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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第四章 多重世界は魂の連なり
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其の8 意志を継ぐ者

皐月とサツキ、発音が微妙に違うと判断してください。(^_^;)


なぜか?呼んでいただければ判るかな…自信はありません(o_ _)o


では、お楽しみください



「…はぁ」


 浩介は目の前の木箱を見つめ、溜息をついた。


 常闇の使者であるタラニスから手渡された彼らの世界の神器を前にして唯々、憂鬱でしかなかった。


「…はぁ」


 何度目かの溜息をつく。


 その姿をソファに座っていた皐月は苛立たしげな表情で見つめている。


「あれはヤバいのじゃ……」


 遠くでニルの背後に隠れながら雅が震える。


「ですね」


 その言葉に同意するニルと彼女に抱きしめられた状態が定位置になってしまったミアもコクコクと激しい同意を表していた。


「逃げましょう」


 ミアの震える声に三人は無言で頷くと気付かれないようにゆっくりと二人から離れていく。


 その直後だった。


 バンッ。


 とうとう限界を迎えた皐月がテーブルを叩いて勢いよく立ち上がると、仁王立ちで項垂れる浩介を指さし叫き散らす。


「あ~ぁ、もう!辛気くさいわね!何なのよ、さっきから溜息ばかりついて?」


 その表情からイライラしているのが手に取るように判り、浩介は助けを求めるべく周囲を見渡す。


 だが皆、慣れたもので既に退避していた。


「…ひっでぇ」


 浩介は批難めいた呟きを洩らしながら三人を見つめるが全員から視線を逸らされてしまう。


 愕然とするが不穏な空気に視線を戻せない。


 テーブルを挟んで仁王立ちする皐月の気配を感じながら浩介は青ざめた表情で後ずさりを始めるが時はすでに遅い。


 グイッと顔を突き出した皐月は苛立たしげな表情を浮かべながら浩介を見つめる。


「…なに、視線を逸らしてるの?」


 皐月の声に怒気が含まれている。


 蛇に睨まれた蛙状態である。


 目を合わせれば喰われる(殺される)と分かっていて視線を向ける勇気は浩介には無かった。


 助けを求めるように三人をジッと見るが視線は合わず救いの手はどこにも存在しない。


「…はぁ」


 深い溜息を吐き浩介は諦めた表情を浮かべて皐月へと視線を向けた。


 身体が微かに震えているのは仕方の無いことで、今の状況がどんな結末をもたらすのか身体が覚えているからだ。


「…で?」


 短い言葉に脅迫めいた威圧感が漂っている。


「こぇーよ……」


 心の声が思わず口から出てしまう。


「あっ?」


 眉間に皺を寄せ、間近に迫った目元で睨むように凄む皐月に浩介の瞳が視線を漂わせ泳いでしまう。


「だから怖いって……つまりな、常闇の使者…えっと、タラニスだっけ?そいつが持ってきた、こいつ」


 浩介がテーブルに置かれた神器を指差すと、釣られるように皐月の視線もそれに向けられた。


「これが何よ?」


 神器である。


 この多重世界で最も重要な宝である。


 それを皇女である皐月がこれ(・・)扱いである。


 浩介は苦笑いするしかなかった。


「いやいや、これって重要なもんだろ?」


 浩介の言葉は正論だった。


「まぁね、それは認めるわ……それぞれの世界に対しての抑制力になるからね…で?」


 それだけ理解していれば浩介が憂鬱になるのが分かりそうなものだが……彼女は皐月である。


 先を促すように浩介を見つめている。


「不安なんだよ……」


 ボソリと浩介は呟いた。


 俯きながら自分の両手を見つめている。


「自分が自分で無くなっていく様な感覚……なんだろうな、グレンデルの記憶を受け継いだときから俺って存在が変わってきてる気がするんだ」


 ポツリポツリと話し出す浩介に毒気を抜かれた皐月は呆れたような表情を浮かべてソファに腰を下ろした。


「…で、憂鬱になってた?」


 浩介が小さく頷くと皐月は小さく溜息をついて考え込むように天井をぼんやりと見つめた。


〔お主では荷が重かろう……〕


 皐月の意識に声が聞こえた。


〔ふん、今まで黙りだったのに今頃になって……でも、そうね私には荷が重いわね。私は所詮……〕


 自虐的な皐月の言葉に声は悲しげに呟いた。


〔…すまぬな、お主も妾も…代替品じゃからな〕


 その言葉に皐月は真実を知った日のことを思い出した。もう何年も前のことであったが、今でもあの時の感情は忘れることが出来なかった。


         *


 それは互いの意識が入れ替わる瞬間に起きた。


 もう一人の自分(業罪の皇女)が持つ過去の記憶を垣間見ることが出来たのだ。


 それは衝撃的であった。


 自分という存在の意味を知ったのだ。


 失われた帝の魂を探すためだけ(・・)の存在。


 誰が、何のために自分を産みだしたのか、流石にそこまでは知ることは出来なかった。


 知れなかったという方が正しいのかもしれない。


 記憶を覗かれたことに気付いた彼女が皐月に全てを知ることを拒絶したのだ。


 それは正しい判断ではあった。


