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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第四章 多重世界は魂の連なり
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其の16 虚栄の影

遅くなりました……(o_ _)o


あらすじ

~常闇の神器に取り込まれた浩介はいるはずのないもう一人の人格と出会う。彼女の名はアイシス、別の神器に封じられている存在で在るはずの彼女がトリニティと共に彼を迎え入れた。困惑する彼を尻目に二人は言い争いを始める。そんな中、浩介はアイシスの言葉に疑いを抱く。

警告…それが意味するのは何か……。~


では、お楽しみください



 この世界(常闇の神器)に這入り込んでからどれだけの時間が過ぎたのか既に定かではない。


 対処しようのない現実に浩介は床に胡坐を掻いて頬杖を付きながら二人をぼんやりと見つめることにした。


 この真っ白な空間ではどれだけの時間が過ぎたのかは分からないが体感的には数時間は放置されている気がした。


 相も変わらずアイシスはトリニティを弄り倒しており、被害者である彼女の瞳は既に虚ろなモノと化していた。


ー…もう、いや…話が先に進まない。


 悲痛にも似たトリニティの呟きに思わず頷いてしまう浩介であった。


〔…同感だ〕


 その言葉に彼女の瞳が浩介へと向けられた。


ー………なら、助けて。


 けれど、浩介は小さく溜息をつき首を横に振る。


〔無理だな…何故だか知らんが近づけない〕


 浩介自身、この無意味な時間を打破しようと試みたのだが、一定の距離まで近付くと二人から何故か遠ざかってしまうのだ。


 まるで反発し合う磁石のようであった。


 浩介も何度目かの挑戦で早々に諦めたぐらいだ。


 何とか反発しないギリギリの距離を見出した浩介は床に座り込んで二人を傍観し始めて数時間が経過している。


〔何なんだよ……〕


 原因は明らかにアイシスであると分かっている。


 だが、当の本人(アイシス)はどうやら無自覚に力を発動しているようであり、質が悪いにもほどがあった。


ーあらあら、どうしてなのかしらねぇ~?


 トリニティを抱きしめたまま微笑を浮かべて首を傾げる彼女に浩介は苛立ちを隠すことが出来ない。


 明らかに何かを隠しているのが分かるからだ。


〔なぁ?〕


 浩介は頬杖を付きながら声をかける。


ーなぁ~にぃ?


 気の抜けた返事が返ってくる。


〔…何を隠してる?〕


 浩介の問いにアイシスの微笑が不敵な笑みへと変わる。心なしか周囲の空気が張り詰めたように感じられた。


ーどういうことかしらぁ~?


 彼女の口調や仕草、表情は全くと言って良いほど変わらない…けれど、何かが変化した気がした。


〔…確かアンタは俺に警告しようとしていたよな?一体、何を警告するつもりだったんだ?〕


 トリニティが現れたため中断していた浩介に対しての警告、その事が彼の意識の片隅で妙な痼りとなって引っ掛かっていたのだ。


 そんな浩介の感情を読み取ったかのようにアイシスの口角が微かに上がった。


ーふぅ~ん、そんなにぃ気になるのぉ~?


