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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第四章 多重世界は魂の連なり
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其の12 裏切り者の決意

すいません。だいぶ遅くなりました

(o_ _)o


なかなか書けずに期間が空いてしまいました。


今回は最後の皇女で出た男の話です。


では、お楽しみください



 男は奇妙な街並みを思案下に歩いていた。


 その街並みは人々の喧噪や活気といったものはあるのだが、どこか嘘くさいのだ。


 機械樹を中心に扇状に広がる街並み、多くの人々が忙しなく行き交う街道、全てがたった一人の少女のためだけに存在していることを男は知っている。


 そして造られたモノであることも…。


 男はこの街の出身ではない。


 否、この街に人は存在しない。


 人のような存在がいるだけなのだ。


「相変わらず不気味だな……」


 周囲を見渡しながら、その異常さに男は辟易とする。容姿や人種、様々な存在がいるが全てに共通していることがある。


 表情がないのだ。


 店の亭主とか客が楽しげに会話をしているが、表情に一切の変化がなく不気味さが増している。


 会話と表情が一致していないのだ。


「だいぶ慣れたと思ったんだがな…」


 男は小さく呟くと足早に歩き始める。


 金髪の少女が統治する世界に降り立ち、どれだけの月日が過ぎたのだろうかと男の脳裏を過ぎった。


「…バレてるよな」


 数分前、少女に面会しフェンリルと常闇の世界の和平の終結を報告したときのあの瞳が気になった。


 男の名はバルト・カイエン、業罪の皇女の部下であり、ルシーダの部下でもある。


 つまり彼は二人の皇族に仕えているのだ。


 二重家臣(スパイ)と言うのだろうか。


 現在は業罪の皇女寄りの姿勢をとっているが、時と場合によってはルシーダ寄りへと傾く可能性もあるのが彼であった。


 だが、最近では業罪の皇女に惹かれている自分がいることも彼自身、理解していた。


「潮時だな…」


 ルシーダの世界の現状を報告した際にバルトは皇女に惹かれていることを確信したのだ。


 彼女の瞳に見つめられバルトは歓喜した。


 この方のためなら死ねるとさえ思えた。


 今まで根無し草の生き方をしてきたバルトにとって誰かに仕えるという事は自分の身を守るためだけの手段に過ぎないと思っていた。


 あの戦乱の中で生きるためにどれだけ多くの者達を裏切りながら世界を渡り歩いてきたのか分からない。


 それは生き残るため必要な手段であると言い聞かせ、自分自身を誤魔化しながらバルトは無慈悲に生きてきた。


 戦乱も終息を迎えて、ようやく生きる意味を模索し始めた頃にバルトは業罪の皇女と出会ったのだ。


          *


 あれは戦乱が終息してさほどの時間は過ぎておらず、中心の世界では帝の代理として彼女、業罪の皇女が各世界の皇族たちを一同に集めていた。


 その時のバルトは傷だらけであった。


 確かに戦乱は終息を迎えていたが、それは世界間での話に過ぎない。


 負の遺産とも言える憎悪の感情は未だ人々の心を蝕んでおり、バルトは恨みを買いすぎていた。


 今まで裏切り続けてきた幾人もの存在に命を狙われ、バルトの生傷が絶えることはなかった。


 そんな日々に、嫌気を覚えながら辿り着いた世界が中心の世界であったのだ。


 戦乱の傷跡も生は々しく残ってはいたが、この世界に住む人々には他世界にはない安らぎがあった。


 帝の直轄地であり、彼の理の力が他世界を凌駕することも要因の一つなのかもしれない。


 そのため、業罪の皇女の呼びかけに各世界は腹に一物を抱えながらも、その呼びかけに応じたのだ。


 それを見越してた訳では無いがバルトはこの世界で何らかの転機があるのではという思いがあった。


