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THE BAND CRAFT  作者: ですの
8/35

バンドマンにありがちな事 【覚えること多くて心が爆ぜる】

※2017/02/10

一部内容を本文から後書きに移しました。

それに加えて本文に修正をしました。

放課後、礼二と晴臣は岳史に昨日伝え忘れていたコピー練習の事を話していた。

岳史は奇妙に口元を歪ませている。

晴臣に無理やりコピー練習に使う曲を聴かされていた。


「どうだよ荒川、これ、良くない?」


礼二が不安気に問いかける。


「……良くなくなくなくなくなくない?」


「えっそれ結局どっちだよ」


「ん、ふぅふふ、い、今のは、スチャダラパーの曲のネタ……。んんふふふ」


それを聞いた晴臣が大げさなほど大きな声を出して笑っていた。

岳史もしてやったりな顔をしていた。


「じゃあこの曲で良いって事だね荒川君!!」


晴臣がそう言って直ぐにドラムセットに向かった。


「え? なんで、どういう……? 荒川のオッケーのサインはどこにあったんだよ」


岳史はギターを構え、Eコードを鳴らしながら得意そうな顔で礼二に返事する。


「さっきのは、だから、スチャとオザケンが一緒にやってた曲の歌詞だよ……。オザケンは、フリッパーズギターのメンバーの一人で、だから……」


「へぇー。何言ってるのか全然わからんけど、とりあえずこれで一回合わせられるまで練習するか!」


そして三人は各々のコピーの作業に入る。

そして三人は開始後数分で全く動きを見せなくなった。


「……なぁ、二人とも。大変なんだ。俺、俺にはベースの音が聞こえない……」


「どうしよう礼二君!! 僕もドラムがなんかいまいちわからないよ!! なんだよぉ!! 人をバカにしやがってよぉ!!」


「ぼ、僕は……、Eコードだけならわかる」


すると部室に先輩が遅れて入ってきた。

三人がコピー練習を始めたことを告げる。


「いいね。コピーから始めるってのは上達しやすいからね。でも、いまいち何やってるのか聞き取れない、と」


「そうなんすよ……。何とかしてくださいよぉ! 先輩なんでしょおお!!」


先輩が笑いながら、設置してあったミキサーにMP3プレーヤーを繋げる。


「もしかしたら、初心者にとっては難しい曲で始めちゃったのが良くないかもね。とりあえず合わせるとしたら、例えばこれなんかどうかな」


そう言って先輩が曲を再生する。

その曲を聴いて晴臣が叫び声を発しながらドラムスティックで自分の頭を殴り始めた。

そうとうテンションが上がっているらしい。


「おおおお!! 先輩!! これは!! アジカンじゃないですか!!」


「そうそう。初期のアジカンの曲って比較的簡単なのが多いのよ。それにこの曲の入ってるアルバムのTAB譜も多分部室の本棚に置いてあるはずだから、一先ずこっちやってみたらどうよ」


そして先輩が本棚に向かって、TAB譜を探し始めた。


「荒川君、礼二君!! 聞いてたね!? パーフリは一旦辞めよう!! アジカン!! 僕アジカンになる!!」


「お、俺は別に良いけど……。あの、たぶふ、ってなんすか?」


「あったあった、はい礼二君これがTAB譜。俺が口で言うより見た方が早いと思う」


礼二が見ると、各パートの表記の他に、横長の線の上に数字が描かれた図面が載っていた。

ギターパートには6本の線、ベースパートには4本の線が横に引いてある。


「つまり、その横長の線はそのまんまギターとかベースの弦を表してる。線の上にある数字はフレットの位置を表してるって事」


「おおなんと……! おお……!! すごい、つまりこれ通りに弦を押さえれば、さっき聴いた曲が弾けるんですね!」


「そういう事だね。まぁ売られてるTAB譜も細かいところが原曲と違ってたりするんだけど、今はとりあえずこの譜面通りに弾けるようにしてみよう」


乗り気だった礼二と晴臣だが、岳史はその表情が曇っていた。


「どうしたんだよ荒川、早くこれで練習やろうぜ」


「無い……。この曲には、Eコードが無いんだ……。お終いだよ、もうお終い……。ここには難しそうなコードしかないんだ……。僕たちは今日をもって解散だよ……」


先輩が笑いながら岳史の肩をぽんと叩いた。


「岳史君、どうやら君にギター界の"切り札"を教える時が来たようだね」


「切り札……?」


先輩が岳史の左手の人差し指と薬指、小指をそれぞれギターの弦に置いていく。

岳史は、それがTAB譜の中で頻繁に登場している事に気付いた。


「この手の形をよく覚えて。人差し指から1フレット間を置いて1個上の弦に薬指、同じフレットで更に1個上の弦に小指。これがパワーコードだ。いいかい?」


「パワーコード……?」


岳史は試しにその手の形のまま弾いてみるが、なんとも聴き応えの無い音がじわっと鳴るだけだった。

それを聞いた礼二が失礼を通り越す勢いで笑う。


「なんだこれ……。こんなのが僕の切り札……」


「あーそうか。しまった。教える順番がおかしかったか。今君が指で押さえている弦以外は、弾かないか音が鳴らないように軽く弦を押さえておくことが重要だよ。ミュートっていう基礎中の基礎のテクニックだから一緒に覚えてしまおう」


「ま、また覚えなきゃいけないことが一つ、二つ……」


「ていうかそもそもセーハーから覚えないとダメか。じゃあ次はバレーコードの代表格、Fコードも覚えようか。あとルートに関しても覚えないといけないし、それらと併せてスケールの勉強も出来たらいいかもね。おっとこれはベースの礼二君も一緒に」


「ああ……、ああああ……!! うわあああああ!!」


岳史は叫びながら一心にEコードをかき鳴らし始めた。

完全に混乱していた。


アーティスト名:スチャダラパー

曲名:今夜はブギーバック

https://www.youtube.com/watch?v=00KWvAZETXc


アーティスト名:ASIAN KUNG-FU GENERATION

曲名:君という花

https://www.youtube.com/watch?v=MIY3lM-jGkI




バンドマンにありがちな事 その7

【覚えること多くて心が爆ぜる】

兎に角最初は覚える事が多いです。

一度に全部覚える事はまず出来ないので、基本的には一個一個ゆっくり覚えていく事が大切です。

ちなみに初心者の方は勿論、楽器を始めて数年以上経過していても覚える事というのは常にあるので、誰しもがどこかしらで一回は心が折れています。

だから初心者の方も安心して心を折ってみるといいです。

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