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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第四章 多重世界は魂の連なり
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其の1 悠久の出逢い

人物紹介……人物多すぎました(^_^;)


いずれ、追加で掲載することにしました


では、お楽しみください


 皐月から借り受けた鎖を握りしめながらエレボス・レアは他世界へと繋がる異空間を漂っていた。


 自らの力ではない他者の力を使っての空間転移はかなり不安を覚えるものでエレボスの心中は穏やかではない。


 少し間違えれば、この空間に取り残されてしまう可能性があるためだ。


 エレボスは命綱とも言える鎖を握りしめる。


 この鎖は皐月が旅をした世界を記憶しており、同じ場所に狂いなく【扉】を開くことが出来る。


 彼が皐月から借り受けた鎖の記憶は浩介の部屋へと続く【扉】の記憶であり、エレボスは鎖が導くまま漂っていれば良かった。


 だが、不安もある。


 今まで経験したことのない幾多もの記憶が波のように彼の意識に流れ込み時折、意識を失いそうになるのを奥歯を噛み締め必死に耐える。


 そんな時、鎖の力が強くなるのを感じた。


「…もう、そろそろですか」


 出口が近いことを察したエレボスは一瞬、安堵の表情を浮かべるが直ぐに自分を戒める。


 一瞬の油断が命取りになる可能性があるからだ。


 別世界に出た瞬間、襲われる可能性もある。


 それ以上に自分の住む世界と認識が全く異なる場合もあるのだ。油断するわけにはいかない。


 失敗も許されない。


 主である業罪の皇女からの命であり、それ以上にエレボスの意識は帝にある。


 そう、帝から託された勅命だ。


 思い出すだけで心が奮い立つ。


 キッと正面を見据えた。


 空間に裂け目が生じているのが判った。


 なにより、鎖の力がその裂け目へとエレボスを導いている感覚がある。


「…鬼が出るか蛇が出るか」


 ゴクリと唾を飲み込み覚悟を決める。


 そして、裂け目へと飛び込むのだった。


           *


 上山美弦(かみやまみつる)は浩介の部屋でベッドに腰掛け頬杖を付きながら深い溜息を吐いた。


「…全く」


 呟く声には覇気が無い。


 テーブルから溢れた缶珈琲の香りが鼻につく。


 床に溢れた珈琲がまだ乾ききっておらず浩介が皐月に拉致られてさほどの時間は過ぎていない事を示している。


「…はぁ」


 美弦は再度、深い溜息をつく。


 何時か来ることは判っていたことだが正直に言って憂鬱としか言い様がなかった。


 浩介を縛っていたあの鎖(・・・)に見覚えがある。思い出しただけで身体中に痛みを感じるほどだ。


「とうとう、現れたのね…」


 過去の記憶を思い出しながら、美弦は眉間に皺を寄せ自らの記憶を呼び覚ます。


 意識に全ての記憶がまるで当たり前のように思い出され死の間際の苦しみに嗚咽が漏れる。


 苦しみよりも憎しみ、痛みよりも悔しさ、それら全てを思い出した美弦は浩介の姉ではなくミユル・マクシリアとしての人格が覚醒したのだ。


 美弦でありミユルでもある存在、アトロポスにより転生していた魂が一つになった瞬間であった。


「…猊下は戻られた。私も……」


 記憶を取り戻したミユルは落胆する。


 手段がないのだ。


 今の身体はこの世界の理で創られている。


 そのため彼女本来の力を使うことが出来ない。


 自ら望み帝と共に転生することを選んだ彼女は(帝の器)を守ることが出来なかった。


 後ろを振り返る。


 微かに感じる時空の裂け目の不安定さにこの場所に彼女がいたことを証明していた。


 あの世界はどうなっているのだろうかと考える。


 どれだけの時が流れたのか見当も付かない。


