其の3 意志造りの凶愛
久々の皇子のご登場です
文面には度々出ていましたが本人登場は
第一章、其の1以来です
(゜ロ゜;ノ)ノ
因みにちょいエロです(^_^;
では、お楽しみください
静まりかえった室内で男はゆっくりと瞳を開く。
見慣れた絢爛豪華な天井が視界を埋め尽くす。
何時もと変わらぬ光景に瞳だけを左右に動かし就寝前と変化がないことを確認する。
その一連の動作を行い小さな溜息をつくと瞳を閉じて自らの意識を解き放った。
彼の意識に映し出される景色は彼が支配する幾十にも入り組んだ世界で彼は意識内で、それらの世界を選別し明瞭な世界へと造り上げていく。
これといった違和感がないことに彼は胸を撫で下ろしながら自らの血脈の節操のなさに苦笑するのだった。
いつから今の世界を確認する癖が付いてしまったのだろうかと考えてしまったからだ。
けれど、悠久の時を生きる彼にとってそれは些細なことでしかない。
「何時もと変わらずか…」
天井を見つめながら一人呟く。
安堵しながらも若干の失望感が感じられた。
彼の意識の奥深くでは変化を求めていたのかもしれない。だが、もし変化が現実に起きたとしたら彼は深い後悔の念に苛まれてしまう事も判っていた。
それは甘美な蜜でありながらも彼自身を追い詰める諸刃の剣となってしまうからだ。
過去にどれだけの意思を、世界を、在るべき姿を否定してきたか判らない。
先程も幾つかの分岐点を整理したところだ。
自らに害を成そうとする者の意思は嫌悪感を抱くほど不愉快きわまりない感情だった。
その意思だけを彼は世界の本流から削除する。
それが彼の血脈であり理だからだ。
だが、その削除した記憶は脈々と彼の意識を駆け巡り続けている。果て無き欲求と自己満足の結果の世界…それが彼の血脈が造り上げた世界であり総てであった。
閉じていた瞳を開く。
その視界には見慣れた天井がある。
何も変わらない状況。
「お目覚めですか?」
聞き慣れた侍女の声に視線だけを動かす。
肩まで伸びた長い黒髪にどこか儚げな印象を持たせる潤んだ大きな瞳が無表情に彼を見つめていた。
これも彼が望んだ姿である。
「あぁ、いたのか…こっちへ来い」
気配すら感じなかった侍女の姿に微笑を浮かべ愛おしくすら思えてしまう。
「…はい」
男の手招きに侍女が傍らに寄り添ってくる。
無表情な侍女は次に何が起きるのか判っているのだろう、彼の身体に密着していく。
微かに漂う彼女の甘い香りを楽しみながら強引に引き寄せると彼女の唇に舌を絡ませていく。
「…うんっ、あっ」
微かな吐息を漏らしながらも彼女は抵抗なく彼を受け入れて身体をさらに密着させてくる。
恋い焦がれ捨てられた彼女の姿を摸して創造した侍女を自分の元へとさらに引き寄せ自らの欲望のままに貪っていく。
暖かな温もりを感じながら侍女の身体を弄び徐々に上気していく肌に触れ、彼はさらに感情の赴くままに侍女を狂わしていく。
微かに彼女の身体が震える。
その震えが恐怖ではなく、快楽によるものである事は彼女を創造した彼には理解できていた。
体温が上がり頬を紅潮させる彼女は美しく彼の意識は乱れた服から垣間見える柔肌に向けられる。
けれど……彼女の姿に、吐息に、その柔肌に触れても何も満足しないことに彼は気付いた。
空虚な虚しさが心を支配する。
その理由も分かっていた。
彼女ではないのだ。
感情が冷めていくのが判った。
「…もうよい、下がれ」
頬が上気し潤んだ瞳で彼を見つめていた彼女は「…はぃ」と微かな吐息とも溜息とも取れる返事をして彼から離れていく。
身体に残った彼女の残り香と消えていく温もりが心の虚しさを一層、際立たせていく。
無意味だと知りながら彼女を弄んだ自分自身に自責の念が微かに起こり胸を刺す。
そんな彼の心情を察してか彼女は視線を逸らし扉の前へと下がっていく。
「…それでは失礼いたします」
乱れた着衣を但しながら一礼し侍女が部屋を出て行くと室内にいつもの静寂が舞い戻った。
男は天井を見つめ直す。
その瞳には彼女の姿が映し出されていた。
摸して創造した侍女ではなく彼女の姿、鎖につないだ男と共に彼の世界を旅していたその姿を見つけたときには心躍ったことは言うまでも無い。
だが、彼女の意識にも彼が求める彼女が存在して居なかった事には動揺を隠すことができなかった。
理由は分からない。
けれど、予測することは出来る。
中心の世界で起きた帝の死、それが原因であると確信はしていた。
だが、彼には知ることが出来なかった。
帝の死の真相を知る者は決して多くない。
彼は真実を知らず何故、彼女が存在しないのか理解できずにいた。
それが彼の凶愛を生み出した。
我が身を焦がす憎悪にも近い想いが今の彼の世界を造り上げるきっかけとなったのだ。
全ては彼女、ノーナのためだけに……。
「…なよ竹の姫さん」
彼だけが知る彼女の名をボソリと呟き、男は想いを馳せるように瞳を閉じた。
意識が自らの世界を放浪を始める。
彼の意識は彼自身の姿を創造し本流の世界に顕現し周囲を気の抜けた表情で歩き始める。
「…さてさて、世界はどう変わっていくのやら」
その姿は開いているのか判らない細い目元に無精ひげ、綺麗に整えられた茶髪が飄々とした印象を与えている。なまじ皇族には見えない。
彼は澄みきった青空を見つめながら、自らの狂気と共にこの歪な世界に想いを馳せる。
男の名はサイアス・シーサー、浩介が初めて出逢った多重世界の皇子……メイソン・リーと名乗った意思造りの皇子その人であった。
読んでいただき有り難うございます
(o_ _)o
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(。・∀・。)ノ
筆の遅い作者ですが見捨てずにいて頂けると幸いであります
では失礼いたします
(o_ _)o




