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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第四章 多重世界は魂の連なり
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其の5 和平終結

遅くなりました


(o_ _)o


待っててくださり有り難う御座います


<(_ _)>


では、お楽しみください



「…ではご理解いただけましたかな?」


 余裕の表情を浮かべながらタラニスは周囲を見渡す。この和平交渉の場において現在、主導権は明らかに彼の手にあった。


 悔しそうに歯軋りしながらタラニスを睨みつける皐月に浩介は小さな溜息をついた。


「なぁ、一つ質問していいかな?」


 浩介がタラニスを見つめながら尋ねる。


「はい、なんでしょうか?」


 タラニスは表情を崩すことなく笑顔で浩介を見つめたが、彼から異質な何かを感じ取りほんの一瞬だけ表情を変えた。


 それは心の内を覗き込まれたかのような錯覚を覚えるもので無意識の内にタラニスは身震いする。


「あんたの言い分は分かる…けど、俺からしたらあんたの行動は回りくどく感じるんだが……あぁ、先に言っておくけど俺に嘘は通用しないから」


 言い終えると同時に浩介の瞳の色彩が変化する。


 ゾクッ。


 その瞳を見た瞬間、タラニスの背筋に寒気が走った。言葉に出来ない恐怖が彼の心を支配していく。


〔…なんだ、これは〕


 言葉が出てこない。


 彼の雰囲気が変わり室内の空気が張り詰める。


「帝の意志じゃな……」


 その空気を敏感に感じ取ったフェンリルの言葉に背後に立つリアが静かに頷く。


 想像していた以上の圧倒的な威圧感にタラニスは周囲を盗み見ると何人かは微かに震えている。


 多分に帝の使い達とそれほど面識が無い者達であることは明らかだった。


 現にフェンリル達は平然としている。


「…どうした?」


 タラニスを見つめる浩介の声にすら威圧感が込められており彼は小さく深呼吸して心を落ち着かせると背筋を伸ばし的直ぐに浩介を見つめ直した。


「やはり貴方でしたか」


 その気配に動揺が隠せないタラニスの声は微かに震えている。周囲の沈黙が二人に注意を向ける。


 これほどまでとは思っていなかった。


 少し甘く見ていたかもしれないとタラニスは思ったが既に引き下がるわけにもいかない状況である。


 浩介はそんなタラニスの動揺を見透かすように真っ直ぐに彼を見つめる。


「……っで、あんたはどうしたい?」


 簡潔な質問を浩介から投げかけられタラニスの思考は尋常ならざる処理速度で適した解を模索する。


「和平ですな……」


 緊張した面持ちで一言だけ発した。


 事実、タラニスが求めていたのは無益な血を流すことではなく建設的な会話であった。


 浩介の瞳から逸らすことなく見つめるタラニスを彼は無言のまま見つめ続ける。


 重苦しい沈黙が室内を包まれ、周囲の者達は息をするのを忘れるほど今の緊迫した状況の推移を静かに見守っている。


「ふぅ…」


 その沈黙を破るように浩介は瞳を閉じて小さな溜息をついた。それが合図であったかのように張り詰めていた空気が和らいでいくのが分かった。


「嘘はついてないみたいだな…」


 瞳の色が元に戻り、疲れたように眉間に手を添えて揉みこんでいる浩介を皐月は訝しげに見つめた。


〔…まさかね〕


 今まで何度となく帝の力を使ってきていた浩介がここまで疲れた表情を浮かべたことに言いしれぬ危機感を感じた。


 そんな皐月達の思考を余所にフェンリルが周囲を見渡しゆっくりと頷く。


 タラニスの言葉の真意にこの場に集った者達の意思を確認するためだ。


 皆同じ考えであることは直ぐに判った。


 たとえ、開戦派であろうと過去の無意味な争いは知っている。多くの民を失い、悲しみと憎しみが充満した愚かな争いを再燃したいとは誰も思わない。


「…お主の提案を受け入れるとするのじゃ」


 フェンリルの言葉にタラニスは安堵の表情を浮かべて立ち上がると片手を彼女に差し出した。


「貴女が良識ある人物で安心しました」


 自らの世界の皇子を皮肉っていることに気付いたフェンリルは苦笑いを浮かべて握手する。


「まぁ、お主が居るなら大丈夫であろう」


 タラニスの言葉に彼女も皮肉で返す。


 お互いに一人の皇子の姿が脳裏を掠め、苦笑いを浮かべたまま小さな溜息をついた。


「また、手を出してきたら今度は私が行くからねぇ~。その覚悟があるなら止めないけどぉ」


 和平交渉が無事に終えたことでリアも騎士としての責務を放棄し軽口を叩きながら笑みを浮かべる。


 周囲の者達は冷や汗を浮かべた。


