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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第三章 汝の魂に安らぎを
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其の31 嫉妬と狂喜

とうとう、あの人が登場します


(;^_^A


ロイの未来は如何に?


そして、やらかした雅…


皐月の逆鱗が浩介を狙う


では、お楽しみ下さい


 皐月の冷たい視線を感じながら顔を痣だらけにした浩介は徐に指輪に手を添えた。


「…セレス、とりあえず指輪に戻ってくれ」


 けれど、その声に気付いていないのかセレスは床の一点を見つめたまま虚ろな瞳で未だにブツブツと呟いている。


「はぁ、仕方ない…強制送還」


 ため息をつきながら呟いた浩介の言葉に指輪は淡い光を放ちセレスの身体が吸い込まれていく。


〔わたくしは……皇女…わたくしは……精霊達の長……なのに、あんな…醜態、しゅう……あぁ、やってしまいましたわ……あぁ、どうしましょ…〕


 意識に響き渡るセレスの声に浩介は少し後悔した。彼女の後悔の呟きを止めないのだ。


 鬱陶しいことこの上ない。


 微かに眉間に皺を寄せながら苦笑する。


「…さてと、お前らも戻るか?」


 隅の方でガクブルに震える彼女達(四大精霊)は皐月をチラリと見てコクコクと大きく頷いている。


「…だよね、じゃあ送還」


 彼女らも顕現を解いて指輪へと戻す。


〔怖かったよぉ~〕


 顕現を解かれサラの安堵した声が聞こえた。


〔…そうですわね…あんな人外な行為……皇女と呼ばれる方は……どうして…はっ!?〕


 「あんな人ばかりいるのかしら…」と言おうとしたディーネは精霊界の皇女(直属の上司)であるセレスも顕現を解かれていることを思い出しすぐに口を噤む。


〔…ノーミ…もう…恐いの…イヤ、です〕


 トラウマになりそうな光景を二度も目の当たりにしたノーミは隅の方で踞っている。


〔……バカばかりいる〕


 シルフィはノーミに寄り添い、優しく彼女の頭を撫でながらボソリと呟いていた。


 そんな精霊達の声を聞きながら浩介は顕現で失われた力が回復していくのを感じ取るように何度も両手を握りしめる。


 只、それに不信感を抱いたのは皐月だった。


「…あの娘達(四大精霊)を指輪に戻してどうすんのよ?今から【扉】を開くんじゃなかったの?」


「あぁ、大丈夫…もう記憶(・・)してるから」


 そう言って自分の瞳を指差す。


「ほんと、便利な力ね…」


 浩介の仕草に皐月は呆れた表情を浮かべる。


 最初の【扉】を開く際にグレ記憶の力を使い、彼女達の力の流れや術式を浩介は記憶していたのだ。


「全くだ…」


 苦笑するしかない。


 その事に気付いたのも先程だからだ。


 自分の意志とは無関係に新しい知識が蓄積されていく状態に戸惑いを隠せない。


 その一番の理由はロイの存在だ。


 ロイに出逢ったとき、浩介の意識に潜むグレンデルの記憶がざわついたのを感じた。


 こうして、グレ記憶を顕現すると意識に記憶の波が押し寄せてくる……そう、あの瞬間の記憶が。


 チラリと皐月を見る。


 ロイと出逢っても別段、変化は感じられない。


 それ以前に皐月の態度からは、まるで初めて出逢ったかのような印象さえ感じることに浩介は訝しげな表情を浮かべる。


「…業罪の皇女に封じられてるか」


 ボソリと呟いた浩介は皐月を見つめ、全く姿を見せない彼女の存在に焦点を向ける。けれど、彼の瞳(グレンデルの瞳)ですら霞がかって視る事ができなかった。


 ちょうど、自分自身の内側に潜む何者(護印されたモノ)かを視ようとしたときと同じ状態であった。


「なに?気持ち悪い目で見ないで…変態」


 眉間に皺を寄せ怪訝そうな表情を浮かべる。


 話すべきかと逡巡するが、まだ時期ではないのだろうと気を失っているロイを見て思った。


 彼もあの場にいた。


 それも最も重要な立場で……。


 とりあえず、彼が目覚めてから二人きりで話し合う機会を設けて決めるのが最良だと判断した。


「お主ら、【扉】を開くなら早くせぬと足音は直ぐ側まで来ておるぞ?まぁ、この面子で負けることは在りはせぬとは思うが無駄な殺生をせずに済むならやらぬ方が良かろうて」


 雅の瞳が珍しく憂いを帯びた眼差しで彼等を見つめ、ニルに抱きかかえられたミアも大きく頷く。


「…だな、悪いけどこのおっさんを鎖で縛っておいてくれないか?多分……しゃしゃり出てくるから」


 浩介の言葉に全員が残念な顔をする。


 脳裏にあの人物が浮かび上がってるのだ。


「……でしょうね」


