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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第四章 多重世界は魂の連なり
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其の19 類友と暇潰し

あらすじ

~ニルの狂喜化を一喝したサツキ、その出来事で皆の心に怒らせたら駄目な人が決まった。そして後は浩介が帝の人格を得て目覚めるのを待つだけとなっていたのだが……~


※今回登場するリアの腹心の部下ディーバは『常闇の使者』~登場している双子の騎士の一人です。因みに双子の片割れは土下座騎士です。


では、お楽しみください


 浩介は迷っていた。


〔いま、目覚めたらタイミング悪いよな…〕


 明らかに自分が場違いな状況に直面している自覚があった。いま目覚めると碌でもないことに巻き込まれる自信があるのだ。


 なにせ彼女(サツキ)がブチ切れた瞬間だったからだ。


 幸いなことに気づかれた気配はない。


〔…お前、本当にやらかしたのか?〕


 意識内に新たに住み着いた少女に問いかける。


 グレンデルとは違い彼女の意識と浩介は別離しているため会話が可能であったのだ。


ー……事実、まだ覚えてた…残念。


 他人事のように呟く彼女の言葉に浩介は思わず心の中で盛大に溜息をついてしまう。


〔はぁ…お前は何がしたかったんだ?〕


 当然の疑問だった。


 被害者の二人(フェンリルと雅)の会話を盗み聞きしていた浩介でさえ呆れて言葉が出てこない。


ーうん、若気の至り。


 その言葉に浩介の頬が引き攣る。


〔知ってるか?普通の人は若気の至りで拷問じみた行為や動物の毛を毟ったりしないんだぞ?〕


 自分で言っていて虚しくなってくる。


ー…意味はあった


 その答えを聞くのが正直に言って恐い。


 碌でもない予感がヒシヒシと感じられたからだ。


〔なら、取りあえず…その意味とやらを教えてくれるか?まぁ、嫌な予感しかしないんだけどな…〕


 けれど、万が一、もしかしたら本当に意味があったのかもしれないと希望的観測で取りあえず言い分を聞いてみようと思った浩介は彼女の答えを聞いて打ちひしがれてしまうのだった。


 その答えがこれだった。


ーストレス解消…


 言葉にならない絶望感に打ちひしがれる。


〔…そ、そうか、ストレス堪ってたんだな…〕


 他に返す言葉が見つからなかった。


ー…イライラとムカムカ、ちょうど良い感じに二人がいた。お陰で気分爽快になった


 その時のことを思い出したかのようにスッキリとした口調で話す彼女に返す言葉が見つからない。


〔…よかったな〕


 辛うじて出た言葉がそれだった。


ー…うん


 心なしか満足げな返答を聞いた浩介は真実は二人には黙っておこうと固く心に誓うのであった。


 ただ、それよりも今のこの状況をどう乗り切るかに浩介は頭を悩ませる形になっていた。


 どう考えても名案が思いつかない。


 さて、どうするかと内心で思っているとチラリとこちらを見る視線を感じ浩介は目線だけを動かす。


 その先は廊下へと続く扉があり微かに開いていた。その僅かな隙間から見覚えのある瞳が悪戯っぽい笑みで浩介を盗み見ていたのだ。


〔まずい奴にバレたな……〕


 浩介は心の中で深い溜息と共に項垂れた。


 仲間内で最もこういった状況が大好きな存在、多分ではあるがフェンリルを部屋に(けしか)けたのも彼女であろう事は容易に想像が付く。


 そう、この世界の五護衆であり騎女と恐れられるリア・キルケまたの名を痴女その人であった。


〔…あの目、なんかやらかすな〕


 瞳がニンマリと笑っている姿に浩介はげんなりとしてしまう。今までの経験上、キルケ一族があの目をするときは碌でもないことをしでかすからだ。


 リアしかり、親であるあの(・・)二人も酷かった。


 父親は他世界に喧嘩を売り、母親は周囲を翻弄して惑わせる。よくよく考えてみれば娘であるリアがまともに見えてしまうぐらいだ。


ーあの目…親近感を感じる


 何故か嬉しそうな声に浩介は何度目かの溜息を漏らし脳裏にある言葉が浮かぶのを禁じ得なかった。


 『類は友を呼ぶ』


 その言葉が浮かんだ瞬間、自分の頭を掻きむしりたい衝動に駆られるが理性を動員して必死に耐える浩介だった。


ーどうした?


