自虐極まる
そして、翌朝。
いつも通りに、菫が瞬間移動で、登校してくると。
校門前に、人だかりが出来ていた。
「あれ?」
何かと思って、近寄っていくと。
メイド服を着た理奈と出会った。
「おはよう、カンブラ君」
「おはよう、坂口さん。何かあったの?」
「あれ、見て」
校舎の屋根を指差され。
菫は思わず、声を漏らした。
「あ……」
そこには、血だらけで、ボロボロの服を着た青年が。
首を吊って死んだ振りをしていた。
その上、ご丁寧に。
屋根から大量の血ーーではなく、赤いペンキが滴り落ちている。
匍匐前進で、登校してきた艶矢が。
「栗林……?」
そうつぶやくと、他の生徒たちから拍手が巻き起こった。
「進化したっ!」
「何事も極めることが、肝心なんだな」
「ここまでくると、感心する」
「いつもよりもっと面白いっ!」
「遅刻すんなよ」
生徒たちはそれぞれ、霊に声をかけ、校舎の方へ移動し始めた。
菫、艶矢、理奈の3人だけとなり。
死んだ振りをまだ続けている霊を見上げ、理奈は、
「一人でやったのかしら?」
「ん?」
菫と艶矢が、コスプレ少女に顔を向けると。
校舎の方から、右京がやって来た。
「おうっ! 菫、はよ!」
「おはよう、右京君ーー」
見習い占い師の勘が働き、
「もしかして、右京君、手伝ったの? 昨日してた相談って、これだったの?」
「おうっ!」
右京は力強くうなずき、指を2本額へあて。
精神を集中させるために、目を軽く閉じた。
「…………」
栗林のところ。
校舎の屋根……。
距離感と、行きたい場所を強くイメージすると。
右京はすうっと姿を消した。
瞬間移動できるようになったのだ。
菫は自分のことのように喜び、彼も姿を消した。
ーー場所は変わって、校舎の屋根の上。
「おう、栗林、大ウケだったぜ」
「うん!」
霊は幸せそうにうなずき、一瞬姿を消した。
首を吊っていた縄から、抜け出た。
「おはよう、カンブラ君」
「おはよう」
菫が挨拶を済ませると、右京が、
「よし、片付けようぜ!」
霊が首を吊っていた縄を、右京は手に取って。
次々に瞬間移動で、登校しては、校舎へ向かっていく、色々な動物達を見下ろして。
すげぇ色んなやついんな、この学校。
面白ぇな。
幸せそうに微笑んでいると。
突如、目の前に大きな顔ーー龍が現れた!
「わっ!」
「おはよう、神崎君」
「おう、はよ」
右京が返事を返すと、クラスメイトの龍はにっこり微笑んで。
教室へ行くため、姿を消した。
右京は縄をたぐり寄せながら、ニヤニヤしている。
「この学校、マジでキャラ濃いな……」
遠くで、菫と霊が話している声が聞こえる。
「栗林君、消却スプレーどこ?」
「僕のポケットに……」
右京は縄を全部たぐり寄せ。
これから起きることをあれこれ想像して、ぼんやりしていると。
人気のない、向かいの校舎ーー特別棟で。
ぽつりとたたずむ人影を見つけた。
「……?」
学校というには、少し不自然な格好。
右京は目を細め、視点が合ったところで、背筋がぞくっと凍りついた。
「っ!?」
なぜなら、そこには戦国武将のような鎧兜を着た人物がいたからだ。
しかも、こっちをじっと見つめているようだった。
兜に顔の上部が隠れていたため、口元だけが不気味に微笑んでいる。
「ーー右京君、危ないっ!」
菫の叫び声が聞こえ、右京は視線を外した。
すると、霊が投げたスプレー缶が、右京の頭にコツンとぶつかった。
「いてっ!」
思っているほどの痛みはなく。
頭をさすりながら、もう一度、特別棟へ視線を戻すと。
兜を着た人物は消えていた。