 額に手を当て頬をヒクヒクさせながら皐月は、通常の鎖を顕現させてロイを簀巻きにする。


「…準備はいいわよ、早く帰りましょう」


 皐月の声に浩介は軽く頷くと両目に意識を集中させる。室内の情報が流れ込んでくるのを感じながら浩介は意識を常闇の術式へと向ける。


 ジンワリとだが術式の理が解れていくのが分かり、浩介はそれを更に押し拡げていく。


「…これ位で大丈夫だろ。皆、準備はいいか?」


 それぞれの顔を見渡す。


 皆、小さく頷き浩介に応えた。


「じゃあ、(四大精霊)の力を少し借りるよ……汝と我の契約により【扉】を解放せん」


 それぞれの属性の力が流れ込んでくるのを感じながら無意識にそれらを制御し浩介は術式を唱えた。


「…ぐぅっ、意外とキツいな」


 身体から一気に力が失われていく。


 本来ならばセレスが緩衝材になり力を分散させながら使う代物なのだが……なにせ、今のセレスは役に立たない。


 未だに「…わたくしはぁ」、「なんて醜態を晒して……」と呟いているため浩介一人で制御するしかなかった。


 皐月の力を借りても良かったのだが正直なところ、グレ記憶と皐月の血脈が混ざり合うと何が起きるのか予想が付かない。


 そんな危険は犯したくなかった。


 だからこそ一人で制御しているのだが流石にキツい状況であるのも事実であった。


「…仕方ないのぅ。妾も力を貸すとするのじゃ」


 浩介の表情を見て雅が彼の背中に抱きつき、ベッタリと密着すると彼の胸元で両手を優しく握った。


「…なっ!?」


 背中の柔らかい感触と雅の吐息に意識が途切れそうになるが、身体に流れ込んで来る膨大な魔力に気付き、すぐに意識を集中させる。


「…うわぁ~」


 その妖絶な雅の姿にミアは声を上げる。


「羨ましぃ…」


 ボソリとニルが呟いたのが聞こえたがミアは聞こえてない振りをする。なぜなら……。


 その光景にプルプルと肩を震わせる皐月の姿が見えたからだ。その時、ミアは悟った。


〔…血の雨が降るかもしれない〕


 そんな不安を余所に【扉】が具現化されていく。


 空間が捩れ常闇の術式に干渉し青白い光を放っているが、それも徐々に薄れていき歪んだ空間が形成された。


「何とか安定することが出来たな…雅、ありがとう。お陰で【扉】を開くことが出来て、助かった……よ!?」


 抱きついたままの雅に振り返ってお礼を言おうとしたが、ただならぬ殺気に浩介の身体が硬直する。


 殺気を放つ皐月と目が合った。


「…仲が宜しいようで……っで、【扉】は開いたみたいだから、そこの売女()はそろそろ離れても良いんじゃないかしら?」


 皐月は引き攣った笑顔を二人に向ける。


 浩介は直ぐに察して雅を離そうとした。


 けれど、雅の腕が振り解けない。


 不思議に思い、振り返ると……。


 涙目で震えている雅がいた。


「腰が抜けたのじゃ……」


 震える声が胸を打つ。


〔判る…判るぞ、雅…だが、俺はここで引き下がると地獄が待っている…それは判るな、雅〕


 意識に直接、語りかける。


〔…申し訳ないのじゃ主殿〕


 空気を察することが出来るだけ上出来だった。


 今の状態、完全なバカップルの体である。


 浩介の思考が尋常でない程、解決策を見出すために動いてはいる。けれど解決策は見つからない。


 フル回転しているにも関わらずにもだ。


 時間にして数秒に満たない。


 けれど、浩介は呟くように皐月に告げた。


「…言い訳は後で言おう」


 その結果、最悪のシナリオになることが判る言葉を選んだ浩介は強者(もさ)と呼んでも過言でないだろう。


 ミアとニルが視線を逸らす。


 判っていることではあるが今は転移することが最優先である。それは皐月も理解していた。


「判ったわ、とっと行くわよ……アンタには後でじっくりと聞かせてもらうからね…行くわよ」


 歪んだ空間へと皐月が簀巻きにしたロイと共に飛び込んでいく。その光景に浩介は【扉】を閉じるか真剣に考えてしまった。


「…浩介様、諦めましょう」


 切ない一言をニルに掛けられてしまった。


「ゴメンなのじゃ…」


 雅が抱きついたまま謝罪する。


 仕方がない。


 浩介ですらあの殺気に硬直してしまったのだ。


 たとえ、幾数年の時を生きた精霊()であろうとも、あの殺気に勝るはずがあるわけない。


「気にするな…慣れてる」


 浩介の言葉に何故かニルと雅は涙ぐむのだった。


「…では、お先にご武運を」


 ニルがミアと共に【扉】へと侵入する。


 残された雅と浩介、雅が背後から浩介に抱きついている光景だけが残されている。


「…行くしかないよな?」


 行きたくない、出来れば閉じたい。


 そんな欲求が脳裏を掠める。