 不思議そうに浩介の心の葛藤を見つめながら純粋無垢?な質問に彼は乾いた笑いを浮かべる。


〔この言葉ってさ…意味的に俺も含まれるだろ?〕


 その質問に少しは考える素振りでも見せてくれたならまだ可愛げがあったのだが彼女は即答でした。


ーうん、当然。どちらかというと浩介がメイン


 さらりと傷口を抉り、さらには塩を塗り込む発言をする彼女に厄介な奴が……と思ったが直ぐに切り替える。


 なぜなら、認めてしまえば類友になるからだ。


 今の彼女は浩介の意識と共有しており彼自身は違和感すら感じることがない。つまりは………明らかな類友なのだ。


〔なんで、俺の周りの奴はどいつも、こいつ……いや、そうだな。類友だからだよな……〕


 知りたくもないことを悟ってしまい、このまま深い眠りに落ちていきたいと切実に願う浩介だった。


            *


「ふふふっ、面白いことになってるねぇ~」


 浩介の葛藤を余所にリアは扉の隙間から室内を覗き込みながら悪戯っぽい笑みを浮かべていた。


 この状況を説明するのに数時間前まで遡る。


 腹心の部下(ディーバ)に蔑ろにされながら執務室に拉致されたリアは嫌々ながら本来の職務をこなしていた。


 だが、そこは彼女である。


 大人しくなど出来るはずもない。


「もぅ、なんなのよぉ…この書類の束はぁ?」


 身体が隠れるほど山積みされた書類の束に顔を埋めながら不機嫌さを隠すことなく露わにしてぼやいていた。


 ガチャリ。


 彼女の執務室の扉がノックも無しに開く。


 五護衆であり、この世界の重鎮でもあるリアの執務室に入るのにそんな不作法が許されるのは一人しかいない。


 彼女の主であるフェンリルであった。


「おぉ……まじめにやっては…いないのじゃな」


 書類の束と不機嫌そうなリアの表情に呆れた顔をしながらフェンリルは彼女に近付いていく。


 判りきっていたことだが一抹の期待を持っていたフェンリルは彼女の姿に深い溜息を漏らす。


 まぁ、もしかしたら…程度の期待であったから溜息だけで済んでいるのだ。


 もしも書類仕事に真摯に打ち込んでいる彼女の姿を見ようものならフェンリルはそれはそれで自らの目を疑うだろう。


 何はともあれ安定感抜群なリアの姿に安堵してしまう哀しい主であったのだ。


「…なによぉ、さっきからコロコロと表情を変えちゃってぇ~。何しに来たのぉ~」


 自らの主にため口、敬うことをしようとすらしない彼女の態度にフェンリルは慣れたものである。


「主にため口、敬うことすらせぬのか…嘆かわしいのじゃ。のぅ?妾は誰じゃ?」


 その問いに面倒くさそうに答える。


「……百合ロリばばぁ?の皇女?様」


 一切の躊躇のない発言であった。


 ただ、彼女も公の場では忠義を示し、敬意も払う事も出来るこの世界の筆頭騎士である。


 なら、何故このような発言をするのか?


