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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第三章 汝の魂に安らぎを
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其の30 セレスの醜態とミアの苦悩

すいません(o_ _)o


あの人…あの御方を出す前に


精霊の皇女がはっちゃけました


(^-^;)


では、お楽しみ下さい



 項垂れるロイを尻目に浩介は周囲を見渡す。


「…うん、イケそうだな」


 浩介の瞳に見える世界が確信をもたらす。


 彼の瞳には淡い光を放ちながら縦横無尽に張り巡らされていた常闇の術式が映し出されていた。


 だが、その術式も効力が弱まっていたのか淡い光が今にも消えそうなほど弱体化しており所々、綻びが垣間見える。


 セレスも気付いているのか浩介の問いにつまらなそうに呟きながら綻びを見つめていた。


「…コレでしたら問題ないですわね」


 セレスは横を向いたまま答える。


 まだ機嫌は直っていない。


 浩介と意識を共有しているセレスには彼のやろうとしていることは手に取るように分かっていた。


 そう、この場所で【扉】を開くのだ。


 もしも、常闇の術式がまだ生きていたのならば、この方法を取ることは出来なかった。


 けれど、二人は意識を共有しているためセレスの判断で早い段階から解除を行っていたのだ。


 背後からは足並みのそろった音が聞こえてくる。


 焦っては居ないが面倒なことには変わりはない。


 浩介は争いが嫌いだった。


 好んでまで争う必要性はない。脳裏に浮かぶのはフェンリルが見せたあの光景……思い出すだけで吐き気を催してくる。


 あれは幻影であったが現実にするつもりはない。


 ならば取るべき手段は一つ、簡単なことだ。


 逃げるに限る。


「さてと、そろそろ動き出しましょうかね。おぉ~い、とりあえず皆、集まってくれるか」


 四大精霊達を浩介は呼び戻す。


〔主様、何で御座いましょう?〕


〔うんっ?どうしたの?〕


〔…なんで……すか?〕


〔………〕


 浩介の周囲に四大精霊達が集まってくる。


「今から【扉】を開くから力を貸してもらえる?」


 コクリと彼女達は頷く。


「じゃあ、あと問題は…」


 壁にめり込んだままのロイへと視線を向ける。


 助け出さなければ転移することもままならないのだが……面倒だなと思わず考えてしまった。


「…なあ、セレス?」


 未だ不機嫌そうなセレスに声をかける。 


「何ですか?主様……」


 まだ視線を合わせてくれない。


 〔少しストレス発散させてやるか…〕


 このままの関係も問題だなと思っていた浩介は言葉に出さず意識内でセレスにある頼みごとをした。


「主様、よろしいのですか!?」


 浩介を見ようともしなかったセレスが、驚きの表情を浮かべ確認するかのように見つめてくる。


 苦笑いしながら頷くとセレスの口角が最大限に引き上がり瞳をキラキラさせながら腕まくりをする。


 どうやら効果は覿面のようだった。


 その頼みごととは…。


『セレスの好きな方法でアイツを壁から出してくれないか?方法は一切問わない(・・・・)から…』


 ロイにしてみれば災難である。


 けれど浩介は自業自得と思うことにした。


〔殺しちゃダメだからな〕


 一応、念のために釘を刺しておく。


〔お任せ下さい!生かさず殺さず嬲ってりますから、ご安心していて下さいませ主様!〕


 セレスの嬉々とした声を聞きながら浩介は一抹の不安と共に不運なロイに心の中で謝るのだった。