「主殿…行かねばあやつは地獄の底まで追いかけてくるのじゃ…逃げる術がないことは……」


 口を噤む雅。


「…あぁ、判ってる」


 浩介は歪んだ空間を見つめる。


 雅を抱き寄せた状態では間の抜けた光景に見える。けれど、当の本人達は真剣であった。


 生きるか死ぬか…。


 究極の選択なのである。


 足並みの揃った足音が間近に迫る。


 一刻の猶予もない状況だった。


「…ゴクリッ」


 浩介は唾を飲み込む。


 覚悟を決める時だった。


「行くしかないのじゃ…妾も覚悟は出来ておる」


 一筋の涙が雅の頬を伝う。


 その姿に浩介も覚悟を決めた。


「…行くぞ、雅ぃ~!」


「あい、判ったのじゃあ!」


 二人は気合いを入れ【扉】へと決死の覚悟で飛び込むのだった。


           *


 部屋の主は突如、出現した歪んだ空間に不敵な笑みを浮かべていた。


 ここはフェンリルから滞在用に宛がわれた部屋であり、数刻前までは彼等(浩介達)が談笑していたが今は一人しか居ない。


 その一人とは……エルズである。


 彼等を強制的に常闇の世界に送った彼女は室内に人避けの結界を施し、その後はソファにゆったりと座りながら彼等の帰りを待っていた。


 そして今まさに、エルズの施した結界に干渉しながら空間が歪み捩れ始めている。


「…私の結界に干渉できるなんて」


 正直な話、驚きを隠しきれない。


 自然と口角が上がる。


 彼等が戻ってくるのだ。


 楽しみで仕方ない。


 徐に胸元から鞭を引き出すと「ビシッ!」乾いた音を立てながら床を叩く。


「あぁ…早く逢いたいわ…久し振りにあの声(鳴き声)を聞けると思うと身体中が疼いてくるわ……早く、早く戻ってきて。あ、な、た」


 ゾクゾクと震える身体を抱きしめながら恍惚とした表情で空間を見つめる瞳は狂喜に満ちていた。


 獲物を待つ獣のように悩ましげに唇を舐める。


 その姿は………痴女としか表現できない。


 幸いなことにロイは気を失っている。


 もし、意識があったのなら逃げ出そうとする彼をエルズが嬉々として追いかけ回す恐怖の時間が始まっただろう。


 只、ロイにとっては早いか、遅いかの違いに過ぎない。結局、エルズによって嬲られるのだから完全に詰んでいる状態だった。


 どうやって楽しもうかと思案していると歪みに微かな変化が見られエルズは意識をそちらに向ける。


 見知った気配を感じた。


 そして、同時に……。


 ヒュー-ー。


 何かの風切り音が聞こえた。


 その音にエルズの口元が緩む。


 ヒュー-、段々と近付いてくる。


 それが何なのかは予想が出来ていた。


「執念深いわね…ふふっ」


 そう呟いた瞬間、空間から何かが飛び出した。


 ジャラジャラと音を立てながら勢いよくエルズの頬を掠め、そのまま背後の壁に突き刺さる。


 微かに視線を動かし空間から壁まで伸びたモノを見つめ、予想通りのモノであることにエルズは目元を細めた。


「…ちっ!外したか」


 眉間に皺を寄せながら心底悔しそうな表情を浮かべながら現れ出た皐月が鎖を引き戻す。


「持って帰って来たわよ…」


 皐月はロイを縛り付けた鎖を思い切り引っ張り、エルズへと向けて放り投げる。


 天井近くまで持ち上げられたロイをそのまま鎖の束縛から解き放ちエルズの間近に落下させる。


 ドォーン。


 ロイの身体が床に激しく叩きつけられる。


「…ぐっはぁ!?な、何だ?」


 その衝撃に意識を取り戻したロイは、身体中に痛みを感じながら何が起きたのか理解しようと周囲を見渡す。


「うん?…ここは?どこ……だ?」


 周囲を見渡すロイの視線が見てはならない人物を視認した。そして、気付かなかった振りをしながらロイは痛む身体でゆっくりと後退りを始める。


 バシッ!


 目の前の床が砕け散った。


〔…終わったな〕


 諦めたロイは視線を彼女へと向ける。


 視線の先には鞭を片手に微笑む(エルズ)の姿があった。背筋に寒気が走り身体中の痛みを感じなくなった。


 恐怖は時に痛みをも凌駕させるのだ。


 ロイはエルズに引き攣った笑顔を向ける。


「ひ、久し振りだな……エルズ」


 上手く笑えていない旦那(ロイ)にエルズは口角を最大限までつり上げ、鞭を片手に彼を見下ろす。


「…あら?お帰りなさい、あ・な・た」


 不敵な笑みを浮かべながら久しぶりに旦那と会話をするエルズの姿に皐月は何故だか寒気を憶えるのだった。

読んでいただきありがとう御座います


ブクマ、評価ありがとう御座います


(o_ _)o


今後共に宜しくお願い致します


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