其の23 掌返しに言葉が出ない
土下座騎士ことリーアムが頭角を現してきます。
なかなか話が進みませんが、優しい目で見て頂けると幸いです
では、お楽しみください
(o_ _)o
「…彼奴らぁ~!覚えておくのじゃ、減給と強制労働させてやるのじゃ!絶対なのじゃ!」
復讐を心に決めた彼女ではあったが、今の状況を生き抜かなくては未来がないのも事実である。
実際に悪態をついてはいるが、他者の耳にはぼそぼそと呟いているようにしか聞こえないほどの小声である。
それよりも自分を挟んで沈黙し合う二人の存在に恐怖して、ただただ丸くなって震えていたのだ。
「…っで、なに?」
表情を変えずニルを見つめるトリニティに対して狂喜化とはまた別次元の恐怖を全身に漂わせながら狂った笑みを浮かべるニルが仁王立ちしている。
〔…やっべぇ~な、おい〕
冷や汗だらだらな浩介は今の状況をどう打開するべきか思考を廻らせてみるが答えが見つからない。
〔はぁ…どうすんだ?この状況…〕
心の中で深い溜息をつきながら浩介は彼女を顕現したことに対して心底、後悔していた。
そんな浩介の後悔の念など今のニルに伝わるはずもなく、血走った瞳をトリニティに向けている。
そして…。
「帝様……いえ、この腐れロリばばぁ」
ニルが暴言を吐いた。
その言葉にトリニティの頬が微かに動く。
「…いま、なんて?」
僅かに怒りの含まれた声で聞き返す。
「あらぁ~、聞こえませんでしたか?やはりお年を召されますとお耳が遠くなられるようですね?しかたないですね、もう一度だけ言って差し上げましょうか……この腐れロリばばぁ」
最後のニルの発言に。
ビシッ!
トリニティの感情を具現化するかの如く荒縄から乾いた音が室内に響き渡る。
「覚悟…出来てる?」
殺伐とした空気が二人を包み込んでいく。
「うぅ………」
肌をヒリヒリと焼くような雰囲気に耐えきれずにフェンリルは情けない呻き声を放つ。
恐怖に震える姿が不憫でならない。
だが、逃げ出したいが身体が硬直して動かすことが出来ず絶望に打ちひしがれていたフェンリルに一条の光が差し込むことになる。
その一端を担う声が彼女の耳に届いた。
「お主達も入るがよい」
誰にも気付かれることなく扉の近くまで移動していたサツキが二人を見下ろしながら声をかけたのだ。
「………えっ?」
突然のことに二人の瞳がキョトンとなり、声のした方を呆然と見上げる。
その視線の先には口元を薄いベールで覆い隠し、目元だけ出した彼女がニヤリと笑みを浮かべながら扉に手をかけていたのだ。
歴戦の騎士である二人ですらサツキの気配を感じ取ることが出来なかった事実に当の本人達は状況を上手く飲み込めない。
「…えっ?えっ?」
何が起きているのか理解できない二人。
「懺悔の時間じゃ。盛大に巻き込まれるがよい」
なにげにノリノリの口調である。
ガチャリ。
そして、扉が勢いよく開かれたのだ。
「「うわぁ~!?」」
唐突に開かれた扉に、体重をかけていた二人は受け身も取れずに雪崩込むように室内へと倒れ込む。
ドタンッ!
静まりかえった室内に二人の倒れる盛大な音が鳴り響き、周囲の視線が一斉に彼女らに向けられる。
「…だ、だんちょぉ~」
情けない声を上げながらリアの背後にそそくさと隠れるリーアムと逃げ場を失い周囲の視線を一身に浴びるリアは苦笑いを浮かべポリポリと頭を掻く。
「あはっ、どうもぉ~」
リアの言葉に皆の視線が冷たい。
けれど、そんな冷めた雰囲気の室内で一人だけリアの存在に表情を変えた者がいた。
「…やっときた…待ってた」
トリニティの瞳が心なしか輝いて見える。
「おい、いや……アレならいいか」
トリニティの視線の先に目を向けた浩介は彼女を止めようと一瞬だけ考えたが、直ぐに思い直した。
なぜなら、リアだからだ。
これが別の者なら浩介も直ぐに彼女を止めたかもしれない。けれど、何度も言うがリアである。
問題ないと浩介の思考が判断したのだ。
トリニティに玩ばれる未来が易々と想像できる。何せ顕現する前まで見ていた記憶が彼女の痴態であったからだ。
その影響なのか彼女の若気の至りがフツフツと沸き上がってきているのかもしれない。
既にトリニティの興味はリアに移されており、ニルの存在は忘れ去られているかのようであった。
「……どちらを向いているのですか?」
その態度に忘れ去られたような無力感を覚えたニルの感情は苛立ちを隠し切れず声に現れている。
けれど、今のトリニティの興味は完全にリアへと向けられておりニルの声が邪魔くさく感じていた。
「うん?じゃま…」
面倒臭そうにニルに向けて荒縄を放つ。
シュッ………ドタンッ!
盛大な音が響き渡る。
「…えっ?」
何が起きたのか当の本人にすら分からない。けれど、彼女の身体は何故か荒縄で一瞬の内に簀巻にされ床に寝転がされていた。
ーおぉ…
「見事な手際です……」
「無駄な能力な気が致しますが…見事ですね」
遠く離れた安全地帯で雅、ミア、セレスがそれぞれの感想を呟いていた。
トリニティの動きを追えた者はほとんどいない。
それ程までに見事な手際であったのだ。
簀巻にされたニルは恨めしそうにトリニティを睨みつけるが信じられないほど強固に縛られているためか徐々にその瞳から生気が失われていく。
「今から大事な話する…邪魔するな」
今までの無表情が嘘のようにトリニティの瞳は威圧的な物へと変わりニルを冷たく見下ろす。
「…なっ!?いえ……」
その瞳に睨まれニルの戦意は完全に折られてしまう。その瞬間、先ほどまで室内を埋め尽くしていた殺伐とした空気が鳴りを潜め静寂が支配していく。
「だんちょ~、ヤバくないですかぁ?」
リアの陰に隠れながら場の雰囲気に半泣き状態のリーアムにリアも苦笑いを浮かべるしかない。
「…さすが、帝の人格……だねぇ~」
軽口を叩いているつもりでも、いつもの覇気が感じられないリアの姿にリーアムは半泣きから本泣きへと移行していく。
自然と正座し、リアの背後で土下座する。
土下座騎士の本領発揮である。
「申し訳ありません!全てはこの人が元凶です!」
額を床に擦りつけながら上司を指差し謝罪するリーアムに流石のリアも思わず言葉を失ってしまう。
「…えっ?」
辛うじて出た言葉がそれだった。
五護衆の威厳もへったくれもない。
「…あれっ?どう…いう……………えっ?」
何故か悪者にされたリアは現状がいまいち理解できない。部下にさらりと裏切られキョトンとした瞳を何度も瞬かせる。
「自業自得じゃな……」
壁により掛かりながら楽しそうに見つめるサツキの姿に彼女の腹黒さを見た気がするリアだった。
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