其の37 自由の価値
遅くなりました
(o_ _)o
スマホの調子が悪くて……(T_T)
なかなか投稿できずにいました
少し短いですが、お楽しみいただければ幸いです
扉の先の光景に皐月は目を疑った。
状況を把握しようと目線をニルへと向けるが彼女の姿が隣の部屋に消えていくのを見るだけだった。
二人の姿に怒りが湧いてくる。
それに呼応するように鎖が顕現される。
ここまでの流れは一秒にも満たない。
「…あらぁ~、仲の良いことで」
皐月の背後からリアが顔を覗かせ、ニヤニヤ笑いながら呟いたのが発端となった。
殺気に充ちた気配が部屋を侵食すると同時に鎖の先端が床を跳ね上げて二人に襲いかかっていく。
この行為、総てに要した時間は数秒である。
二人に抗う術などあるはずが無い。
ジャラジャラジャラ、ゴンッ。
声を上げることすら出来ずに二人は気絶した。
誰が悪いわけではない。
総てはタイミングなのだ。
そのタイミングを担っていたのは本来、ミアである。けれど、彼女は病んでいた。
自由を欲したのだ。
そして、チャンスだったのだ。
「今なら浩介様を看病できますよ」
ただ、囁くだけで良い。
「…はっ!?」
ニルの脳裏に雷が落ちる。
「…わたしは?」
ニルは茫然とした瞳でミアを見つめる。
「…貴方なら出来ます」
さらに囁く。
「行ってきます…」
あれだけ執着したミアを手放し部屋を飛び出していく。その姿を見送りながら久々に自分の足で立ったミアは深いため息をついた。
「…ふぅ、自由だ」
身体が震えた。
自由とはこれ程すばらしいモノだったのかと改めて思い出され噛みしめるように両手を握る。
「人化の術…発動」
呟くように口ずさむとミアの体が淡い紫光に包まれ、常闇の世界以来の人の姿に変化した。
ゆっくりと体を確かめる。
「…完璧です」
真っ黒なお下げ髪に真っ白な肌、大きな瞳は相変わらずではあるが久しぶりの人化の術は申し分ないものであった。
そう、本来の姿はこれなのだ。
自分に言い聞かせるように何度も頷く。
「あっれぇ~、元に戻ったのぉ?」
その声にビクッと反応する。
恐る恐る振り返り、声の主がニルでないことを確認して安堵のため息を漏らす。
「リアさまですか…脅かさないでください。心臓が止まるかと思いましたよ」
胸を撫で下ろすミアを楽しそうにリアは見つめるが、彼女は不思議なことにミアだけには醜態を晒していなかった。
それは何故か……。
「獣人は一人で十分だし可愛いニルに譲ってあげるのが優しさだからねぇ……」
リアの言葉にミアの背筋に寒気が走った。この人も味方ではないと直感が告げていたからだ。
「…で、どうなりました?」
別室が静かになっている事に気づき状況が知りたかったのだ。皐月が浩介を介抱する訳がなく、彼女と帰ってきたリアもこの場所にいる。
必然的に浩介の世話はニルがすることになり、計画通りにいけばミアは自由の身となる。
「う~ん、ニルっちがこうすけの面倒を看てるみたいだけど……どうなのかねぇ~」
腕を組みながら考え込むリアにミアの心がザワザワと嫌な予感に包まれて落ち着かない。
「…どうとは?」
思わず尋ねる。
「皐月が嫉妬しないかなぁと…思ってねぇ~」
何かがミアの脳裏を直撃した。
「…はっ!?」
その考えを欠如していたのだ。
あの鎖娘の心情など微塵も考えていなかった。
雅さえ気をつけていれば何とかなる…そんな安易な考えしかなかったのである。
失態だった。
青ざめるミアにリアは笑う。
「面白そうだからいいんじゃない?」
愕然とした。
その顔が生き生きとしていたからだ。だが、ミアも心の片隅では同じような感覚を覚えていた。
そう、ニルの執拗な愛情により自由への葛藤と同時に人の不幸でストレスを解消したい、そんな不安定な状態だったのだ。
「どうなるのでしょう?」
ミアの問いにリアは「う~ん」と頭を悩ませてはいたが、直ぐに無駄だと気づきニヤリと笑う。
「観に行かない?」
それは悪魔の誘いだった。
漸く得ることができた自由を捨て去るかもしれない誘いにミアはしばらく悩んだ。
「…行きましょう」
誘惑が勝った。
口元には微かに笑みが浮かんでいる。
自由より楽しみを選んだのだ。
それが後に後悔を持たらすとも知らずにミアとリアは二人して修羅場になるかもしれない隣室へと足を踏み入れるのだった。
読んでいただきありがとうございます
ブクマ、評価ありがとうございます
(*´ω`*)
しばらくはいつもの日々と常闇とフェンリルの世界の和解話となります
では、今後ともによろしくお願いいたします
(o_ _)o




