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ロックオンガール

「オレにだって、敵わない奴はいるぜ?」

「そうなの?」

「まぁ単純にオレの空間を操る力よりレベルの高い力を持つ奴らには苦戦するし」

何か話してみると、結構普通なんだな。

「そっか。ていうか1つ目の力って?」

いや、逆に強い証拠か。

「オレは初めて戦う相手と、弱い奴には主戦力を見せないようにしてる」

う・・・弱い奴。

しかし冷たく言い放ったと思いきや、シンジは再び戦う事を楽しがるような笑みをうっすらと浮かべた。

「ほら、早く来いよ。戦う為の力なら、戦いの中でなきゃ覚醒出来ないぞ?」

ふう、カメレオンでだめなら・・・。

“カメレオンの擬態”を解除してすっと意識した途端、一瞬だけむず痒くなった背中から“ワシの翼”が生えてきた。シンジの挑発するような笑みがふと脳裏に焼き付く中、翼を思いっきり羽ばたかせると地面を叩くような風音と共に体は浮き上がり、視界がすごく広くなった。

うわ、あれだ、鳥目ってやつだ。すごい、世界が鮮明すぎる・・・。

旋回しながら上昇し、そして降下と共に重力も味方につけながら精一杯に拳を振り下ろす。しかしシンジはそれすらも片手で受け止め、そこにはシンジの足が地面を擦る音が響いていくが直後、シンジはそのまま僕の重さを利用して一本背負いしてきた。

うわっ・・・と。

負けじとシンジの腕を掴み、何とか体を捻らせて地面を踏ん張って逆にシンジを投げ飛ばす。しかしスタントマンばりに激しく転がっても素早く立ち上がったその態度からはダメージを伺わせず、むしろその微笑みから余裕と闘志を感じさせると直後にシンジは地面を蹴った。その人間離れした跳躍力を前に翼を羽ばたかせ、空中に逃げたがその瞬間、シンジは何も無い空中で跳び上がった。

え!?・・・。

そしてシンジの拳は僕の頬に叩きつけられ、僕の視界は激しく回った。

・・・・・ぐへっ、つう・・・。何で・・・。

地面に墜落した体を起こし、顔を上げるとシンジは見せつけるように笑っていて、でも悪意の無いその佇まいはただ自分の無力感を痛感させた。

「オレの2つ目の力は、元々何も無い空間を足場にする為のものなんだ。それが覚醒して、固められる範囲が広がったんだ」

「ていうか、やっぱり無敵じゃん」

そう言うと、シンジは吹き出すように笑った。

いやそこ、ツボなの?・・・。

「ていうか、あんたの力ってどういうものなんだ?面白いな」

「DNAラーニングっていって、動物の遺伝子を取り込めるんだよ。ストック出来るDNA情報が3つで、2つなら同時に発動出来るんだ」

「取り込むものと組み合わせ次第で、あんたも十分無敵になれんじゃないの?」

「えへ、そうかな」

「良いこと教えてやるよ。さっき鉱石使わずにポケットにしまったよな?鉱石って、お守りみたいに持ってるだけでも能力が強化されたり、覚醒しやすくなるんだ」

「まじで!?」

僕より早く口走った究に思わず振り返る。

「もっと早く言ってよ」

するとそう言って究はノブに振り返るが、ノブは悪びれる事なく、ただ頭を掻いた。

「そういや言ってなかったな」

シンジ君って優しいんだなぁ。無愛想で強くて、でも根は優しい。何か、もうそれだけで負けてる気がする・・・。

「まぁ鉱石ならまだあんだ。今は特訓が先だろ。今度は3対1でどうだ?コクエン戦だってそうなるからな。言っとくが、シンジはそこら辺のテロリストなんかより断然強ぇぞ?本気で挑めよ?それに本気の方がより覚醒しやすくなるしな」

「あれ、ていうかそもそも覚醒ってどうしたらなるの?」

その瞬間、究のノブに対するタメ口に勝手に焦りが募る。

「定義自体はシンプルだ。感情が高ぶった時に能力は覚醒する。例えば純粋に怒るとかな。まぁダメージが蓄積されてたり、疲労が限界だったり、その中でそれでも本気になってもっと上を目指したいと望めば、能力が応えてくれるって感じだな」

ああ、だから戦いでなきゃ覚醒出来ないって。

「要は気合いって事?」

すると今度は凉蘭がタメ口で質問するが、ノブはむしろ微笑みでもって持ち前の気さくさをより醸し出す。

「そうなるな」

気合い、か。シンプルでいいな。鉱石使って能力をデザインする時も条件は望むことだし、望むことと能力って、何か深い関係でもあるのかな?

