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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第三章 汝の魂に安らぎを
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其の26 ミアの災難

本日二回目の投稿です


ではお楽しみ下さい



 獣人族のミアを先頭に浩介達はロイ・キルケの幽閉先へと向かって歩いていた。


 既にミアの擬人化は体を成しておらず、獣耳と尻尾をさらけ出している。原因は…ニルと雅で在ることは言うまでも無い。


「後ろ姿も可愛いのじゃ」


 恍惚とした表情で雅は堂々とミアの後ろ姿を視姦し時折ミアは身震いさせている。


 その姿にニルも嬉しそうに両手をワシワシさせている。その姿は痴女と名高いリアの様であった。


「ですねぇ。あの歩くたびに揺れる尻尾なんて、もう愛らしくて我慢が出来なくなってきます」


 二人の会話に背後をチラチラと見ながら警戒するミアに浩介と皐月は苦笑を浮かべるしかなかった。


「なぁ、本当にこっちでいいのか?」


 警戒心露わにするミアの姿に少し呆れた表情で浩介は頬をポリポリと掻きながら尋ねる。


「行き先は合っています……うぅ、あの二人どうにかなりませんか?さっきから鳥肌が収まらないんですが……」


 二人と目が合いミアの二の腕にザワッと鳥肌が立ち、両腕を組みながら擦り合わせる。


「…雅はともかくニルまでとは」


 少し意外に感じた。


 このメンバーで唯一の常識人と思っていたのだが、今のニルの姿はリアのようでありエルフ族というのはどこか似ている節がある。


「可愛いモノは正義なんですよ」


 力説するニルに雅もウンウンと頷く。


 その姿に皐月ですら苦笑してしまう。


「まぁ、いいや。とりあえず目下の目標はエルズの旦那の救出だからな……ってか、何だか最近はエルフの存在意義に疑問が浮かび始めてるけどな」


 浩介が今まで出逢ったエルフは彼の知る物語の存在と大きくかけ離れていたからだ。


 確かに姿形は美形でスタイルも良い……ただ、常識人だと思っていたニルですらこの状態である。


「まぁ、エルフ族ってそんなモンよ」


 諦めたような口調で皐月が呟く。


 ガックリと項垂れながらミアの後に続く浩介一行は地下へと延びる階段をゆっくりと降りていく。


 階段を降りながら浩介は肌がヒリヒリと焼けるような感触に思わず顔を顰めた。


 不快感が彼の身体を蝕む。


「…なぁ、ミア?」


 先頭を歩くミアに声をかける。


「はい、もうすぐ着きます。不快感を感じると思いますが我慢して下さい。常闇の皇子の術式が施された扉があります。皆様の不快感の原因です」


 何故か観光案内口調のミアの説明に浩介だけが苦笑する。何故なら、他の者達、ニルや雅でさえ眉間に皺を寄せながら不快感を露わにしていたからだ。


「嫌な気分なのじゃ…」


 雅が口元に手を当てながら視界の先を見つめる。


「…同感です。何です?この術式…」


 ニルも顔を顰めていた。


「精霊に関与している方にはキツいかもしれませんね…皐月お嬢様は大丈夫ですか?」


 ミアがそれとなく尋ねる。


「うん?私は何も感じないけど?」


 周囲の反応に皐月は首を傾げる。


 平然とする皐月に浩介は訝しげな表情を浮かべながら周囲の不快感を訴える。


「マジか?この空気、結構キツいぞ…」


 眉間に皺を寄せる浩介には平然とする皐月に驚きを隠しきれなかった。


 そんなことを考えていると浩介の意識で精霊達がなにやら訴えかけてくる声が聞こえてきた。


〔主殿……この先の術式は私達、精霊にとって忌避するモノです。ロイ様はその術式が施された扉の奥にいらっしゃいますね……あぁ!もう、貴方達はウルサいですよ!静かにしなさぁい!〕


