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THE BAND CRAFT  作者: ですの
15/35

バンドマンにありがちな事 【電光石火のメンバー脱退】

※2017/02/10

一部内容を本文から後書きに移しました。

それに加えて本文に修正をしました。

時刻は間もなく六時を回る。

礼二達三人は、今日の部活動発表会の自分達の演奏について話し合う為部室に集まっていた。


が、誰も口を開こうとはしないので同伴していた先輩が最初に話し始めた。


「まぁ、初めてのライブなんてそんなもんよ。完璧にできるやつなんていないんだから元気だしな」


すると晴臣が血走った目で先輩を見た。


「僕が走っちゃったから! 僕のせいでライブはグダグダに! ギターもベースも音が聴こえなかったんです!」


「い、いや僕も悪いよ……。本番直前に弦が切れたりしてもうどうでも良くなっちゃって……」


すると礼二が二人に向かって話し始めた。


「そもそも、俺が真面目に練習してればこんな事にはなってねえよ。ホントに悪かった。マジで反省してるんだ」


そしてまた三人は黙り込む。


しばらくして礼二がふたたび話し始めた。


「俺が軽音楽部に入ったのって、音楽が好きだからとかそういう理由じゃないんだ。単純に目立ちたかったし、音楽やってる俺かっけーって思いたかっただけなんだよ」


「僕も荒川君もそれにはとっくに気づいてたよ礼二君! 不純なやつだよ礼二君は!! ナルシスト崩れのキョロ充崩れが!」


「えぇっ!? あっ、うん、ごめん。でもさ、今日他の先輩達の演奏見ててさ、心の底から真剣にバンドやりたいって思ったのよ。あんなふうに見てる人達を盛り上がらせたいって。自分達の音楽で皆に楽しんでもらいたいって。その為にはもっと真剣に練習したり、いろんな音楽を知りたいって思ったよ」


それを聞いていた先輩が口を開いた。


「礼二君は正直なんで軽音に入ったのかいまいちわからなかったけど、なんにせよそういう気持ちを持てたのはマジで良い事だよ」


「マイロ、いや、先輩。俺はもっとベースうまくなりたいっす。だから、だからもっと色々教えて下さい!」


「構わんよー。最も、俺は本職はキーボードなんだけどね」


「えぇっ!? すげえや先輩、マルチプレイヤーじゃないっすか!」


「色んな楽器に浮気したからね。さて、何にせよ三人とも心が折れてお終いなんて事にはなってないみたいだし良かった。学校の行事としてはこの先は12月の学祭までライブは無いけど。どう? それまでに修行としてライブハウスのコピバン企画出てみない?」


それを聞いて岳史が不安そうな表情を浮かべる。


「ライブハウス……。怖いお兄さん達が沢山いるあのライブハウスですか……」


「そんなイメージ持たれがちだけど、そんなのは誇大妄想に近いから心配すんなって。コピバン企画は高校生のバンドも沢山出てるし」


「俺は出てみたい。もっとたくさん場数踏みたいです。二人はどう思う?」


礼二の問いかけに二人はしばらく応えなかった。


先に返事をしたのは岳史だった。


「……ぼ、僕は、バンドでライブはやりたくないかな……」


「荒川!? マジかよ荒川、なんで?」


きっと賛同してもらえると踏んでいた礼二は、その意外な返答に驚きを隠せなかった。


「僕は、僕はヒップホップがやりたいなって……」


「ん!? 荒川それはどういう……?」


「だから、その、軽音部、やめようかなという……」


晴臣が思わず立ち上がった。


「そんな! 荒川君良いギター弾くじゃないか!! それにほら、バンドでもミクスチャーロックとかあるじゃないか! 我が儘言うんじゃねえ!!」


「それにお前、あんな高いギター買っちゃって、辞めたら勿体なくねえ!?」


岳史は真剣な表情で礼二と晴臣に応える。


「ぎ、ギターは作曲に使えるから……。ヒップホップはサンプリングが基本だけど……、最近はそうでもないし……。そ、それじゃ皆今までありがとう」


それだけ言い残して岳史は部室から出ていってしまった。


「まっ、待ってくれ!! 荒川!! 荒川あああああ!!」


礼二が追いかけようとする。

部室の外に出ると、遠くに全力で駆けていく岳史の姿が見えた。


晴臣も外に出てきた。


「……どうする礼二君!? 次のステップに進むどころか解散の危機だよ!?」


礼二はしばらく黙っていたが、意を決したように晴臣に向き直る。


「……困ったことになったが、こうなった以上は仕方ない。やるぞハルオ、メンバー募集だ」


「あ、あんな演奏をした僕達と一緒にバンドをやりたいって思ってくれる人がいるのかな!? 上手いか下手かで言ったら下痢糞なレベルだったのに!」


「だ、大丈夫だって! とにかくギターは最低でも一人は必要だから! 明日からやるぞ、メンバー募集!」


先輩は二人の姿をただ黙って見ていた。


岳史の電撃脱退。

これによって礼二と晴臣は新メンバーを探す為に動き出すことになる。


そしてその光景を遠くから見つめている少年が居た。

その少年は礼二と晴臣のクラスメイトだった。

今日の部活動発表会での彼らの演奏を聴いて、少年はある決心をしていた。



バンドマンにありがちな事 その14

【電光石火のメンバー脱退】

わりとよくある事です。

メンバーの脱退はバンドには付き物です。

どうしても残ってもらいたい時には懇願するのもありかも知れません。

しかし、辞めたいと言った本人がどういう思いでその決定をしたのかはしっかり話し合って認識しておくべきです。

そして、気持ちを切り替えて新しくメンバーを探すというのも大切な事です。

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