『元傭兵団』
「あ〜 どうしようかな」
どうやらオフェーリアたちの後からダンジョンに入ったパーティーが追いついたようだ。
ここまで来れるということは、それなりのランクの冒険者たちだということだろう。
オフェーリアにとっては、いつもなら無視する案件だが、さて、今回は如何に。
【蒼竜旅団】
それは少し前まで大陸中にその名を轟かせていた傭兵集団だ。
だが、つい先年ある国同士の諍いに参加し、負けを喫した方に所属していた彼らは再生不可能なほどの被害を受けた。
そして彼らはいくつかのグループに分かれ散り散りになった。
そのうちのひとつが彼ら【朱鳥】だ。
はっきり言って、あまり素行の良い連中ではなかったが、それが幸いしたのか彼らは14人のクランを維持していたのだ。
その【朱鳥】はこの冬、冬籠りの費用を節約するためダンジョン攻略をすることにした。
本来ダンジョンとはその近くにあるダンジョン都市の冒険者ギルドで登録してから入場するものなのだが、彼らはそれをすっ飛ばして、直接このダンジョンにやって来たようだ。
「リーダー!
この階層はおかしい!
引き返して上の階層まで戻った方がいい!」
階段を降りてきて雪が降っているのを見たとき、驚きはしたがここはダンジョン、何でもアリである。
「いや、まだここは16階層と浅い。
こんなところでは稼ぎにならんぞ!」
「まずは厳寒仕様の装備に変えよう。
おい、外套を出せ」
さすがに元傭兵団である。
大容量のアイテムバッグを持つ団員が何人もいるようだ。
こうして彼らは16階層に足を踏み入れたのだが、進むにつれて次第に雪の勢いは激しくなり、今はもう吹雪と言ってよい降りになっている。
その荒れた天候によってあたりは日暮れのように薄暗く、今が一体何刻ごろなのかすぐにはわからないほどだ。
「これはいよいよヤバいかもしれんな」
リーダーと呼ばれた、元傭兵団の部隊長だった男は、傍らの仲間に聞こえない声でボソっと呟いた。
もう視界はほとんどなく、いよいよ拙い状況だった。
「俺らって、いつから歩き続けてるんだろう……ほとんど休憩もしてないし、リーダー、ちょっと休ませてくれませんか?」
元傭兵団の中でもひときわ若い男が、もうこれ以上動けないといった様子で見つめてくる。
休憩については彼も考えてみていた。
だが一度足を止めればもうそれ以上進むことができなくなるのではないかと、そう危惧していたのだ。
せめて森など、雪を遮ることが出来るものがないかと確かめながらここまでやってきたが、吹雪によって視界はだんだんと奪われていく。
「リーダー!あれは灯ではないですか!?」
目の良い斥候の男がそう言って駆け出していく。
そしてそれを追って全員が駆け出した。