一マス進んで振り出しへ
「そういえば、まだ私の本当の名を伝えていませんで
したね」
その前に色々聞きたいんですけど。
「私は、シクノシュ・エサハヤタ・トミハスノリ・カ
コニホン・ドミラージ・デ・サファリア…」
「あとどれくらい掛かるかな、それ」
「そうですね…あと十分ほど待って頂ければ」
「もう、天子でいいよ…」
だって、長過ぎるもん。
「いえ、それは人間界においての名ですから、やはり
この天界における名でないと…」
(めんどくセェェェ!!!!)
いや、無理だから。いちいち十分も掛けて名前呼ぶとか無理だから。六回読んだら一時間経っちゃうから。
何か良い方法はないか、色々とありすぎてショート仕掛けている頭を必死にフル回転させる。
「…あだ名じゃダメか?」
「あだ名、ですか…」
天子がコテンと首を傾げる。
可愛いけど今はそんな事を言ってられない。
「あだ名で天子って呼ぶのは」
「ダメです」
即答かよ、おい。じゃあ、次だ。
「天使は?」
「ダメです」
「神様」
「ダメです」
「バニーガール」
「わけがわかりません」
俺もそう思う。
「じゃあ、何ならいいんだよ…」
まさか、毎回あの長過ぎる名前で呼べって?
(ゼッッッタイにいやだぁぁぁ!!!!)
「…そうですね、可愛らしい名前なら」
「可愛らしい名前ねぇ…」
マロ。いや、犬っぽいな。クルミ。いや、それもなんか動物っぽい。ジャム。これは俺の犬だな。
そこでふと思う。
(…帰れるよな?)
「なあ、どうやったら帰れるんだ?」
「え?ああ、その話ですか」
その話って…結構重要なことだぞ、これ。
天子は微笑んだ。
「帰れませんよ」
「…は?」
は? は? は? は?!
(はぁぁぁぁぁぁぁぁ?!?!?!?!?!?!?!)
「ふざけんじゃねぇよ!!!!何で帰れねぇんだ
よ!!!!!」
「何ででしょう?」
天子がまたしてもコテンと首を傾げる。
「可愛くねぇよ!!!いや、可愛いけど、ってそう
じゃねぇぇぇぇ!!!!」
お、落ち着け、落ち着くんだ神道。冷静さを失っては
ならない。クールにだ、クールにいこう。
「ふぅ…なあ、て…」
「そういえば、今日は神道君の好きな〈こんにちは、
そしてまた会う日まで〉の最終回でしたね」
(…お、俺の……)
「…俺の普通を返しやがれぇぇぇぇ!!!!!」
「全てが終わればきっと帰れますから」
(なんだよ、それ!!)
「今だ!!今すぐに俺を元の世界に戻せ!!!」
「……」
「…嘘だ、嘘だろ?なあ、嘘なんだろ?!」
「…テヘッ」
「……」
(嘘だろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!)
ふざけんなよぉぉ!!先週からずっと楽しみにしてたんだぞ!!真央が神坂に助けられるシーンだぞ!!!
(感動シーンなんだぞぉぉぉ!!!!)
「まあ、安心して下さい。天界と人間界とでは時間の
流れが違いますから」
「どのぐらい違うんだ?!?!」
「あちらでの一年が、こちらでの一那由多です」
「初めて聞いたわ、一那由多って。てっきり死語かと
思ってた」
「そうですね…確かに聞きませんでしたね」
「うん、だろ?」
あれ?
(話すげぇ、ずれてんじゃねぇかよ!!!)
あれ、そもそも何の話から始まったんだ?どこに話を戻せばいいんだ?
「ところで、私のあだ名の方は…」
「ああ、そうだった」
てか、結構期待してたんだな…
「…動物っぽいけどいいか?」
「物によります」
「…クルミ?」
「なるほど、確かに動物っぽいですね。それに、それ
だと新しく付けられた名前みたいです」
ですよねー。
「…でも、可愛いのでクルミでいいです」
「そ、そうか」
さっきのはダメだから言ったんじゃないのかよ…
「あ、そうそう、すっかり話が変わってしまいました
ね」
「え?」
なんのことだ?
「…そ、それで……」
天子改めクルミがもじもじとする。
「私とは婚約してくださるのでしょうか…?」
「……」
(忘れてたぁぁぁぁ!!!!!)