 ミユルを転生したアトロポスともすでに連絡は取れない。彼女の身体の再生はすでに終わっているはずである。


 今のミユルの魂は美弦の意識と混じり合っている不思議な感覚であるが、その存在自体はミユルであり浩介の姉である美弦自身なのだ。


 二人分の記憶が意識に混在している。


 ただ、ミユルの意識を思い出したのは皐月に出逢ってからだ。あの瞬間、意識の奥深くで眠っていたミユルの意識が顕現を始めたのだ。


 今となっては何故、思い出せなかったのか不思議なぐらい違和感がなかった。


 アトロポスは二人(帝とミユル)の願いをしっかりと叶えてくれていたのだ。けれど……。


「…元の身体に戻れるのかしら」


 若干の不安を感じた。


 ミユルがこの世界に転生する際のアトロポスの言葉が何かを物語るかのように脳裏を掠めた。


 魂だけの存在でアトロポスと転生先の話をしていたとき、彼女は自身の身体に触れながら呟いた。


「この身体、具合が良いわ…私の意識と違和感なく溶け込める……欲しいな」


 無表情でそんなことを呟いていた。


 冗談であったと信じたい。


 だが、元の世界に変える手段もアトロポスに接触する手段も今のミユルにはない。


「まさかね…」


 脳裏に裏切りの言葉が浮かぶ。


 不安が押し寄せてくる。


 どんな方法を使ってでも愛する帝の元へと辿り着きたい……もう、二度と失いたくない。


 悲痛な表情で立ち上がり周囲を見渡す。


 珈琲の香りに混じって彼の気配を感じられる。


 何故、今まで気付くことが出来なかったのだろう。こんなに近くに愛するべき魂が居たのに…。


 そっと胸元で両手を組み瞳を閉じる。


 全てを包み込むような暖かな感覚がミユルを優しく包み込んでいく。


「…猊下」


 その感覚が帝であることは直ぐに判った。


 今すぐ会いたい。


 彼の手に抱きしめられたい。


 ミユルの心が帝へと向けられる。


 だが…。


 そこには彼は居ない。


 瞳を開き周囲を見渡す。


 静まりかえった室内がある。


 彼がいた痕跡を残し主である存在はすでにあの世界へと戻っていった。


 立ち尽くし、祈るしかない今の彼女に為す術など無い。けれど、何かを感じていた。


 皐月がこの世界にきたと言うことは時が動き出した証拠でもあるのだ。


 そして、その瞬間は意外なほど早くやってきた。


 皐月が去った後の空間の裂け目に新たな力が沸き始めているのにミユルは気が付き警戒する。


「…誰か来る」


 何者かが空間転移してくるのを肌で感じる。


 たとえ能力を失ったとしても彼女が今まで経験してきた感覚は身体に染みついているのだ。


 徐々に時空の裂け目が安定し広がっていく。


 人が通れるほどの裂け目が安定すると、一人の男が険しい表情を浮かべ飛び出してきた。


「エレボス…なの?」


 その男に見覚えがあった。


 中心の世界で共に戦った男である。


 けれど……。


 彼女の記憶にある男の姿とは違い、その顔には幾星霜の年月が詰み重なれていた。


 不安になった。


 あちらの世界ではどれだけの時間が過ぎ去っているのか、そう考えてミユルの心がざわつく。


 心の動揺を隠し平常を装いながらミユルはエレボスを見つめる。彼は転移した先の女性を油断なく見つめ返し、自分にとっての判別を行っている。


 互いに見つめ合いながらも隙を見せない。


「…ふぅ」


 しばしの無言の後、ミユルが溜息をついた。


 その溜息に張り詰めていた空気が緩む。


「久しぶりね…エレボス」


 彼女の声にエレボスの頬がピクリと動く。


「貴殿は…まさか、いや、そんなはずはない」


 エレボスは脳裏に浮かんだ推測を首を振り否定する。けれど、彼女から感じる気配はよく知る人物のものであることも否めなかった。


 悩むエレボスにミユルは微笑みを浮かべる。


「まぁ、私の身体は常にあの世界に在るものね。」