 だが、そこはロイである。


 嬉々とした表情を浮かべるセレスに嫌な予感を肌で感じ取り、訝しげな瞳で浩介を見つめた。


 彼と目が合った。


 けれど、何をする気か問いただそうと口を開きかけたロイに対して直ぐに視線を逸らされたのだ。


 その姿に一気に血の気が引いていく。


 青ざめた表情を浮かべ彼等を見つめる。


「…おぃ、何で視線を逸らすんだ?何をする気だ?おぉぃ、頼むから応えてくれよぉ……」


 思わず呟くロイのか細い声が震えている。


「覚悟なさい…ふっ、ふふふっ」


 それに応えたのは浩介ではなく口角を最大限に引き上げて満面の笑みを浮かべるセレスであった。


「…またか。俺ってば死ぬんじゃないのか?」


 走馬燈が脳裏を過ぎる…。


 けれど、何度も言うがロイである。


 走馬燈など何度も経験している。


 主に(エルズ)のせいで……。


 ロイの脳裏を過ぎる幾つもの走馬燈にエルズの姿が突如、浮かび「…はっ!?」と彼は気付いた。


〔…些細なことじゃないか〕


 心を折られ諦めかけていたロイの意識がこの程度ぐらいで人は死なないことを思い出させたのだ。


 主に(エルズ)のせいで……。


「この程度ぐらいで…抗ってやる」


 死ぬ気になれば乗り越えられる。


 歯を食いしばりながら思い出す。


 身体が憶えているのだ。


 死にかけるという意味を…。


 青ざめた表情に血の気が戻る。


 全ては(エルズ)の教育の賜物だった。


 恐妻家を嫁に持つ(ロイ)にとってはこの程度の痛み、この程度の恐怖……些細なモノだ。

 

「うおぉぉぉ!」


 身体中に力を込め壁から抜け出すために渾身の雄叫びを上げる。けれど……。


「…手遅れですわよ」


 笑みを浮かべるセレスの声にロイは視界に拡がる抗いがたい強烈な圧迫感に漸く気が付いた。


「…それって…複合魔術?……あっ無理だわ」


 心が折れるのも早かった。


 手遅れであることを直ぐに実感させられる。


 セレスの術式は既に発動していたからだ。


 セレスの周囲で四大精霊が同時に術式を発動している。それぞれ、異なる属性魔術が胸の前に突きだしたセレスの両手に集束されていく。


 それは先程のノーミとシルフィの集合魔術など比較にならないほど凶悪な代物へと変化していた。


 コレを受ければ……死ぬ。


 幾多の修羅場を経験していたロイでさえも背筋に寒気が走るのを感じるほどだった。


「死に晒せや!ワレェ~!ヒャッハァ~!」


 セレスの発言に一同、ドン引きである。


 その言葉を幼女の姿でありながら悪辣に満ちた悪魔のような笑顔を浮かべる存在が発したからだ。


 流石の四大精霊達も腰が引けている。


 互いに顔を見合わせ、自分達の皇女の変貌ぶりに引き攣った笑みを浮かべるしか出来なかった。


 普段のセレスからは発することのない汚い言葉で罵りながら彼女は嬉々として術式を発動させる。


 四大精霊の属性が全て織り込まれた術式、【神々の黄昏(ラグナロク)】神々ですら恐怖する一撃である。


 ただし……主である浩介の意向を汲み取ってなのか、威力は極端なほどに手加減されている。


「うっわぁ!?熱っ!?寒っ!?痛っ!痛たいって!!何だコレ!?嫌がらせにも程があるぞ!!」


 そう、嫌がらせ程度の威力である。


 全て低級魔術で練り上げたため死にはしない。


 けれど、灼熱からの極寒、さらには小さな岩の塊が暴風と共にロイの身体を容赦なく打ち付ける。


 確かに浩介の要望通り死にはしない。


 けれど、セレスのストレスを発散させるぐらいにはロイを痛めつけることが出来る。


 正に嬲られているのだ。


 ゴンッ!


