第2部ーCholce
たしかに僕は外に出たかった。
この空間の中じゃなく外に。
僕は外の世界を知っている、何度憧れを抱いたことか…。
僕は彼らを恐れていた。
僕を恐れている彼らを恐れている。
自分の存在でまた脅かしてしまう。
それなのに…
なぜ彼女は僕を外に、いとも容易く誘うんだ…
そして
なぜ僕はその誘いを受け入れているんだ…?
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僕が住んでいるのはアパート。
部屋は広く、まるで僕専用に作られた部屋のように快適だ。
そして彼女は僕の腕を引っ張り玄関へと連れていく
玄関の扉が開いた
暗闇に満ちている玄関に、光が射し込んだ
一瞬目を閉じて、うっすらと目を開けていく
なんだ、全然眩しくないじゃないか。
それは嘘だ
影であるべき僕が眩しくないはずがない
全ては太陽のおかげだというのを知らない
僕の隣に居る太陽。
「 じゃあ行きましょう?
カナデ! 」
外の世界を視た。
外は明るくて、暑くて、輝いており、そして美しい…。
僕らは他愛もない駅に来ただけだ。
動物の往来は忙しない
聳え立つビル群にはガラス張りの窓から色んな動物が見える。
大きいものから、キリン、サイ、ライオン、豹…
道端にある塔には大きなディスプレイが4面に張られている。
それぞれのディスプレイは違った映像を流している、そして僕が知っているバーチャルの存在のアイドルすら映る。
なんだろう、この胸の奥からこみ上げてくるワクワクは。
僕は興奮していた。
そして彼女の手を引いて色んな店に連れまわろうとした
「「「「あれがヒトか…」」」」
「やっぱり大きくて恐ろしい」
僕の周りは色んな動物が取り囲み写真を撮り始める。
勿論『僕』
「笠鳴奏」をだ。
《 ヒト…ヒト……ヒト! 》
そう、そして僕は再認知した。
この世界には、僕しかヒトは居なくて恐れられる存在だってことを。
僕の瞳の光はどこかに飛んでいった。
「ごめんチロ、今日はやめよう…やっぱり僕には…」
この先を紡ごうとした僕の口の前に手が突然現れた。
肉球が一瞬、僕の口を塞ぐ。
そして瞬く間に塞いだ手の主は、時計塔に飄々と登りきってからその上に立った。
光のない目で僕は彼女を見る。
太陽はこんなにも眩しいのだと改めて知った気がした。
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"小さな太陽"は大きな声を出して往来する動物は足を止め、"影"を撮るのを止めて太陽にカメラを向けた。
「みんな、やめない?」
「 たしかに彼はヒトだよ 」
「みんなと違う、だからなんなの??」
近くに居た、恐らく政治家であろうサイは
メガホンを彼女に渡した。
「例えば君たちに仲間がいない、自分が唯一の種の動物だったらどうなるか、分かる?」
「幸い私には同類が居る。でも…"居なかったらどうだろうね!"」
みんなは黙って彼女の話を聞いている。
まるで何かで頭を殴られたように黙りこんで。
「悪い例として上げているように話してる。」
「ごめんね、カナデ」
「でもね、君こそが大事な"1人"なんだよ」
「私は、1匹であるキミが大事だと思ってる」
「1匹でいることに非難されるならキミたちが1匹で居たってそうじゃないのか?」
「彼は私が連れてきた。ずっと引き篭ってた。」
「どうしてか分かる?」
「全部と言う訳ではないだろうけど、キミたち、そしてこの!
社会のせいなんだよ…!!!!」
小さな太陽は涙を零しながらも吠える。
吠える。吠える。更に吠える。
猛り、目が少し血走り、恐ろしい形相になっていく。
「チロ、落ち着いて。」
メガホンを借りて僕が少し話そう。
"小さな太陽"は僕のために頑張ってくれたんだ。
僕もやらないと。
「皆さん、ごめんなさい。足を止めてしまって。」
「また今度、僕が1人であるために演説とまではならないと思いますが、場所を貸りて話すつもりです。」
「僕の、たかが一市民の話ですので録音や録画はご自由にして頂いて大丈夫です。」
「では失礼しました。」
サイに貸してもらったメガホンを返して僕は家に向けて走った。
ただ、ひたすらに。
激しく動きなれてない肉体は、いとも容易くバテを見せた。
でも足は止めない。
彼女にこんな姿をもう見せたくない。
僕は逃げた。
また。
ホントに長らくお待たせしてしまい申し訳ございません。
年末ぐらいには大筋は出来ていたのですが続きを書く時間が無く、書けませんでした。
リアルが忙しくなりそうなので、4ヶ月に1度程度で構いませんので、見に来ていただけると嬉しいです。