 浩介の背筋にゾクリと寒気が走った。


 嫌な予感が彼の意識に警笛を鳴らす。


〔あぁ、気になって仕方が無いな…〕


 相手に悟られないように唾を飲み込む。


 一言一句、聞き逃すなとグレ記憶が訴えてくる反面、浩介自身の意識は聞くべきではないと語りかけてくる。


 その相反する矛盾が浩介に言い知れぬ恐怖を植え付けてくるのだ。どちらを信用すべきは彼にも分かりかねているがアイシスの瞳からはどうしても目を離すことが出来ない。


 それが恐怖から来るモノなのかは分からない。


 けれど、微笑を浮かべるアイシスの漆黒の瞳は彼の意識を惹きつけて止まないのも事実であった。


ーそぉ~だったわねぇ~。忘れてたわぁ~。


 トリニティを抱きしめていた両手を彼女の胸元でポンッと叩き思い出したかのように軽やかな声を上げる。


 その行為がいかにも態とらしく見えて浩介は緊張感とは別の猜疑心が湧き上がってきた。


〔…こりゃあ、遊ばれてるな〕


 ポツリと呟いたその言葉に彼女は笑みを深める。


 まるで、悪戯がバレたかのような表情であった。


ーまぁ~警告って言ってもねぇ大したことじゃないのよぉ~……う~ん、そうねぇ……。


 トリニティの頭に顎を乗せてアイシスは考え込むように空を見上げ、何かを思いついたかのようにニンマリと笑みを浮かべて浩介に視線を移した。


ー……秘密?


 和やかに微笑みながら浩介を見つめる。


〔…なっ!?〕


 予想外の回答に浩介は思わず立ち上がった。


 彼女の言葉の意味が分からない。


 混乱する浩介の意識に追い打ちをかけるようにアイシスは「ふふふっ」と楽しそうに笑う。


ー悪趣味……さいてぇ。


 頭に乗せられた彼女の頭を振り払うような仕草をしながらトリニティは彼女に悪態をついた。


ーあら~?そう?そんなに酷いことはしてないと思うんだけどぉ~?う~ん、でもでもぉ、トリニティちゃんに嫌われたくないわねぇ~。どうしようかしらぁ~


 トリニティの言葉に眉間に微かな皺を寄せて困り顔で思案気な表情を浮かべるアイシスの姿に浩介はどこまで本気なのか想像する事が出来なかった。


 彼女の言葉が全て真実にも虚実にも感じられる。


 どう捉えるべきなのか、彼女の思案気な表情に思考を巡らせ最適な解を見出すために考え続ける。


 勿論の事だがアイシスに気を許すわけにもいかないため浩介は決して表情に出すことはしない。


 けれど、彼女の存在理由を考えれば考えるほど思考の輪廻に陥っていくのも事実だった。


〔…そもそも、なんでお前はここにいるんだ?〕


 思い切って当初の疑問をぶつけてみる。


 そうなのだ。


 この世界(常闇の神器)に彼女がいること自体がおかしな話なのだ。この世界はトリニティが封印された場所であり彼女が存在することが出来るはずがないのだ。


 浩介はふと二人の会話に気になる部分があったことを思い出した。


 トリニティは彼女に対して「最初からいる」と言っていたあの言葉だ。最初からいる…… その言葉が妙に浩介の意識に引っ掛かっていたのだ。


 顎に手を添えて浩介はその言葉の意味について思考を廻らせ考えを深めていく。


 その姿をアイシスは楽しげに見つめていた。


 まるで浩介を試しているようにも見える。


ー楽しいわねぇ~。


 アイシスの声は実に楽しげであった。


〔…なぁ、えっとトリニティだっけ?〕


ー…なに?