 灼熱と極寒の混じった岩石が暴風により勢いを増してロイの額に綺麗に当たった。


「…何なんだよ、これ………」


 その衝撃により、壁から解き放たれたロイは愚痴を溢しながら意識を失いベッドに倒れるのだった。


「ふぅ~、すっきりした。ザァマァミロ!このくせれ外道がぁ!いい気味だわぁ………えっ?」


 高笑いを浮かべ、意識を失ったロイを見下ろしながら踏みつけていたセレスは場の微妙な空気に気付き周囲を恐る恐る見渡し……気がついた。


 ドン引きした部下(四大精霊)の目と苦笑する(浩介)の姿がセレスの姿を見つめていることに…。


「…あ~ぁ、悪かったな……そんなに溜まってるなんて思ってなかったから…今度から気を付けるわ」


 頬をポリポリと掻きながら、半ば呆れた表情を浮かべて浩介はセレスを見つめる。


「…ほぇ?」


 奇妙な声を出すセレス。


「…怖いぃよぉ~」


 震え上がるサラ。


「そ、そうですわね」


 引き攣った表情のディーネ。


「…ノーミ……ごめんなさい…です」


「…うん、悪かった」


 二人ともセレスに頭を下げる。


「はいっ~?」


 部下達の態度に唖然とする。


「妾はやはり勘違いしておった…精霊はやはり怖い存在でしかないのじゃ」


 ガクブルに震えながらセレスと目を合わさぬようにニルの背後に隠れた雅が涙目で呟く。


「あぁ、また再発してしまいましたか……でも、同感です。あの姿は私ですら恐怖を覚えました」


 額に手を当て項垂れながら溜息交じりのニル。


 けれど、片手はミアをしっかり抱きしめていた。


「やり過ぎね……私ですらドン引きだったわよ」


 ジト目の皐月がセレスを見つめる。


「………………………………イヤァ~!!」


 彼等の態度に我を忘れロイを嬲った記憶が思い出され、あんまりな醜態に気付いたセレスの叫び声が辺りに響き渡るのだった。


           *


 放心状態で膝から力無く崩れ落ちたセレスは虚ろな瞳で何やらブツブツと呟いている。


「わたくしは皇女…精霊を束ねる存在…それなのに、こんな、こんな…醜態を晒すなんて…わたくしとしたことが……」


 セレスの周囲だけどんよりと曇っている。


「………どうすんのよ」


 皐月の冷たい視線が浩介を見つめる。


「えっと…どうするとは?」


 その圧迫感に戸惑いながら聞き返す浩介に皐月の瞳がサラに冷たく細くなっていく。


「ふぅ~ん…そういう事を言うわけ~、へぇ~…」


 その態度に微かに頷きながら皐月は瞳を閉じた。


 ジャラジャラ。


 聞き覚えのある音が聞こえる。


 雅とニル、もちろんミアを抱えた状態で二人から後退りしながら避難する姿が浩介の視界の隅に見ることが出来た。


「…バカじゃな主殿は…火に油を注ぎおって……ミアは見るでない……トラウマになるのじゃ」


 ニルも頷きながらギュッとミアを抱きしめ、彼女の大きなその瞳を両手で覆い隠す。


「な、な、何が始まるんですか!?」


 両目を覆われ音だけの世界でミアは恐怖する。


 だが、彼女は獣人である。


 只ならない殺気に気付き獣耳を忙しげに動かす。


 ジャラジャラ…ドカッ!バキッ!ゴンッ!


 何かが擦れる音とぶつかる衝撃音、見えない世界で何が起きているのか想像することすら恐ろしかった。そして……。


「ぐはぁ!」


 誰かの呻く声にミアの尻尾が総毛立つ。


〔あの声は……浩介様〕


 ミアは思考を停止させる。


 知らなければ、いや知らない方が良いこともこの世にはあるのだと半ば達観した瞬間だった。


 ジャラジャラ。


 全てが終わったのか、あの音が遠ざかっていく。


「…ニル、もう良いのじゃ」


 雅の若干、震えた声がミアの耳に届き躊躇しながらもニルはゆっくりと彼女の瞳を覆っていた両手をどける。


「…えっ!?」


 ミアの瞳に最初に飛び込んできた光景に、その理由が分からず何度も瞬きを繰り返す。


「……す…いませでした…調子に乗ってました」


 その瞳には目の前で顔中を痣だらけにしながら土下座で謝罪する浩介の姿が在ったのだ。


「…っで、どうすんのよ?あれ」


 浩介の前で仁王立ちしながら親指を放心状態のセレスへと向け、今後についてを問いただす。


「あの……コレは一体?」


 ミアの問いに何故か哀しげな表情でギュッと握りしめるニルとあからさまに視線を逸らす雅だった。


 触れるなと言うことだろうと常にその身を危険に晒す斥候の感性が彼女に告げていた。


 四大精霊達も部屋の隅で固まりお互いに抱き合いながらガクガクと震えている。


 その姿にミアは項垂れるしかなかった。


 そして、改めて彼等の存在に畏怖した。


〔…このまま、一緒に居て大丈夫なのかしら?〕


 一抹の不安を抱えつつニルに抱えられたミアは逃げる出すことすら出来ない状況で虚ろな瞳を浮かべ天を仰ぐのだった。


読んでいただきありがとう御座います


(o_ _)o


ブクマ、評価、本当にありがとう御座います


嬉しくてモチベーションが上がります


前回で予定をしていたあの人を


出すには文字数が足りませんでした


きりが良いので次で出します


では失礼、致します


(o_ _)o



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