 セレスが四大精霊を叱りながら説明してくれているのだが四大精霊(あいつら)が大人しくなるはずがない。


 意識内でそれぞれの愚痴が飛び出してくる。


〔すっごいねぇ!?何コレ?〕


 サラの驚く声が聞こえる。


 さらにフラフラと術式が組み込まれた扉へと近付こうとしているためディーネがサラを掴みながら叫んでいる。


〔サラちゃん、もういい加減にしなさい!この術式に一人で近付いたらダメでしょ!本当に危ないんですからね!判りましたか?〕


〔…ぶぅ、はぁ~い〕


 諭すようにサラを窘めるディーネの声が意識に響き渡りサラがふて腐れた口調を浮かべる。


 その光景に「いつも通りだな…」と思いながら浩介は思わず口元を緩めてしまう。


 正直なところ騒がしいことこの上なかった。


 意識内でサラの好奇心をディーネが戒めるといった掛け合い漫才のようなやり取りが行われている。


 ただ、サラとディーネの二人に関しては何時ものことであり、ノーミとシルフィは我関せずを貫いている様に見えるが、聞き取れないぐらい小さな声でノーミもぼやいていた。


〔……やだ…気持ち悪い…ノーミ…これ(術式)、いや〕


 拒絶しているのが判る。


〔みんな、ウルサい…〕


 シルフィに関しては本当にどうでもよいらしくポツリと一言を呟くと意識の奥に引っ込んでしまった。


 ただ、これらは浩介の意識内の会話であって同行する皐月達に知る術がない。そのため…。


「どうしたのよ?にやけちゃって…気持ち悪い」


 皐月が気味悪そうに眉間に皺を寄せる。


 傍から見れば浩介は意味も無く間抜け顔でにやけている様に見えてしまうのだった。


 弁解するために彼女等(四大精霊)を顕現しようかとも考えたが扉の術式がどのような影響を彼女達にもたらすのか判らないため安易な手段を取るのを躊躇ったのだ。


「あっ、あの扉の奥にロイ・キルケ様が幽閉されております…あのぅ、お二人とも何故わたしに抱きついているのですか?」


 扉名前で説明するミアは動きずらそうに自分に抱きつく雅とニルを困惑気に見つめる。


「気持ちが悪いからじゃ」


 意味の判らない言葉を吐く雅に更に眉間に皺を寄せる。


「気分が悪いからこそ癒されたいのですよ」


 本当に気分が悪いのか疑わしい恍惚とした表情でニルはミアに抱きつき、彼女の肌触りをモフモフしている。


「…あまり関係が無いかと、はぁ」


 諦めたのかミアの尻尾と耳がシュンと垂れる。


 その瞳からは精気が感じられない。


「…誰か居るのか?」


 不意に扉の奥から声をかけられた。


 一瞬、警戒してミアに視線を向けると精気のない瞳を浩介に向けながら頷く。どうやら間違いなそうだった。


「あー、えっと、あんたシグルスって言う人?」


 しばしの沈黙の後、シグルスが答える。


「あぁ、そうだお前らこそ誰だ?」


 聞き返され浩介は周囲を見渡す。


 なんと答えれば良いのか悩むメンバーだったからだ。よくよく考えればかなり変わった面子である。


 帝の代理、神剣の精霊、従者、斥候、中心の世界の皇女……怪しさ満載であり浩介は頬を掻きながら皐月に尋ねる。


「…なんて答えりゃいいかな」


 聞かれないよう小声で話す。


「別に助けに来たでいいんじゃない?」


「ですが、ロイ様は一応は常闇陣営ですし私達が捉えられる可能性もありますね……」


 真面目な顔をしてニルも話に参加するが身体はミアに密着したままなのでかなり滑稽だった。


「扉の先の者からは殺意は感じられんから妾は問題ないと思うのじゃがな」


 ミアの頬をスリスリしながら雅も参戦する。


 小声でなんと名乗るのかを話し合っていた彼等に扉の奥で小さな溜息と共にシグルスが彼等に向け呟いた。


「お前らまさかと思うが…」


 浩介達の視線が扉を見つめる。


 しばしの無言が流れる。


「…はぁ、お前ら」


 深い溜息が聞こえ全員が息を飲む。


「…行き当たりばったりか?」


 全員の心が動揺する。


 言われてみれば、確かにそうだったからだ。


