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THE BAND CRAFT  作者: ですの
33/35

バンドマンにありがちな事 【余韻を楽しむ】

「いやー、まさか投票一位が彼らになるなんて思わなかったっす」


「トリだったっていうのもあると思うけど、正直あの四人組は曲もパフォーマンスも良かったからね」


文化祭は終わった。

一通りの片付け等を済ませて、礼二と先輩は部室にいた。


先輩は居直ると、礼二に向かって改まって話し始めた。


「でも、本当に今年のライブは良かったと思う。特に礼二君たちのライブは」


「ありがとうございます。そういえば、なんで俺達にありがとうだなんて言ってくれたんですか?」


先輩は少し考え込んだ後、その問いに答えた。


「FLATって名前、元々俺が組んでたバンドの名前なんよ。俺と、他の三年の部員と組んでた。結構ライブとかも頻繁にやってて、メジャーデビューも目指してた」


「三年って、あの部活動発表会の時にライブしてた人達ですよね!? 知らなかった、めちゃくちゃかっこいいパフォーマンスをしてたんで凄く記憶に残ってますよ」


「だけど、メジャーからいざ声がかかったのは俺だけだったんだ。他の奴らじゃなく、俺だけソロで契約したいって事になった。当然そんな事になったらバンドの空気は最悪になるわな。メンバーにこの事を話したら、俺がメジャーに行こうが行かまいが、もう一緒にはやれないよなって話になって。それで俺はバンドを抜けた」


先輩は窓の外の景色を眺めていた。

外では文化祭の片付けを終えた生徒達がそれぞれの時間を過ごしていた。


先輩が再び口を開く。


「バンドの楽しさを忘れてたんよ、俺は。三年は進路選択の時期だし、もう部室には来なくなった。元から外で遊んでばっかりだった二年も部室には来ないし、だから俺はしばらくずっと一人で軽音楽部に居た。そんな中君達が入部することになって、君達の先輩としてバンドのいろはを教えてる内に、俺も昔そうだったなって思い出してさ」


礼二は何も言葉を返さなかった。

先輩は言葉にこそ言い表していないが、一緒に組んでいたメンバーと離れざるを得なくなった事を、どれほど辛く思っているのか、礼二にはそれがよく分かっていた。


「それで、今日の礼二君達のステージを見て、バンドの、音楽の楽しさを思い出したんだ。自分にもそういう頃があった事を思い出した。だからありがとうって言ったんだと思う。自分の中の音楽に対する陰鬱な気持ちが取っ払われた気がしたんよ」


そして、しばらく間を空けて、先輩は立ち上がった。


「ハルオ君の御見舞、行かないとな」


「そうっすね、今日のライブの事話したらどんな顔するのか色んな意味で楽しみですよ」


二人は部室を後にする。

12月の夜の寒さに包まれ、二人は学校を後にした。


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