 虚ろな瞳が浩介へと向けられる。


いつ()から彼女はいるんだ?〕


 浩介はトリニティに抱きついているアイシスを呼び指しながら尋ねると心底イヤそうな表情を浮かべガックリと項垂れる。


ー…最初から、いる…もう、ずっと


 浩介はアイシスを見つめ眉間に皺を寄せる。


 グレ記憶にある封印される瞬間を意識に呼び出し精査する。と言っても他者の記憶であるため浩介には朧気にしか認識できない。


 なぜなら記憶と知識は違うモノであるからだ。


 浩介は全てを含めてグレ記憶と称してはいるが記憶と知識は別物である。


 もし、グレンデルの意識が残っていればまた違った手段が取れたのかもしれない。


 ただ、彼の意識は浩介の意識の奥深くに護印された存在から浩介を護るために消滅してしまっている。


〔…分かりずらいな。つまりは封印されると同時にこの世界に彼女も共に封印されたって事か?〕


 頭の中の考えが思わず口に出てしまったがトリニティは静かに首を振る仕草を見せた。


ー本人じゃない……本人ならもっと面倒くさい


 その発現は衝撃的なモノであった。


 今の彼女の存在ですら浩介にとってかなりウザったい存在であるにも関わらず更に上を行くなど考えられない。


 もし、それが事実であるならばと想像した浩介はその恐ろしさに思わず身震いしてしまう。


〔…なら、今の彼女は?〕


 トリニティは考え込むように腕を組み首を傾げる。本人でないのなら本人以外の何かであるはずなのだが上手く説明する方法が見つからないらしい。


ーう~ん、残留思念?みたいなモノかなぁ~。


 二人の会話に聞き身を立てていたアイシスが考える素振りを見せながら会話に割り込んでくる。


〔…残留思念?なんのために?〕


ー……う~ん、そうねぇ~、なんて説明すれば良いのかしら?あっ!そうそう!これよぉ~、これ!


 閃いたとばかりに瞳をキラキラとさせるアイシスの姿にトリニティは胡散臭げに彼女を見上げる。


ー…嫌な予感がする


 軽く身震いするトリニティに何故か浩介も同意してしまいそうになってしまうが辛うじて聞き返す。


〔…っで?〕


 簡潔な問いに満面な笑顔を浮かべるアイシスの姿に悪い予感しか思い浮かばない。


ーひ、ま、つ、ぶ、し……ね。


 一瞬の沈黙が周囲を包み込む。


〔…えっ?〕


 その言葉に浩介は頬を引き攣らせていく。


 トリニティに至ってはあまりに理不尽な理由で居座られていた事実に崩れ落ちるように座り込んでしまった。


             *


 アイシスの衝撃発言になかなか立ち直れない二人を彼女は楽しげな表情を浮かべて眺めていた。


ーお~い、そろぉ~そろぉ戻ってきてくれなぁい?


 項垂れる二人に間延びした声が話しかけてくる。


ー…誰のせいだと思ってる?


 アイシスの束縛を逃れ距離を開けたトリニティがジト目で彼女を見つめながら不平を漏らす。


〔あぁ、同感だ…〕


 釣られるように浩介も頬を似片手を添えながらアイシスをジト目で見つめている。


 そんな二人の表情にアイシスは、この場所に存在し続けた自分の役目も終わりに近付いてきていると感じていた。


 その瞳が二人を優しげに見つめる。


 彼女の瞳は本来の人格へと繋がっていた。


 本来のアイシスは別の神器に封印されており、彼女の瞳を介して浩介の器としての力を見定めていたのだ。


この子(浩介)なら……。


 二人を見つめながら独り言のように呟く。


ー…何か言った?


