鳴り声が一番煩いのだが、それを指摘するものはいない。
そうこうしているうちに大男が再び姿を現して、今度は結界から大きく離れて雪の中、元傭兵団の面々を見回した。
「あんたたち、何人いるんだ?
今、主に伺ったところ、結界内に入れることは叶わないが、新たに結界を張ることを許して下さった。
……このくらいでいいか。
とりあえず、これで今夜は凍えず休めると思うぞ」
マティアスは天幕の並びにそれなりの広さを結界石で囲んでいく。
元傭兵団の面々はすべてその囲みの中にいて、マティアスの行為を茫然と見つめていた。
「雪が止んだ!」
正確には結界内に入ったことで吹雪が遮断されたのだが、特に若手たちにとってはどちらでも良いのだろう。
ベテランの連中が先に動き出し、まずは足元の雪を取り払った後、火を熾し始めた。
「それと、結界から出ることはできるが、再度中に入ることはできないので気をつけてくれ」
リーダーは素早く周りを見回していた。
そしてマティアスが置いた石に目が留まる。
「結界が作動している間は動かせない。
……悪いが、あとは自分たちでやってくれ」
「ああ、本当に恩に着る。
主殿によろしく言ってくれ」
頷いたマティアスが入り口と思われるところから出ていって、元傭兵団の連中の緊張の糸が切れる。
「はぁ〜
あの冒険者、殺気が途切れなかったな」
「主って何者だろう」
それぞれが勝手に話していたが、リーダーはまだ冷や汗を止めることができなかった。
「あの冒険者、相当な腕だぞ」