そして今度は3人に囲まれる状況になったが、むしろシンジの余裕と闘志の微笑みはいきいきしてるように見えた。

「スランバー!ベーグ!シバー!」

究の目の前に、青白いクリスタルのような見た目のスランバーに続き、赤いクリスタルのような見た目のベーグ、黄緑のクリスタルのような見た目のシバーが出現すると、直後にスランバーは4本の吹雪を作り出し、ベーグは自ら炎を纏って剣身のように鋭く尖り、シバーはけたたましく迸る微かに眩い雷光を自身に纏った。

「総攻撃だ!」

ベーグとシバーが突撃していき、同時にスランバーは2体の後方から4本の吹雪を撃ち放っていく。そんな怒涛の攻撃を前にしてもシンジは冷静にファイティングポーズを取り、そしてベーグ、シバー、吹雪たちの順に捌いていった。するとその時、どこからともなく“一閃の稲光”がシンジに落ち、ダメージは無さそうだが一瞬だけ硬直させて気は逸らせたその攻撃に、ふとその場の空気も止まった。

誰だ?・・・。究、じゃなさそう・・・てことは。

見ると凉蘭は遠くから、人差し指と中指の2本指でシンジを差していた。

「お、凉蘭か?今の」

感心するような声色で究がそう言った時、凉蘭はゆっくりと手を下ろした。

「うん」

どういう力なんだろ、魔法系かな。

「ねぇちょっと、壁作るから攻撃してよ」

そう言いながら、凉蘭は右手は2本指のまま、何やら目の前の空間に向けて、まるでスマホで地図をズームするような動作を両手を使って大袈裟にやってみせた。

「ここ」

そして直後にそう言いながら凉蘭が目の前の空間をノックすると、何も無いそこからは正にノック音が鳴った。

いいなぁ、シンジ君もそうだし、やっぱり魔法系のシールドって鉄板なのかな。

「あぁ」

しかし返事はしたものの、シンジはその場から動かず、その場で目の前を思いっきりぶん殴った。当然拳は空を切るが、同時に空間は波を打ち、衝撃波となって凉蘭を襲っていく。

そんなことも出来るのか・・・。

「スワップ」

凉蘭の呟きの後、衝撃波は衝突音を掻き鳴らして凉蘭の目の前で跳ね返ったが直後、衝撃波と壁の衝突点から一閃の稲光が放たれ、逆にシンジを襲った。

おおっ!・・・トラップ系・・・。

光の速さでの反撃にシンジは成す術もなくひっくり返るが、やはりダメージは伺えず、むしろその笑みには火が点いたような闘志が伺えた。シンジが跳んだ時にベーグが向かっていくが、ベーグはノールックで振り払われた衝撃波に軽々と弾き飛ばされ、そしてシンジが空中で拳を振り上げたと同時に、凉蘭は再び2本指をシンジに差す。

「雷撃!」

女の子相手に拳を振り下ろすシンジに息を飲むその一瞬、凉蘭の指からではない一閃の稲光がシンジを襲い、シンジは宙で体勢を崩される。それでもシンジは空中で手を着き足を着き、体勢を立て直すものの同時に凉蘭は“両手での大袈裟なズーム動作”をシンジに見せつけた。しかし、シンジは笑みを崩さない。まるでそれでも立ち向かうといったように空を蹴り、そしてシンジは拳を振り下ろした。

「スワップ」

きっとシンジ君なら壁なんて・・・え!?

当然あると思っていた壁は何故かそこには無く、シンジの拳は直接凉蘭の庇うように交差された腕に叩きつけられた。さすがにシンジも驚きと焦りに表情を一変させるが、血の気が引くほど空気が止まったその場で理解したのは、凉蘭が1ミリも動かず、シンジの拳を受け止めているという事だった。

どういう・・・。

そして直後、凉蘭はシンジの腕を掴み、一本背負いでシンジを地面に叩き落とした。

えー、すごい、何で?

「どうなってんだ。手応えが、無かった」

「私、ダメージを『スワップ』出来るの」

「スワップって・・・何だ」

「クラウドとかにデータを移して、メモリを軽くするやつ。壁で攻撃を受けて、雷撃にダメージをスワップして相手に返したり、自分へのダメージを壁にスワップしたり出来る」

「インテリ系か。それがあんたの主戦力か」

「ううん。スワップは3つ目。“空間をドラッグしてその範囲を壁にする”『ドラッグ&ウォール』が2つ目。主戦力は『ロックオン&絶対雷撃』。こうやって2本指で差してロックオンして、必ず当たる雷撃を撃つの」