 微かに動いたアイシスの口元にトリニティは訝しげな表情を浮かべながら彼女を見つめた。


ーいいえ、なんでもないわよぉ~。


 緊張感のない口調で微笑を浮かべる彼女の姿に言い知れぬ不安感を煽り立てられる浩介であった。


〔…なんか、嫌な予感がするな〕


 その直感は概ね正しいと言えるのかもしれない。


 なぜなら今、彼らに答えているのは残留思念の存在ではなく彼女を介して接している本来のアイシスだからだ。


ーまぁ、及第点ってとこかしら…トリニティちゃん、私はそろそろ消えるわよぉ~。あっ、そうそうこの娘ってば寂しがり屋だから一人にしないであげてねぇ~。


 何故なのか分からないがアイシスの言葉は別れ際の挨拶のように感じ浩介は彼女を無言で見つめる。


ー…アイシス。


 トリニティも何かを察したかのように言葉少なめに彼女を見つめており、その瞳は心なしか淋しげに見えた…けれど。


ーあらあら、そんな顔をしちゃだめよぉ~。


 周囲の視線を欺いたアイシスが満面の笑みを浮かべながらトリニティに抱きついている姿が在った。


 浩介は彼女の動きを捉えることが出来ずに茫然としてしまう。これが帝の人格の力なのかと無意味に驚愕にも似た感情が湧き上がっていた。


 ただ…同時にトリニティの近くにいた浩介は例の力によって躊躇無く弾き飛ばされ地面に叩きつけられるのだった。


ーうっとうしい…消えるなら早く消えて。


 先程までの淋しげな表情が嘘の如く心底イヤそうな表情でジタバタと身体を動かしアイシスの抱擁から逃げようと必死に抵抗を試みるが彼女の力では振りほどくことが出来ない。


ーそんなこと言わないでよぉ~お姉さん哀しいわぁ


 涙声でトリニティに頬擦りする姿とは裏腹に哀しげな要素一つ無い満面の笑みを浮かべるアイシスに浩介は完全に遊ばれている事を実感して呆れた溜息を漏らす。


ーうぅ……もう、ヤダ。


 何度も頬擦りされ涙目のトリニティは意気消沈していく。


ーあらあらぁ、これ以上は本当に嫌われちゃいそうねぇ~。うん、残念だけど楽しみはまた今度にとっておくわぁ。じゃあ、そろそろ消えるわねぇ~


 肩を震わせながら涙目のトリニティにアイシスも苦笑を浮かべながら優しく彼女の頭を撫でる。


 そして、その視線を浩介に向ける瞳を細めた。


ーじゃあ、トリニティちゃんを宜しくね…アマネル(・・・・)


 その名を聞いて浩介の意識で何かが反応した。


〔どういう……?〕


 アイシスが呼んだその名に言い知れぬ悪寒に襲われ、さらに脈拍が速まり呼吸がどんどんと荒くなっていく。


 それは先ほど地面に叩きつけられたときの痛みではなく、意識の奥深くから沸き上がる不安感によるもので浩介の瞳は何かに怯えるように見開かれていく。


〔…な、なにが?なんなんだよ、これ!?〕


 理由が分からない。


ーまだぁ、自覚が出来てないみたいねぇ……忠告してあげるわぁ、貴方の存在は器に過ぎない。私達を納めるためだけに選ばれ連れてこられたのよ。苦しみなさい、そして藻掻き足掻き自らの運命に抗いなさい……また会える日を心待ちにしているわ


 割れるような激しい痛みに頭を押さえて堪える今の浩介には彼女の言葉の真の意味を真策する余裕すらない。


 身体は痙攣し瞳は忙しく動き焦点が合わない。


〔…ぐっ、うぅ…何なんだよ…〕


 嗚咽が漏れる。


 アイシスが微笑を浮かべながら浩介を見つめ、その手はトリニティを優しく包み込むようにそっと彼女を抱きしめる。その温もりにトリニティは顔を上げ彼女を見上げた。


ー…本当に行くの?


 ニッコリとトリニティを見つめ小さく頷く。


ーうん、私の役目も終わったから…トリニティちゃん、彼を支えてあげてねぇ。まだ、魂が不安定だから貴方の力が必要なの。分かるわよね?


 今までと違う慈愛に満ちた表情と優しげな口調がトリニティの心を揺らす。


ー…卑怯…いつも、そう。


 俯きながら呟くトリニティの頭をアイシスは優しく撫でる。


ー大丈夫、私がいなくても貴方なら出来るわ。


 確信に満ちた口調であった。


ーじゃあね……


 その言葉と共にアイシスの身体が淡い光に包まれていき、その光が粒子へと変わり徐々に彼女の姿を失わせていく。


ー…アイシス……またね


 消えていくアイシスの温もりを感じながら呟くトリニティは顔を上げることが出来ずにいた。


 徐々に消えゆく彼女の存在にトリニティは涙していたからだ。封印されてから共に過ごした時間が脳裏を過ぎる。


ー…アイシス


 声が震えた。


 そして彼女は温もりだけを残し、トリニティが封じられたこの世界(常闇の神器)から消えていくのだった。

なかなか先の進まない話ですが読んでいただき有り難う御座います<(_ _)>


ペースを上げていこうと頑張ってはいるのですが……思うように書けてないのが現状です。


筆の遅い作者ですが待って頂けると嬉しいです。


あ、あと出来ればブクマ評価など頂けると励みになります。よろしくお願いいたします。


では、失礼いたします。

<(_ _)>




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