 当てもなく気の向くまま歩みを進めていたバルトは街の外れにある屋敷前で妙な違和感に襲われた。


 咄嗟に気配を消し、違和感を探る。


 身体に染みついた習慣が危険を知らせていた。


 誰かに見られているような気配がしたのだ。


 意識を周囲に向ける。


 視線は動かさずに片手は直ぐに抜けるように剣の柄に触れ臨戦態勢を整える。


 それを待ち構えていたかの様に彼の意識へと誰かに見つめられている様な違和感が侵食してくる。


 抗いがたい不快感に眉を顰めるも、周囲の警戒を怠る愚は犯すほどバルトの人生は未熟でない。


 だが……。


「…お主、妾と同じ目をしておるな」


 バルトの背後で女性の囁き声が聞こえた。


「…なっ!?」


 バルトは反射的に飛び去り距離を開けると、錆び付いた両刃の剣を声のした方へと構えた。


「…だれだ」


 声の主に殺気を含めた視線を向ける。


 けれど、更に驚愕する状態へと導かれたのだ。


「…周囲にも気を配った方がいいよぉ~」


 バルトの首元に片刃の剣が添えられ気の抜けた声が背後から聞こえ、彼は信じられない思いで硬直する。


 気配すら感じなかった。


 背筋に寒気が走る。


 首元に突きつけられた刃の主がは敵意のある者であったならばバルトの命は既に失われていただろう。


「リア、その辺にしてあげた方がいいですよ」


 さらに直ぐ傍で呆れた口調の幼女の姿が視界に入り、バルトの恐怖心が更に増した。


〔…何なんだ、いったい?〕


 これ程まであっさりと周囲を囲まれたのは、あの戦乱でも経験をしたことがない状況であった。


 死の恐怖を感じながらも身動きが取れない。


「…もう、よい、離すのじゃ」


 目の前の人物の声に周囲の気配が離れていくのが分かった。首元に添えられていた刃も既になく、それが何時消えたのかすらバルトには理解できなかった。


 カランッ。


 手に持っていた剣が床に落ちる音と共にバルトは力なく地面に膝を突いた。


 だが、身体中から湧き上がる恐怖を抑えることが出来ない。無意識の内に身体が震え、嫌な汗がバルトの頬を伝い地面に滴り落ちる。


 目の前の存在を知覚することが出来ない。


 だが、彼らは確かにバルトの周囲に存在する。


 圧倒的な力量の差を実感できる。幾つもの戦場で何度も死を間近に感じたことはあった。


 けれど、これは違うとバルトの思考が訴えかける。全く別次元の恐怖だったのだ。


「そう、堅くならずとも良い…」


 バルトの心中を察してか、その声には殺意は欠片も感じられなかった。


「…あんたら誰だ?」


 絞り出すように問いかける。


 その姿にリアが微かに微笑を浮かべた。


「裏切りのバルトも形無しねぇ~」


「…っ!?」


 言葉が出ない。


〔刺客……だな〕


 その名を呼ぶのは少なからずバルトと接点のあった者達となり必然的に彼にとって刺客となる。


 ただ、そうなると疑問が残る。


 何故、あの時に首を斬らなかったのかだ。


 彼らの力量からすればバルトの抵抗など無いに等しい事は先程の恐怖で身に浸みている。


 圧倒的な力量差、バルトの脳裏に結論が浮かぶ。


〔弄ばれている…〕


 その結論に苦々しい思いを噛み締める。


「…目的は何だ?」


 バルトの問いに先程、彼の周囲を取り囲んだ者達から失笑が漏れる。


「なぁ~んか勘違いしてない?」


 間延びした声に溜息をつく少女の声が重なる。


「リアが余計なことを言うからでしょう…」


「え~っ?私が原因なの?」


 心外そうな口調にバルトは訝しんだ。


 何かがおかしい。


 今までの刺客とは根本的に違う気がした。


 先ず、彼らに敵意は一切ない。


 それは圧倒的な力量差による余裕と言ってしまえばそれまでであるが、それでは合点がいかない。


「お主ら、いい加減にせぬか…」


 二人の主らしき者が呆れた口調で叱咤する。


「あ~ぁ、ミアっち怒られたぁ~」


「いえいえ、貴女が原因でしょ」


 二人の口調には緊張感がまるで無い。


