プロローグ
基本一話完結で行こうと思ってますがどうなるかわかんないです。
バンドやってる奴あるあるをめっちゃ織り込んでいく予定ですが、バンドやってた人もそういうのは未経験の人も、両者に楽しんでもらえるように頑張ります。
※2017/01/15
一完無理っぽい感じなので続き物で書いていく事にします。
高校入学。
それは、新たな人生の始まりを年端も行かない若き男女に予感させる一大イベント。
入学式に参加していた誰もが高校生活という新たな環境に夢や希望を抱いていた。
この少年、沖山礼二も同様だった。
中学時代あまりにもパッとしない生活を送ってしまった礼二。
高校生になったら生活の全てを一新してやると固く心に誓っていた。
そして今日、遂に迎えた高校生活初日。
礼二は高校生活を充実したものにするべく相当意気込んでいた。
新入生は入学式の後、学校から指示された予定は無かった。
入学式が終わると礼二を初めとした新入生達は体育館へと向う。
そこでは多種多様な部活動が新入生を迎え入れるべく熾烈な勧誘合戦を繰り広げていた。
新入生はこの体育館で、様々な部活の勧誘を受ける事が通例らしい。
礼二は体育館内をブラブラと見て周っていた。
「サッカー部は未経験者も大歓迎なんで! そこの君どうよ!!」
「えっ、い、いや俺運動あんまり出来なくて」
「友達作りとか大変っしょ!? この時期さぁマジ気遣うこと多いよねー。でもさ、サッカーはほら、あれだから。ボールが友達なやつだから! ボッチ回避にぜひぜひー!」
他の部活の勧誘も集まってきた。
見た目はパッとせず(本人はそんなつもりは無いが)根暗な雰囲気を醸し出していた礼二という良い獲物を逃がさないように、彼らは礼二を囲んでしまった。
「サッカーは嫌っぽいね? それなら俺たちとテニスしよう! テニスはすげえから! 上手くなってくると超能力まがいの事が出来るようになるんだぞ!」
「いや、君には柔道なんかがいいと思う。街で絡まれる事とか無くなるぞ。君みたいなのにはピッタリだ。路上で柔道はマジ、ヤ」
「柔道部は黙ってろ! 怖いよねあの人。大丈夫俺ら野球部はあんな怖いやつはいないから! 君は頭の形が綺麗だしきっと坊主も似合うって!」
礼二は全てのラブコールに丁寧な視線と愛想のない笑顔を浮かべてなんとかその場を立ち去った。
(運動部は論外だ! イカした高校生は運動なんかして汗塗れにはならない、もっとクールにキメるはずだ)
礼二の思い描く充実した高校生像にはどうやら運動部ではマッチしないようだ。
彼の偏見に凝り固まった聴覚と視覚が運動部の元気いっぱいの勧誘をシャットアウトした。
そうすると必然的に見えてくる文化部の姿。
礼二は強烈なシンパシーを感じて、文化部の勧誘ブースのある方へと足を向けた。
まるで雰囲気が違う。
礼二は吸い寄せられるようにそちらへ近づいていく。
「来たぜ、ぬるりと……」
麻雀部の男が明らかに礼二に聞こえるようにそう呟いてきた。
(麻雀……。いやどうなんだ、高校生活という最高の青春が約束されるはずの三年間で麻雀は……。有りか、無しか)
礼二が悩んでいると、少し控えめな雰囲気の女生徒が話しかけてきた。
「あ、あの……、良かったら、吹奏楽部なんてどうですか……?」
この瞬間、礼二の頭の中から麻雀部という選択肢は吹き飛んだ。
女性に話しかけられた嬉しさに身を任せて、その女生徒に着いていく。
そして礼二は出会ってしまった。
吹奏楽部のブースの隣にひっそりと出店しているその部活に。
適当に切り取られた段ボールにマジックで『軽音楽部』とだけ書かれていた。
(け、軽音楽部……! 中学には無かった。こ、これはかっこいいぞ……! 俺の理想的高校生像に完全に当てはまってやがる!!)
礼二は吹奏楽部への勧誘をしてきた女生徒に謝って、軽音楽部のブースに向かった。
他のブースと違い、軽音楽部のブースには先輩と思われる男性が一人ポツンと座っているだけだった。
礼二はこの先輩の見た目や雰囲気にも自分と近いものを勝手に感じていた。
「あ、あの……。興味があって。その、バンドに……」
「おー、入部希望者。ありがとう。じゃあ、なんだ。何すればいいんだっけ。とりあえず見学とかする?」
こうして礼二の高校生活が幕を開けた。