「必ず、当たる・・・」

うわ、3つの力をちゃんと組み合わせて、頭良いんだなぁ。てかIT系女子だったなんて。

「私、試したい事試したから、もういい」

「覚醒は?」

究がそう聞いた時、ふと一瞬、凉蘭は僕に顔を向けた。

「私、スナイパーだし。それに聖が盾になってくれるし」

「べ」

言った事ない・・・。

「まじかぁ・・・じゃあいいか」

「いや言った事ない」

「良いじゃん、俺と聖で前衛って事でさ。それに実質、俺1人で4人分だし」

「まぁ、そうだね」

ホールに戻って適当なテーブルに着き、シンジに教わってテーブルに備え付けられたベルを鳴らす。するとホール後方の扉からいかにもウェイトレスな風貌の女性が出てきて、僕達のテーブルにやって来た。

「メニュー下さい」

「かしこまりました」

シンジがそう言うとウェイトレスはそう応えて去り、メニューを持って再びやって来る。

「オレ、塩ラーメン」

「はい」

しかしメニューも見ずにそう言うと、シンジはウェイトレスから渡されたメニューをそのまま究に回した。究が開いたメニューを横から見てみると、メニューには定食や丼ものといった和食からイタリアン、中華など、様々なジャンルに富んだ多彩な料理名が記載されていた。

何屋だよ・・・。

「あれ?塩ラーメンなんて無いじゃん」

「メニューはあくまで参考だよ。基本的に、言ったものは全部出てくる」

えー、そんな訳・・・。

「やっぱり、全部無料で?」

「あぁ」

いやあり得ないでしょ。

それから凉蘭にはパンの付いたポークステーキ、究にはフランスパンにローストビーフと諸々の野菜が挟まれたサンドイッチ、そして僕にはササミ多めのチキンサラダが運ばれた。

すごすぎる。究なんてほぼオーダーメイドなのに、ちゃんと出てきた。

「腹ごしらえが済んだら、もう1人仲間を紹介してやるよ。サシでやった方が集中出来るだろ」

「あ、はい」

ノブさん、ほんと面倒見いいよなぁ。

「あれ、ノブ、その子達、新しい仲間?」

チキンサラダを頬張りながら、やって来た女性にふと顔を向けてみる。

「まぁ今後そうなるかも知れないが、テロリストにやられてリベンジしたいっていうから、特訓させてやろうと思ってな」

何だろう、ここに居るから能力者なんだろうけど、何か自警団って雰囲気じゃないな。この人も回復役かな。

するとノブのその親切さになのか、その女性は感心するように笑みを深めるとふと僕を見た。

「3日後にはこいつらを襲ったテロリストを制圧する。といってもオレらは極力後ろから見てるだけだからな、それまでには最低でも1回は覚醒させないと。ショウタ達から連絡は?」

「うん、今来たから伝えに来たの。アジト見つけたから、これから作戦会議だって。良かったね」

「あぁ」

「もし良かったら私もこの子達の特訓手伝うよ」

え?・・・まさか戦闘役?いやまさか。

「・・・そう、だな。じゃ頼むよ。皆、仲間のミントだ。格闘派だから、聖の相手がいいだろう。聖はこいつだ」

格闘派?・・・。

「よろしくね」

「あ、はい、よろしくお願いします」

今時、モデル兼ボクサーとか珍しくはないけど、こんな優しい笑顔の格闘派だなんて、大丈夫かな。

多分年上であろうきれいな人と2人きりで闘技場を歩く事に変に緊張しながら、そして適当な場所で向かい合う。

「ねぇ、聖って、今気になってる子いるでしょ」

「・・・・・べ。それは、どういう意味、の」

「私ね、顔を見れば恋してるかどうか分かるの。聖のはまだ恋ってほどじゃなさそうだけど、でも気にはなってるんじゃないかな」

「ど、どうなんだろ」

揺さぶる為に言ってるような腹黒さはなく、純粋にそう思ったから言ったといったような笑みだからこそ、逆に恥ずかしさが増していく。

「悩んだ時は言ってね?私応援するから」

「は・・・はぁ」

初対面なのに、こんなにもきれいすぎる土足で心に踏み込んで来られたの、初めてだ。

「それじゃ始めよっか。翼解放」

その瞬間、ミントは瞬時に生え広がった白い翼に包まれ、同時に決してグレーではない白黒の光に覆われた。

おお、魔法系なのか。

白い翼を生やし、白をベースに所々が黒くなったといった具合の、ヨーロッパ風でもサムライ風でもない、マグマが固まったような質感の鎧を首から下に着込むという変身を遂げたミントだが、直後にミントは魔法系の攻撃をしてくる訳でもなく、ただ静かにファイティングポーズを見せた。

いや、魔法系に見せかけた変身系?

主人公プロフィール

赤荻 聖 (あかおぎ しょう) (17)

東京都出身。成績もそこそこで、育成系ゲームが好きな普通の高校生。親友の究とは常に行動を共にしている。大人しい性格ではあるが、人並みに正義感を胸に秘めている。

身長165センチ。体重55キロ。

持っている能力「DNAラーニング」

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