 虎獣人の男に至っては額に青筋を浮かべ、リアを睨みつけるように見つめている。


 一方でタラニスはというと……。


 ズキリッ。


 リアの言葉に胸元の古傷が痛んだ。


 あの時代のリアを知っているタラニスには冗談であると分かっていても身体が恐怖するのだ。


「…それは御免被ります。もし、その様な事態が起きたとしたら私の命をかけて我が主を止めさせていただきます」


 深々と頭を下げるタラニスにリアは面白くなさそうな表情を浮かべる。


「つまんないねぇ~」


 和平交渉の場で不謹慎な言葉ではあるが、それも和平が成立したから言えるものであった。


「…ははっ」


 言葉が見つからず無言のまま苦笑いを浮かべるタラニスにフェンリルも何とも言えない顔を浮かべていた。


 なんにせよ、最悪の段階は免れた今の状況に浩介も安心した。浩介の意識には他者(帝の意識)の目線ながらあの不毛な戦の状況がありありと思い描くことが出来たからだ。


 ただ、不安も無いとは言えない。


「…神器はどうするんだ?こいつらの世界にはもうあんたらに対して抑制できる(存在)がないんだが…どう考える、常闇の使者さん」


 浩介の問いに小さく頷いたタラニスは傍らに置いていた木箱を取り出しテーブルに置いた。


 厳重に護印で封をされた木箱に視線が集まる。


 微かに感じる戸惑った空気が辺りを包み込み、静寂が息苦しさを与える。


「これは其方の世界の……」


 フェンリルの言葉を遮るようにタラニスが頷く。


「そうです…我らの世界も貴女(フェンリル)の考えに賛同したいと思い持参を致しました」


 正直なところ常闇の皇子の了承を得ているとは誰も思っておらず何人かは胡散臭げに木箱を見つめている。


「…お察しの通り私の独断の判断です。あのバカ皇……いえ、我が主にも話せば分かると考えております」


 自分の主をバカ呼ばわりしかけて言い直すタラニスに浩介は思わす笑みを浮かべる。


「どこの世界の五護衆も似たようなもんだな」


 その言葉にリアがジト目で浩介を見つめる。


「…だれぇの事、言ってんのかなぁ?」


 頬を膨らませながら浩介に問いただすリアの姿に、その場にいた誰もが心の中で呟いていた。


 〔…お前だろ〕


 口には出さずとも皆、目線を合わせ溜息をつく。


 そんな和んだ空気の中で皐月だけは眉間に皺を寄せタラニスが持ち出してきた神器を見つめていた。


「なにか、憂慮されることでも?」


 皐月の視線に気付きタラニスが声をかける。


「二つの世界で神器が失われる……その事が何を意味するのかを考えていただけよ」


 少しの間、考え込むような表情を浮かべたタラニスは独り言のようにボソリと呟いた。


「変革でしょうな…これまでの世界間の均衛が崩れ、今後は他の二世界がどう動くかによって状況は変わっていくでしょう」


 皐月が憂慮していたのはその二世界であり、その世界を統治する者達は最も行動が読めない皇族達であった。


「そうじゃのう、特に意思造りの皇子…彼奴は妾の理では押さえることが出来ぬ」


 苦々しい表情を浮かべながら呟くフェンリルにタラニスも思案下な表情で頷いた。


「意思造りの世界を納得させるのは骨が折れそうですからね……先ずは彼女の世界から交渉するべきかもしれません」


 タラニスはもう一つの世界に望みを賭けるべきではないかと思い提案してみた。


 だが、周囲の反応は芳しくない。


「あの皇女に常識が通じると思う?」


 皐月が核心を突いてくる。


 皆、同じ考えだったのか誰も答えない。


 浩介はグレ記憶を意識に呼び出し、その皇女の素行を確認すると溜息交じりに首を横に振った。


「なぁ…」


 皐月に問いかける。


「…なによ」


 不機嫌そうな返事が聞こえた。


 何を言われるか予想が付いているのだろう。


「なんで、まともな奴が居ないんだ…」


 案の定の発言に更に機嫌を悪くしながら皐月がぶっきらぼうに一言だけ呟いた。


「…知らないわよ」


 帝の血脈と呼ばれるだけのことはあるなと内心、思いながらも浩介は気付いていなかった。


 それは、彼らの血脈の本流が彼の内にあり彼自身が産み出した存在であるため彼も同じ穴の狢であるのだ。


「まぁ、とりあえず今後の方針としては彼女の世界に行くのが妥当じゃない?」


 リアが至極まっとうな意見を口にして皆が頷くことで同意する運びとなった。


 そして、フェンリルの世界と常闇の世界の和平交渉は終結し互いの世界の不可侵条約が制定された。



読んでいただき有り難う御座います


<(_ _)>


筆の遅い作者ですが見捨てずにいて頂けると


有り難いです


では、失礼いたします


(o_ _)o

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