 だが、バルトは警戒を解くことが出来ない。


 それだけ苛酷な道を歩んできていたのだ。


 身体の緊張感を解くことをせずに機会を窺っているバルトに対して二人の主は微笑を浮かべた。


「姿を見せろ……」


 彼らの姿が認識できないバルトは不安と恐怖を押し殺し声と気配を頼りに一点を見つめる。


「そうじゃな、不作法であったな……」


 その瞬間、霧が晴れるように三人が姿を現した。


 一人はエルフ、もう一人は巫女服姿の幼女、そして二人に守られるようにして背後に立つ人物と目が合った瞬間、バルトは言いようのない圧迫感に抑え込まれてしまった。


「…なんだ、この重圧感は?」


 彼女の瞳に見つめられるだけで呼吸が苦しくなる。その瞳が己の心を見透かされているようだった。


「う~ん、やっぱ耐えられないよね…」


 エルフが苦笑を浮かべる。


 視線をエルフに向けバルトは恐怖を覚えた。


 腰に差した両剣、隙の無い気配を醸し出しながらも表情は常に人を食ったかのような笑みを浮かべている。


 その姿にバルトは見覚えがあった。


 幾多もの戦でフェンリルの騎女として恐れられたリア・キルケ、五護衆の一人……。


〔勝てるわけがない…〕


 もし、バルトがこの瞬間に殺気を放っていたならば一瞬でその命を散らしていただろう。


 今度は違う緊張がバルトを襲う。


 五護衆の名を冠する者が警護する存在、先程の重圧感を放った彼女の正体にはバルトは多少なりとも予想は付いていた…出来れば間違いであって欲しいと願いながら、ある人物の名を呟く。


「……業罪の皇女」


 その呟きに二人の主は楽しそうに瞳を細める。


「ひゅ~、流石だねぇ」


 瞳を軽く見開きリアが感嘆する。


「当然のことでしょうね…」


 巫女服の幼女は呆れたように呟く。


 二人の言葉に確信を持ったバルトは再度、彼女へと視線を向けた。


「お主、妾に仕えぬか?」


 視線が交差した刹那、二人の主がバルトに片手を差し出し表情を緩ませる。


「拒否権は…ないか」


 リアと幼女の突き刺さる瞳にバルトは思わず溜息をつき膝を折った。臣下の礼である。


「裏切りと呼ばれ続け日々、刺客に追われる我が身で宜しければ……貴女に仕えましょう」


 バルトに拒否権など無かった。


 もし、彼女の誘いを袖に降ればバルトの儚い命など塵芥の如く露散するのは明白だった。


 選択肢など初めから無かったのだ。


 恭しく膝を折り頭を垂れるバルトに彼女はそっと肩に手を当て優しい口調で彼に言葉をかける。


「済まぬな…お主の存在が今の妾には必要なのだ」


 その言葉の真の意味は当時のバルトには分からなかったが今ならハッキリと分かる。


 拒否権の無い状態での勧誘は今、思えば無理矢理感が半端ないなと苦笑してしまう。


 だが、当時の彼女も自身の目的のために手段を選んでいられなかったのだと今のバルトなら理解が出来た。そう、帝の意志を継ぎし者の存在を知ったときに失われたピースがピタリと収まったのを感じたのだ。


           *


 過去に想いを馳せていたバルトは周囲を見渡し、この世界の監視が緩んでいることに気付く。


 いつものなめ回すような気配を感じられない。


「…これは罠か好機か…俺の運命がこの判断で決まると言うことだな」


 そう判断して瞳を閉じ大きく溜息をつく。


 それは自らの抗いがたい運命に納得するために深呼吸をしたと表現する方が正しいのかもしれない。


「…裏切りのバルトの最後の裏切りだな」


 決意を新たにバルトはある場所を目指し歩みを進める。その場所はバルクナール、彼女の元へと戻るために、そして最後の裏切りとするために…。


呼んでいただき有り難う御座います

<(_ _)>

ブクマ、評価して頂けると嬉しいです

(*´ω`*)

最近は別の話も書いていますので読んで頂けると嬉しいです(≧∇≦)b

では、失礼いたします

(o_ _)o

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