第3部ー太陽
絶対に生きやすくする。
この声がどこまで届くかは分からない。
でも、この声が届く動物たちに響く
そんな公演にしよう。
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さぁ、僕の公演会といこうか。
予定をちゃんと組んでいた。
彼女があそこまで僕のことを思ってくれていたんだ。
ならば踏みにじらないようにしないといけない。
準備も全て慎重に進めた。
そして今日がその日ってことだ。
◤◢◤◢注意◤◢◤◢
ここからある程度までセリフとなります。
文化ホールのようなものをご想像下さい。
舞台に立つは笠鳴奏、チロ、となります。
では。
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皆さま御来場ありがとうございます
僕が述べたいことは凄く単純な事です。
僕は皆さまが大好きです。
家から出られなくて、とても外に憧れていました。
だからそんな外で生きる皆さまが大好きです。
ですが…僕は皆さまに恐れられています。
全員がなってくれとは言いません。
同種族や、同類じゃなくても心は皆あるし、同じ言葉が使えるんだから、
僕も皆と同じように手を取り合って生きたい。
そして、もう1つ。
恐らく、僕のようにこの世界に1匹しか居ない。
そう思ってる動物が居るかもしれない。
仲間を探すのもいいと思います。
僕はこういう言葉をみんなに伝えるために生まれた1匹なんだと思います。
僕には同じ種族の仲間が居ません。
でもこうして1匹の僕にも仲間が居ます。
今隣に居てくれていますがチロ、この子とは種族は全く違います。
ですが言葉は通じます。
だから僕は仲間に出会えました。
この間のことは正直、悪いことではないと思っています。
彼女が僕を外に連れ出してくれなければ、僕は1匹で居る動物を、市民を救う事が出来なかったかも知れない。
僕が外に出て、改めて世界を変えたい。
1匹で居る動物たちを救えるように。
そう決断出来る大事な出来事でした。
僕が外に出ることで皆を脅かしてしまう、だからまた引き篭れば何事も無かったかのように暮らせるんだろう。
僕という闇は暗いところでずっと居れば世界は安定する。
イレギュラーが居なくなるから。
でも、ごめんなさい。
僕は陽の光を知ってしまった、外の世界も。
だから、どっちでも大丈夫な方法を一生懸命探しました。
行き着いたのは政治家のように、ひたすらに言葉を紡ぐことだと思いました。
この世界が悪いとは思ってません。
皆が普通に生活が出来ている時点で最高なんです。
ですが人間は欲張りなんです。笑
最高以上を目指しています。
今日の公演はこれで終わりとさせていただきます。
ご来場いただき、ありがとうございました。
続きまして質疑応答に移りたいのですが、質問がある方はいらっしゃいますか?
【ガゼルと思しき動物が手を挙げる】
どうぞ彼女にマイクを。
「どうして今まで出てこなかったのですか?」
(横にいたチロは飛び出しそうになったが僕は引き止めた。
さすがに不味いだろ…
結局は暴力で解決なんて論者がしていい事じゃない)
すみません。
どうして出てこなかったのか、というのは何故今になって現れたのか?
という質問でよろしいでしょうか?
「はい。」
必要が無かったんです、外に出るの。
何もかも事足りてたんですよ、家の中で。
「では何故でて…
でも!
チロが…来たんです。
僕にとって大事な仲間が。
そんな大事な仲間が僕に、外に行こうって…誘ってくれたんです。
僕、断れない動物なんです。
だから、出てきました。
拘束されていたとかじゃないので、出たいので出てきました。
他に質問がある方いますか??
無いようですので終わりとさせていただきます。
改めて、本日はお越しいただきありがとうございました。
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席に座っていた数多の動物たちはそれぞれ立ち上がり、僕に向けて拍手してくれた。
少なくとも不満気な表情をしている動物は居ないようだ。
よかった。この公演に意味を持たせることが出来た。
「ありがとう、チロ」
「また今度うちに来てよ」
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後日…
チャイムが鳴った。
僕の足はあの時よりは軽く動いた。
「はーい、今出ます」
もちろん生活は今までと変わらない。
だから通販かもしれない。
だが言えるのは、あの時より断然、心が軽い。
ドアノブに手をかけ、回す。
瞬間、光よりも先に暖かい毛が僕を包んだ。
「おっはよーカナデ!」
いつも彼女の行動は僕の予想の斜め45°上回る。
「おはようチロ、今日も元気そうでなによりだよ」
「ところで、離してくれない?」
生え変わったのか毛が暖かく感じる。
惜しいが話をしたいので離してもらう。
「今日は話をしようと思って僕の家に来てもらったんだ」
「ご飯も用意してるから食べながらでいいから聞いてね?」
夏場の頃と景色は変わらないが僕は変われた気がする。
「ところで、話なんだけどね。
街に初めて出た時のありがとね。」
「でね、1つ言いたいんだけど…」
「僕、チロが好きだ。」
すると彼女は食べる手を止め僕の方を見つめる
「実は私もカナデの事ずっと前から好きだったよ?」
「水風呂張ってくれた時はもう心臓はち切れるんじゃないかってぐらい嬉しくてドキドキしたんだよ?」
なんだろう。自分から告白したのに言い返されて告白した以上に恥ずかしい!
「ちょ…やめて……恥ずかしい…」
「じゃあ聞くけど、付き合ってくれる?」
「私、気分屋だよ?いいの?」
「それはとっくの前から知ってる。いいに決まってるよ」
「じゃあ……よろしくね?」
「私、換毛期とかすっごいけどお願いするよ?」
「任せて笑」
頼られる者の気持ちが分かった。
凄く嬉しいけどその分、重みがある。
だからこの重みを背負って、重さ《それ》以上に頑張ろう。
「僕、人間でよかったって思った。」
「どうしたの?急に変なこと言って」
「 人間じゃなかったら、今チロに出会ってる事自体無くなる。
街に行っても僕みたいに蔑まれた動物を見ても撮る側だろうし。
正直、あの日家に帰ってきてから
何度『チロと同じ猫として生まれたらよかったのに』って思ったんだろう。
でも、全て僕が受けてよかったって思った。
カメラの注目も、1匹であった時の辛さも。
だからさ、もしもう1度生まれ変わったとしても
ーーーー僕は、 ヒト がいいな。 」
"小さな太陽"から貰った陽の光は僕の心の闇を消し去り、
僕という木を育ててくれた。
そして
彼女に笑いかける僕の顔も、また太陽なんだろう。
The END
読んで下さりありがとうございました。
この話はこれで終わりとさせていただきます。
また、更新する可能性があるのは『愛殺』、『人のTRUE』、『暁が照らす紅い頬』となります。
また、話を考えるにあたってどうしても時間がかかりますので、どれかを早急に完結させ、1本か2本の作品を毎週投稿を目指しています。
昔は出来ていたのですが…最近は滅法忙しくなってしまいました。
もうしばらくお待ちください。