 エルズに騙され、常闇の皇子から追い出され、たまたま潜伏していたミアのお陰でここまできたのだ。


 行き当たりばったりと言われても仕方なかった。


 けれど……それを認めない人物が一人いた。


 それは、皐月だった。


「そ、そ、そんなわけないでしょ!」


 動揺を隠しきれない口調で否定する彼女の姿に浩介達は大きな溜息を漏らすのだった。


「目的は何だ?」


 ロイが質問を投げかけてくる。


 その言葉に何故か沸々と怒りがこみ上げてくる。


 当然だろう。


 皆の脳裏にエルズの笑みが浮かんだからだ。


「あんたのバカ嫁に嵌められたのよ!」


 癇癪気味に皐月が叫ぶ。


 どうやら、あの瞬間を思い出したようだった。


「うわぁ~……」


 皐月の表情に浩介は思わず後退りする。


 今の彼女の近くに居て良かった例しがないからだ。だが、それ以上に部屋の主の方が狼狽えているのが声で理解できた。


「嫁って、エルズか!?」


 その声がかなり上擦っていた。


 浩介はエルズと出逢った日を思い出す。


 そして、遠い目をしながら呟いた。


「…恐いもんなぁ、あの人(エルズ)って」


 その呟きに雅とニルが同意するように頷く。


 だが、確信が持てたのも事実だった。


 シグルスと名乗る人物がエルズの旦那であるロイ・キルケ本人と同一人物であることに。


 その事実に確信を持った浩介の意識に四大精霊とセレスが語りかけてきた。


〔主殿…〕


 セレスの呼びかけは憤怒に満ちていた。


 普段、従順な者ほど怒ったときは恐いモノだ。


「…なんでしょう?」


 何故か敬語になってしまうヘタレな浩介だった。


〔我々に任せて頂けないでしょうか?〕


 その声に断れるほど浩介は強くはない。


「あ~ぁ…判った」


 取り合えず最終確認をしてからと思った浩介は部屋の主に語りかける。


「なぁ、あんたロイ・キルケでいいんだよな?」


 その問いに戸惑うような口調で…。


「お、俺はシグ…」


 この状況で否定しようとした時点で浩介だけでなく意識内のセレス達が確信を持って頷いた。


 本人だ。


「うん、ロイ・キルケみたいだな。うちの斥候が言っていたのは間違いないみたいだ。じゃあ、助ける前に言いたい事のある連中がいるから先にそっちと話してもらえる?」


 浩介の有無を言わせぬ発言に返答が無い。


 四大精霊とセレスが鼻息荒く待機しているため浩介は相手の返答を待たず顕現することにした。


「顕現せよ、四大精霊」


 簡潔な言葉だけで良かった。


 なぜなら、彼女達自らが浩介から解き放たれることを切に願っていたからだ。


 不安だった常闇の術式もセレスの一言。


〔諸悪の根源は術式の奥に在り!〕


 その発言にサラが悪乗りした。


〔おー!!〕


 握り拳を天に掲げ、他の三人を無理矢理に引き連れて術式の解除を始めたため杞憂に終わりそうだったのだ。


「うんっ?大分、気分が良くなったのじゃ」


 ミアから離れることなく雅が嬉しそうに笑う。


 どうやら、セレス達が術式に介入したため効力が弱まってきているようだった。


「そうですね、胸焼けに似た感覚が薄れていってるような感じですね。あぁ、癒される」


 ミアのペタリと垂れたネコ耳をモフモフしながら答えるニルにミアはジト目を二人に向ける。


「あのぅ、気分が良くなられたのでしたら離れてもらえると嬉しいんですが……」


 だが、二人は離れる気配がない。


「「それはそれ、これはこれです(なのじゃ)!」」


 何故か、息がピッタリと揃う声にミアはガックリと項垂れ二人にされるまま右に左に身体を揺すられている。


 その姿に苦笑しながら浩介はモフモフは最強の攻略兵器だなと心の内で思うのだった。


読んでいただきありがとう御座います


(o_ _)o


なかなか、投稿できない日が続きますが


書き上げたいと思っております


見捨てずに付き合って頂ければ幸いです


それでは次回にて

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