夢も希望もありゃしない
よく分からんやり取りを終えたのか、クルミが振り返る。
「それでは、行きましょうか」
毎回思うんだが、コイツは主語という物を知らないのか。
「どこに行くんだよ」
「アパートです」
あ、この世界にもアパートあるんだ…
「ほう、アパートとは何だ?初めて聞いたわい」
アパート知らないんだ…
「部屋を借りて住むところですよ」
「むむ、部屋を借りるのか…」
ペンタンが少し嫌な顔をしながら呟く。
「何か問題があるのですか?」
「…昔にちょっとな……」
ああ、なるほど。トラウマがあるのか。こういう話は
深掘りしない方が良さそうだな。
「何かあったんですか?」
いや、どうして君はいつも俺の考えを裏切るんだ?
「知り合いに部屋を借りた事があってだな」
あっさり答えんなよ。気遣った俺が馬鹿みてぇじゃん。
「その時に部屋で、その…エロ本を見つけてだな…」
ペンタンは少し頬を赤く染めながら呟いた。
てか、アパート知らねぇのにエロ本は知ってんのかよ。
「へぇ、どの様な物だったんですか?」
聞くなよ!!少しは自分の好奇心を抑えやがれ!!
ペンタンは更にどんどん顔を赤く染め、モジモジとし始めた。
「え、えっと、は、裸の女の写真があった…」
そりゃエロ本ですからね。
「具体的にはどの様な写真だったんでしょう?」
「なあ、それ聞くのか?お前には好奇心を抑えようと
思う気持ちが無いのか?」
俺が堪らず聞くと、クルミは少し考えてから言った。
「ありますよ。こう見えて今でもかなり抑えている方
ですよ」
これで抑えてるんですか…もう、俺にはお前が分からないよ…
「えっとだな…」
「いや、お前も言わなくて良いから。てか、よくこの
タイミングでそれを言おうと思ったな」
コイツもコイツで変なヤツだよな…
「そ、そうか。そう言って貰えると助かる」
「いや、別にそ」
「お陰で紐で縛られた女が、体に機械を入れられいる
写真だったと言わなくて済む…」
そう言うとペンタンは安堵の息を吐いた。
「……」
これ、ツッコミ入れた方がいいの?てか、振りにしか
見えねぇんだけど。
「あらあら、そんな刺激的な物だったんですね」
お前は引っ込んだろ!!!!!
「…っは!!」
いや、何が「っは!!」だよ?
嘘だろ、おい…勘弁してくれよ…
「ちなみに、他にはどの様な」
「お前、マジで黙れよ?!?! 少しは遠慮ってもん
をしろよ!!!!」
クルミが真面目な顔で言い放つ。
「今の世の中、自分からぶつかって行かなければ厳し
い社会の波に呑まれてしまいますよ」
「黙れぇぇぇぇ!!!!! いい事言って、自分の評
価を上げようとしてんじゃねぇぇぇぇ!!!!!」
「がはっ!!」
俺は本日二回目の腹パンをクルミに入れる。
クルミはまた同じように腹を抱えて蹲りながらも、呟いた。
「お、女の子のお腹を殴るなんて…それも二回も…」
「うるせぇよ!!!! お前みたいなヤツを女だって
思いたくねぇ、てか思えねぇよ!!!!!」
頼むから、まだ俺に夢を見させ続けてくれ…
「あ、あとは…」
「テメェも黙ってろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「かはっ!!」
ペンタンにも同様に腹パンをかます。
「うぅ、お、お腹がぁ…」
こちらもクルミと同じような格好をし、呟いた。
「お、女の子の」
「黙れぇぇぇぇ!!!!!」
「おふっ!!」
俺はペンタンの脇腹を蹴り飛ばした。
二人の呻き声が聞こえる中、俺は一人呟く。
「頼むからもう帰らせてくれ…」
それから十分後。復活したクルミに連れられ、俺達はアパートへと歩き出したのであった。




