其の10 天敵と狂喜
「~じゃ」キャラが重なると分かりづらい
(^_^;)
では、お楽しみください
「……何が起きておるのじゃ?」
目の前で起きている出来事に理解できず大きく瞳を見開きながら雅はニルの背後から見つめていた。
「あれは業罪の皇女様?」
目の前に姿を見せた皐月の容姿にミアが呟く。
その容姿と離れていても感じる威圧感に間違いないだろうと思いつつもミアは確信できずにいた。
少し小首を傾げながら皐月を見つめている姿をニルは愛でるような瞳で見つめる。
だが……。
ゾクッ。
その視線にミアの背筋に寒気が走った。
端から見れば慈愛に満ちているように見えるが、ミアの感覚ではニルの瞳にガン見されているような錯覚を覚えてしまうのだ。
「そうみたいですね」
ミアの恐怖を知ってか知らずかニルの口調は穏やかであった。
ニルには何となくだが皐月の意識に他の意識を常々感じていたのだ。
中心の世界を統べる業罪の皇女であったのは驚きであったが、それも可能性の一つと考えていた。
「…ただ、来ますよね間違いなく」
ボソリと呟いたニルの言葉に震えながらもミアは頷き徐に扉へと視線を向ける。
ニルの耳には遠くからバタバタと誰かが走ってくる音を捕らえていたのだ。
バンッ!
盛大に扉が開かれ、肩でゼイゼイ息をしながら瞳を輝かせた少女が一人……フェンリルである。
「気配を、気配を感じたのじゃ!」
血走った瞳で周囲を見渡す。
その姿はミアを愛でるニルのそれと同じだった。
「…類は友を呼ぶ…ですね」
ミアはその姿にガックリと項垂れる。
浩介と会話をしていたサツキの表情が目に見えて強張るのが分かった。
薄いレース越しで見えにくいが彼女の頬が引き攣っているのが見えて浩介は訝しげに後ろを振り返った。
その瞬間、浩介の視界に入ってきたのは血走った目で宙を舞いながらサツキへと一直線に向かってくるフェンリルの姿であった。
「おっわ!?あぶねぇ~………あぁ、そういうこと」
ぶつかる寸前に避けた浩介は、その先にいるサツキへと全力で抱きつくフェンリルの姿に何故か納得する。
「久し振りなのじゃ!久し振りなのじゃ!」
尻尾をブンブンと振り回しながら満面の笑みで首筋に抱きつき頬をすり寄せる。
「ひ、久し振りじゃのぅ……」
心なしかサツキの声に張りがない。
それどころか眉間に皺を寄せている。
誰もが想像できる。
迷惑なのだ。
「会いたかったのじゃ、会いたかったのじゃ」
フェンリルが満面の笑みを浮かべながら突きだしてくる頭を撫でるサツキの頬は引き攣っている。
そんなことはお構いなしにフェンリルは満足そうに目を細め獣耳は無警戒の如くペタリと頭部に張り付いている。
「威厳もへったくれもねぇな…」
呆れた様子で浩介は二人を見やる。
何だかさっきまで悩んでいたのがアホらしくなる光景に浩介の表情にも自然と笑みが溢れた。
「良い笑みが出るようになったようじゃのぅ」
サツキが浩介を見やり微笑を浮かべる。
「まぁな、何だかアホらしくなった」
互いの視線がフェンリルに向けられ、だらしないその姿に二人の笑顔は苦笑いへと変わる。
ボフッ!?
突如、フェンリルの身体から白い霧が発生しサツキを包み込む。
「人化の術が解けましたね……フェンリル様、完全に油断なされておいでのようです」
同じ獣人族であるミアが半ば呆れたように呟く。
世界の一つを統治する皇女であるフェンリルが人化の術を解く意味、全てを晒し出す事と同意義なためミアが呆れるのも尤もな話であった。
彼女を狙う不届き者がいれば舌なめずりするに違いない。ただし、この面子に喧嘩を売る馬鹿はよっぽどな人物であるだろう。
幾数年を生きる【八咫烏の太刀】の化身である雅、それを使役し剰え四大精霊をも使役する浩介、全ての理を無力化できる瞳を持つ業罪の皇女……下手をすれば五護衆のリアも馳せ参じる環境である。
フェンリルが人化の術を解く位、油断していてもさして問題のない状態だったのだ。
白い霧が晴れ徐々にその姿を現していく。
それを最も待ち望んでいるのはニルである。
見開いた瞳が霧の先を見据えている。
「ニル……恐いのじゃ」
その血走った瞳に雅が震える。
「もうすぐ…もうすぐ自由になれる」
フェンリルの姿を知るミアは期待を込めた心の呟きを吐弄していた。
霧が徐々に晴れていくにつれミアを抱きしめるニルの腕に力が籠もっていく。
細腕の割に力が強く、ミアは苦しそうにしながらニルを見上げるがその瞳にゾクッと背筋が凍り付く。
「うっ!?ちょ、苦しいです…だめだ、完全に我を失ってる……」
悲痛な訴えも今のニルには聞こえない事を悟ったミアはただ項垂れるしか出来ない。
「うふふふっ、極上のモコモコとフワフワが私の前に姿を現すんですね……うふふふっ」
瞳は血走り、不気味な笑みを浮かべ霧の先を見据える今のニルの姿は狂喜に満ちたモノであった。
流石の雅も唖然としてニルから離れようとする。
けれど。
「逃がしませんよ…」
可愛らしい肉球から爪を生やしミアが雅を捕まえる。その瞳もどこか異常なものに感じられた。
「何だかイヤな予感しかしないのじゃ……イヤじゃ、死にとぉない」
首を振りながら涙目になる雅、けれどガッチリと捕まれたミアの爪から逃げる手段が見つからない。
必死に抗うがミアも離す気はさらさらない。
暫しの押し問答に雅は項垂れる。
「…奥の手じゃ」
雅が小さく呟くとその姿が変化する。
カランッ。
漆黒の太刀が床に転がった。
ミアの爪から逃れられた雅ではあったが微かに震えている。在ることに気が付いたからだ。
〔動けないのじゃ……〕
すっかり人の姿に慣れきっていた雅は元の姿では動くことすら出来ないことを忘れていたのだ。
ミアの爪から逃げるための雅の苦肉の策であったのだが、万事休すの様相を呈している。
ミアが不気味な笑みを浮かべる。
ただ震えるしか出来ない雅。
その時は刻一刻と迫っているのだった。
読んでいただき有り難う御座います
(o_ _)o
なかなか更新できずに申し訳ありません
(o_ _)o
ブクマ、評価していただいた方々には本当に感謝の一言です
(*´ω`*)
筆の遅い作者ですが見捨てずに頂けると嬉しく思います(^_^;
では、失礼いたします
(o_ _)o




