バンドマンにありがちな事 【他人にオススメされた曲、たまに大当たりを引いてテンションが上がる】
※2017/02/10
一部内容を本文から後書きに移しました。
それに加えて本文に修正をしました。
顔合わせとセッションを行った日から1週間が経過した。
礼二と晴臣は同じクラスである事がわかり、休憩時間になるといつも二人で暇を潰していた。
そして昼休みになると、晴臣はいつも楽しそうに礼二に自分のオススメの音楽グループの曲を聴かせていた。
「礼二君! 今日はね!! これを聴かせてあげる!!」
「お、おう今度はなんだ……」
「パーフリ!! パーフリだよ礼二君!! これはね渋谷系って呼ばれてる音楽でね!! どう礼二君!! かわいいとかっこいいとオシャレが混在してるこのジャケの感じどう!!」
そう言うと晴臣は礼二の耳にイヤホンを強引に押し込む。
最初の頃は礼二はこの行為に抵抗していたものの、体格差で圧倒され結局イヤホンを耳にぶち込まれるだけだった為に、最近はすっかり服従していた。
晴臣はウキウキしながら曲を再生し始めた。
礼二は流れてきた曲に一応耳を傾ける。
「……あーなるほどね。あーこういう感じか。はいはいなるほどなるほど。調子いいじゃん」
「良いでしょおおおお!! ちょっと古いグループだからって敬遠しないで聴いてみるといいよ!! 良いバンドは今も昔もたくさんいるよ!! 何より礼二君は大したモン今まで聴いてこなかったんだからしっかり学ばないとね!! どうせ本当は大して良いなんて思ってない癖に!! クソがあああ!!」
「失礼すぎるだろっていうか急になんだよ急にどうしたお前! 切れ幅が読めなさ過ぎるだろ!」
礼二は実際に今回の晴臣のチョイスには興味を惹かれていた。
というのも、礼二が目指す高校生像にはオシャレという要素も内在していた。
渋谷系にオシャレ要素を感じ取った礼二は曲が終わる頃にはすっかりその虜になっていた。
「マジで良いと思ってるよ今回は! ここ1週間のお前のチョイスの中では一番俺にしっくり来てる! こういうのもっと教えてよ!」
「えっ……? 礼二君、遂に、遂に心を開いてくれたんだね!! 嬉しい!! でも今までのはクソだって言いやがったな!! クソが!! クソ野郎があああああ!!」
「後半どうしてしまったんだお前!? 情緒が不安定どころの騒ぎじゃねえぞ……」
するといきなり晴臣は絶叫しながら弁当を一気に平らげた。
これで落ち着いたらしい。
「ごめん礼二君、テンションあがちゃって日頃の鬱憤とか爆発しちゃったよ……。よかったらさ、この曲コピーしてみない?」
「おっ良いね、楽しそう! しっかりベースの練習してくるわ!」
この時、礼二はパート変更でベースを担当することになっていた。
ベースを選んだのは先輩のベースを弾く姿がとてつもなくクールに見えた為だった。
「礼二君って初めて会った時よりずいぶん柔らかくなったよね!! なんだっけ!! カラスだっけ!? 礼二君の昔のクソダサいあだ名!! カラスだっけ!! 音楽は自分自身で生み出していくクリエイティブなカラスだっけ!!」
晴臣の声のボリュームは凄まじい。その声はクラス中に聞こえるレベルだ。
まだ知り合い以下の関係性のクラスメイト達の視線がそれとなく礼二に集まる。
何人かがクスクス笑っているのが分かった。
礼二の顔が一気に火照る。
「おっ、おい! やめろよハルオ! そんな大声で!! やめっ、許してくれ! ごめん!」
「なんで謝ってるの礼二君!! まあそれはともかく、僕達のバンドの初コピーだね!! 今日の部活で荒川君にもこの事伝えよっか!!」
「おう、そうだな。アイツの意見も聞かなきゃな」
楽曲コピーとは既存の楽曲をそのまま再現するというものであり、大部分の初心者が最初に行う練習方法でもある。
こうして彼ら新入部員の3人は初めての楽曲コピー練習に挑戦することになった。
パーフリとはフリッパーズギターというグループの事です。
参考までに一曲。この曲は典型的な渋谷系ぽさとはちょっと違いますが個人的に好きなので。
アーティスト名:Flipper's Guitar
曲名:Groove Tube
https://www.youtube.com/watch?v=bKHHE2xoKyQ
バンドマンにありがちな事 その4
【他人にオススメされた曲、たまに大当たりを引いてテンションが上がる】
バンドをやってると当然よく音楽の話をするようになります。
ライブハウス等で初めて会う他のバンドさんとの会話のきっかけにもよく用いられるのが音楽の話題です。
そうするとほぼ必ず出る話題がオススメバンドと曲紹介です。
それらは多くの場合「良い感じだね」くらいの、そこそこのヒットに留まります。
ですが、ごく稀に自分の中のツボのど真ん中を撃ち抜いてくるものをオススメされることがあります。
こうなると誰もがテンションが上がり、神に感謝し始め、その日の予定など全てがどうでもよくなってしまうハイな状態になります。
そして、そういった曲を知る事で結果的に良い影響を受けて自分のプレイの幅が広がったりします。
オススメを紹介し合う事は是非とも積極的に行っていくべきだと個人的には考えてます。