 答えは簡単である。


 慣れない書類仕事に疲れていたのだ。


 疲れていれば人間、億劫にもなる。


「何故に疑問系?せめて皇女の疑問系は止めぬか…聞いた妾がバカじゃった……」


 九尾を残念そうに項垂れながら溜息をつくフェンリルにリアは訝しげな表情を浮かべる。


「…っで、本当に何しに来たのぉ~?」


 面倒くささ全開のジト目を向けるリアにフェンリルは何ともやるせなさを感じながら肩を落とした。


彼奴ら(浩介達)の事じゃ…お主はどう見る?」


 応接用の柔らかなソファに座りながらフェンリルはリアを見つめる。その瞳は先ほどまでとは違い統治者である事を如実に物語るものだった。


「どうとは?美少女エルフの個人的意見?それとも、世界を統治する者の守護者としての意見?」


 美少女と呼ばれる歳でもなかろうにと心の中で呟きながらも決して口にしないフェンリルである。


 ツッコミを入れれば負けな事はリアの口元が微かに緩んでいることで直ぐに判ったからだ。


「…後者の意見じゃ」


 半ば呆れながら溜息交じりに答える。


「じゃあ、美少女エルフの意見を答えるわねぇ~」


 少しつまらなそうにフェンリルの言葉をガン無視して話を先に進めようとするリアに彼女は諦めた表情で頷く。


「そうねぇ~、私の印象は面白そう…かなぁ」


 天井に視線を向けながらボソリと呟く。


 その言葉にフェンリルは思わず苦笑した。


「お主は相変わらずじゃな。じゃが…ふむ、面白そうか…一理あるやもしれん。奴らは確かに面白い」


 リアの感想に彼らの今までの行動を思い返しフェンリルの表情も楽しげなものへと変わる。


「なら妾はどうするかのぅ…」


 一つの世界を統べる彼女である。


 面白そうの一言で行動するわけにはいかない。


 何らかの意味を持たせなければ只の独裁でしかなく、それはフェンリルの理想とは異なるのだ。


「まぁ、何があろうとフェルだけ(・・)は護ってあげるわよぉ~。一応は騎士だからねぇ」


 頬杖を付きながら微笑を浮かべる彼女にフェンリルも苦笑しながら彼女に頷くのだった。


 軽口は叩いてはいるがリアは主であるフェンリルの為なら浩介達ですら敵に回し言葉の通り彼女だけは命に代えてでも護るつもりでいる。


 それが彼女の矜持なのだ。


「まぁ、悩んでも仕方ないのぅ。彼奴らの行動を暫くは静観してみるとするのじゃ。では、帰るとするのじゃ」


 ソファから勢いよく立ち上がったフェンリルに悪戯心が湧き上がりリアを刺激する。


「…それはいいとしてぇ~」


 部屋から出ようと扉に手を掛けたフェンリルをリアは口元に微かな笑みを浮かべ呼び止めた。


「な、なんじゃ…」


 リアの表情に警戒心を露わにして聞き返す。


「今、浩介達の部屋に彼女(・・)が来てるよぉ~」


 その言葉にフェンリルの尻尾がビクンッと反応し、彼女の瞳が大きく見開かれリアをマジマジと見つめる。


「えっ?マジかぇ?」


 フェンリルの身体はその朗報に機敏に反応するがリアの表情に彼女の意識が警戒し疑心暗鬼なジト目で聞き返す。


「マジだよぉ~、一応は私もエルフの皇族の端くれだからねぇ。精霊眼(セレス目線)で見たから間違いないわよ」


 自分の瞳を指差しながらリアはニンマリと笑う。


 その表情は悪戯心満載であるにも関わらずフェンリルは信じてしまった……。実際、彼女(業罪の皇女)は皐月と意識を入れ替えて浩介の部屋に入る。


 間違ってはいない。


 フェンリルも瞳を閉じ獣耳をピンッと立て意識を集中して彼女の存在がいる事を確認して表情をぱぁーっと変化させる。


「本当なのじゃ!屋敷に気配を感じるのじゃ~!!急がねば!ふへへぇ~、久し振りにいっぱい、いっぱぁい、いっ~ぱい甘えてくるのじゃ!」


 バンッ!シュダダッ~。


 執務室の扉を勢いよく開け放ち、脱皮の如く走り去っていくフェンリルの後ろ姿を見つめながらリアはこれ以上ない満面の笑みを浮かべる。


「ふふふっ、面白くなりそう。私も観に行こう……うんっ?誰よ?……あっ!?」


 書類の束を押しのけて部屋を出ようと立ち上がったリアの腕を不意に誰かに握りしめられた。


 リアは訝しげな表情で振り返り、相手を見た瞬間に表情を強張らせ苦笑いを浮かべた。


「…どこに行こうとされてるんですか?」


 リアの手を握りしめていた者が笑顔を引き攣らせながら怒りに満ちた瞳で見つめている。


 腹心の部下であるディーバであった。


「…えっと~、お花を摘みに……」


 視線を逸らし定番の逃げ言葉にディーバはあくまで笑顔を絶やさず奥の扉を指差す。


「でしたら、あちらにありますよ?」


 リアの進行方向とは真反対である。


「あっ!そうそう部下の稽古に付き合う約束…」


 態とらしく思い出したかのようにおでこを叩き、ぺろりと舌を出してお茶目な一面を見せてみる。


 だが、ディーバは深い溜息をつきながら呟く。


「…そんな自殺願望のある部下はいません」


 リアの稽古は熾烈を極め、時には生死を彷徨った者もいるため進んで指南を受ける者はいないのだ。


「えっと、えっと……」


 視線を右に左に泳がせながら思案するリアをジト目で見つめながら彼女の腕を掴む手に力を込める。


「用事が無いようでしたら職務に戻りましょう」


 満面の笑顔でディーバはリルを見つめる。


「…はい」


 笑顔ではある。けれど、リアの瞳には彼女の背後に浮かぶ怒りの焰を見た気がした。


 項垂れながら書類の束に連行されたリアの姿は諦めたかのようにディーバには見えた。


 だが、それは甘かった。


 書類の一枚を手に取り渋々と仕事を始めたリアに一瞬、本当に刹那とも言える一瞬だけディーバは気を抜いてしまった。


 その一瞬をリアが見逃すはずがない。


 書類に向けていた視線が素早く扉までの経路を目測し足裏に力を込め、一気に走り出す。


 その早さを目で追える者はそうはいない。


 リアの通り過ぎた後に突風が室内を掻き乱す。 


「ふへへぇ~、あまぁ~い。じゃあ~ねぇ」


 そのリアの声がディーバの耳に届いた頃には彼女の姿は既にそこにはなかった。


 書類が紙吹雪のように室内で舞う中で走り去っていくリアの小さな後ろ姿を茫然と見つめるしかなかった。


「…はっ!?やられた……」


 気付いたときにはリアの姿は既に無い。


 後に残されたのは紙吹雪のように散乱する書類の山だけであり、それを片付けるのは必然的に自分がやらなければならないという虚しさだけだった。


「…はぁ、もうイヤ。転職しようかしら?」


 深い溜息と共に散らばった書類を集めながら本気で転職を考え始めるディーバだった。

読んでいただき有り難う御座います

<(_ _)>

なかなか話が進まず申し訳ありません。


こんな未熟な作者ですが見捨てずに見守って頂けると幸いです。


では、失礼いたします

(o_ _)o

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