 そう、彼女の身体は確かに中心の世界に存在する。けれど、それを司る魂は別物に過ぎない。


 アトロポス、あの場で総てを治めた時の女神がミユルの身体を修復していたのだ。


「では、貴殿はやはり……」


 旧知の仲であるエレボスも彼女の存在に多少の違和感を覚えていた。


 それはほんの僅かな違いであったが共に戦場に立った者には十分すぎるものであった。


「ええ、私はミユル・マクシリアで間違いないわ。忠義の騎士エレボス・レア」


 久しく忘れていた通り名で呼ばれたエレボスは微かに笑みを浮かべた。


「その名で呼ばれるのは実に久方ぶりですな……ふむ、貴殿がミユル殿で間違いないようですね」


 過去の争いで何よりも忠義を重んじたエレボスはいつしか周囲の者からその名で呼ばれていた。


 ただ、幾数年の月日により剣を振るうことを辞めた彼は業罪の皇女の陰に徹することを選び、表舞台にその姿を見せる機会が失われて久しい。


 そのため、ミユルの言葉に旧友に出逢えたような懐かしさを感じたのだ。


 姿は違えど気配を感じれば確かに彼女はミユルであり、今まで気付くことが出来なかったのが不思議なくらいだった。


「それで…ミユル殿はなぜ?」


 それは当然の疑問であった。


 彼の問いにミユルは少し困ったような表情を浮かべ答えるのを戸惑っているように見えた。


「説明が難しい……というより出来ないといった方が良いかしら……あの出来事を説明するのに制約があるみたい」


 何度か言葉にしようとするが口に出すことが出来ない。どうやら、アトロポスにより魂に制約を設けたようだった。


 もし、実際にアトロポスが魂にそれらの制約を刻んだとするなら彼女の懸念事項が一層、現実のものとなる。


「…まさかね」


 アトロポスの言葉を思い出し身震いする。


「それは帝様に関係することですかな?」


 エレボスの問いにコクリと頷く。


「ええ、そうね。人智を越えた存在も関与しているのは確かよ……それよりエレボスに聞きたいことがあるのだけれど」


 言葉を選びながらアトロポスという存在を表現することが出来たミユルはエレボスに問いかける。


「何でございましょう?」 


 ミユルは少し迷ったが聞くことにした。


「今の世界の私はどんな感じだった?」


 アトロポスの意識に自分(ミユル)の身体、彼女の行動に興味があったのだ。


 ミユルの問いに顎に手を添えて天井を見つめて、エレボスは少しの間だけ思案する。


「そうですなぁ…破天荒、その言葉が似合う行動をとっていたように感じます…」


 何故か申し訳なさそうにミユルを見つめながら答えるエレボスに彼女はガックリと肩を落とし項垂れた。


「…そうですか、破天荒……」


 力なく座り込ながらミユルは呟く。


 嫌な予感はしていた。


 ただ、それが現実となっただけにも関わらずミユルは多重世界での自分の評価に落ち込んでしまう。


「ま、まぁ…過去の貴女を知る者からは多少は驚かられますが概ね理解はされていると思いますよ」


 何の理解だろうかと考えてしまう。


 エレボスの口ぶりを鑑みるにアトロポスは自分(ミユル)の身体を使ってやりたい放題だと彼女は確信した。


「…そうですか」


 それ以上の言葉が出てこない。


 エレボスがこの世界に現れたと言うことは多重世界に帰る手段があると言うことに他ならない。


 けれど、エレボスの言葉にミユルはあの世界に戻ることが正解なのか判らなくなってきていた。


 心の中ではもちろん帰りたい想いが強い。


 だが、エレボスが答えた破天荒と呼ばれるアトロポスの奇行がどうしても気になってしまう。


 自分の身体を取り戻すことが出来るのだろうか?


 それが一番の難題である気がしたのだった。


読んでいただき有り難うございます


(o_ _)o


見捨てずに待っていてくださった方々には


感謝に堪えません。


本当に有り難うございます


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