 けれど、自分の存在意義がそれだけである事実を知った皐月は自ら存在に疑問を抱いた。


 何故、何故、何故………。


 自分の感情が信じられなかった。


 そんな皐月の感情を、業罪の皇女はただ悲しげに見つめ言葉をかけることはしなかった。


 なぜなら、彼女自身も同じだからだ。


 自らの力で乗り越えるしか術はない。


 皐月は絶望に押しつぶされるように意識の奥深くに沈み込む時間が増えていった。


 その分、業罪の皇女が姿を見せる時間が多くなり、必然的に中心の世界は彼女が帝の代理として幾多もの采配を取り仕切るようになった。


 その光景を皐月は意識の奥深くで見つめていた。


〔…ねぇ〕


 どれくらいぶりに語りかけたのだろうか。


 その声に力は無く独り言のようにか細いものであったが業罪の皇女は静かに意識を傾けてくれた。


〔なんじゃ…〕


 皐月が焦らぬよう喋り始めるのを待つ。


〔何であんたは絶望しないの?あんたも私と同じなんでしょ?与えられた存在意義を満たすだけに生み出された存在…〕


 皐月の問いにしばし考え込む。


 それは、自分自身に対して真摯な対応をとりたかったからだ。創造された存在とはいえ自ら考え行動することが出来ることを知って欲しかった。


〔妾は抗いたい、たとえ抗った結果が思惑通りであったとしても自ら考え、行動した事実は妾のものじゃ。それだけは妾が妾である証だと思うのじゃ〕


 一つ一つ言葉を選び皐月に自らの考えを伝える。


 皐月が意識の奥深くで彼女の言葉を噛み締めるように小さく頷いているのが分かった。


〔私の意志で行動した結果……か〕


 皐月の内で何かが晴れていく気がした。


〔私にもあんたみたいに出来るかな?〕


 不安げな声で尋ねる皐月に業罪の皇女は微笑を浮かべ彼女に語りかけた。


〔当然であろう?お主も妾なんじゃから〕


 その言葉に皐月はハッとする。


〔あはっ、アハハハ!そうね、私が出来ることは私にだって出来るって事よね……なんか、バカらしいけどそれも私って事よね〕


 楽しげな笑い声が聞こえてきた。


 業罪の皇女は優しげな微笑を浮かべる。


 どちらの笑みであったかは定かではない。


 けれど、紛れもなく彼女たちの笑みであった。


         *


 彼女との久々の会話に暫しの間、過去に想いを馳せた皐月は彼女の意識に語りかける。


〔懐かしいわね…うん、じゃあ任せるわ…それに、本当はあんたが彼奴(シグルス)を助けたかったんだろうけど恥ずかしくて出てこれなかったんだろうしね〕


 悪戯っぽい笑みを浮かべながら皐月は業罪の皇女と意識を入れ替え始める瞬間に呟いた言葉に彼女が動揺したのを見逃さなかった。


〔な、なにを言って!?〕


 何時もと違う彼女の口調に皐月は満足しながら意識の奥深くへと潜っていく。


〔じゃあ、彼のことお願いね…サツキ〕


 皐月は彼女の名を呼び浩介を託すのだった。


〔初めて妾の名を呼んだのぅ…ふふっ、任されたのじゃ。安心しておれ、悪いようにはせん〕


 微かな笑みを浮かべ顕現していく。


 そんな彼女たちのやりとりなど周囲の者には理解できるものでもなく天井を見つめる瞳が微かに変化した事に誰も気付かなかった。


 ただ、微かに浮かべた笑みに避難していた雅だけが気付きニルの服の裾を引っ張る。


「…なんか笑ってるのじゃ」


 恐ろしいものでも見るように震えている雅の頭を優しく撫でながらニルも皐月を見つめる。


「逃げましょう…」


 涙目で二人に訴えかけるミアの猫耳はペタリと倒れ、長い尻尾は股の間に隠れ微かに震えていた。


「とりあえず様子を見ましょう。判断するのはそれからでも遅くないでしょうから…それに、たぶん大丈夫の筈ですよ」


 微笑を浮かべるニルの言葉にミアと雅は彼女とは対照的に不安げな様子を浮かべている。


 今の現状で大丈夫と言えるニルの判断に二人は疑問しか浮かばなかった。


「のぅ、本当に大丈夫と思うか?」


 雅は小声で震えるニアに話しかけると彼女は虚ろな瞳で首を横に振った。


「確実に…死にます。私にはボロ雑巾のようにズタズタにされた姿しか思い浮かびません。最後のチャンスです!逃げましょう!雅様!」


 その声には切実な想いが感じられた。


 雅の心が揺らぐ。


 けれど…。


 和やかに微笑みを浮かべるニルが二人をガッチリと押さえ込み悪魔のような一言を呟いた。


「死ぬときは一緒ですよ…ですよね?」


 その笑みに二人は抗いようもなかった。


 項垂れながら二人は頷き答える。


「「はい……」」


 その言葉にニルに口角が最大限にまで吊り上がり二人は思わず身震いしながら見つめ合った。


「…のぅ?」


「諦めましょう…」


 それだけで十分だった。


 精気を失った二人は無言で項垂れるのだった。

読んでいただき有り難う御座います


(o_ _)o


感謝しかありません


ブクマ、評価していただいた皆様には最大限の感謝を(。・∀・。)ノ


悩んでる貴方には一押しを!


拙い文章と遅延の多い作者ではありますが見捨てずに最後まで読んで頂ければと思っております


個人的には漸く中盤に着たのかなと思いながら登場人物の赴くままに書いていきたいと思っております(^_^;


では、失礼いたします


(o_ _)o

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