其の22 過去の記憶・11
少し短めです
上手く書ければもう一回、投稿を
するかもしれません
では、お楽しみ下さい
口の中に苦い鉄の味が染み渡るのを感じながらシグルスは重たい瞼を何とか持ち上げる。
薄らとぼやけた視界に広がるどす黒い何か、それが自分の身体から流れ出たモノだと気付くまでに数瞬の時を要した。
ハッキリとしない霞がかった意識を振り払おうと身体を動かした瞬間。
「…うっぐ!?」
電流のような激痛が身体を貫いた。
思うように動かない。
その時になって漸く自分は何故、生きているのだろうかという疑問に気が付いた。
そう、死んだはずなのだ。
いま、目の前に見えるどす黒い血溜まりに身を埋めている自分は助かるはずがないのだ。
これだけの血が流れたのだから……。
これだけの量は明らかに致死量を超えている。
「…何が起きた?」
朦朧とする意識の中で記憶をたぐり寄せる。
そう、あの時…自らの残り少ない命を引き替えにあれを召喚した。
あの状態を変えるためにはどうしても呼び出すしかなかった存在、古の神々の一人…。
「アトロポス……」
呟いて思わず苦笑した。
あまりに馬鹿馬鹿しく感じたからだった。
だが、そんな意識よりも…。
「ぐぅっ……」
身体中に激痛が走りシグルスは身を捩る。
何を血迷っていたのか?
自らが召喚しようとした存在が何だったのか判っていたのだろうか?
そんな疑問が脳裏を過ぎったが、シグルスの意識はあの状況を打開するには呼び出すしかなかったのだと思い出す。
サツキの能力……あれは人智を越えたモノだ。
古の神々の力と言っても過言ではないだろう。
その力に対抗する力は同じ神々の力に頼らざる負えない。だが、精霊の加護が在るとは言え所詮はシグルスの力では限度がある。
せいぜい精霊王を呼び出すことが限界と言えた。
なのに、何故?
シグルスは古の神を召喚しようとしたのだろうかと働かない意識をフル回転させ考える。
彼の力では召喚以前に不可能なのだ。
自らを触媒にしたとしても顕現するには力が足りなさ過ぎるのは明白であったからだ。
さらに、知るはずのない召喚詠唱を綴り顕現まで持ち込んだ。ただし、シグルスが憶えているのはそこまでだった。
成功したのか失敗したのかすら判らない。
けれど……。
「俺、生きてるよな…」
瀕死の状態には変わりはないが死んではいない。
「成功……したのか?」
朦朧とする意識で必死に考える。
だが、頭が働かない。
やはり血を流しすぎたのかもしれない。
そんな考えが脳裏を過ぎる。
思考が理解に追いついていない瞬間…。
〔ロイ・キルケ……〕
名前を呼ばれた気がした。
聞き覚えのある声が意識に直接語りかけてくる。
その声の主を捜すため痛みに耐えながら周囲を見渡すが声の主は自分が確認できる範囲にはいない。
激痛に悶え辛うじて動く眼で周囲を見渡す。
「…っ!?」
何かがシグルスの視界を過ぎった。
それに気付いた瞬間、身体が震えた。
恐怖と絶望を身体が覚えていたからだ。
止まらない震えより自らの瞳が視認した存在に驚愕した。あり得ない……。
彼の意識はそう認識したのだ。
「サツキ…?」
瞳を大きく見開きながら呟く。
震えが止まらなくなる。
それは恐怖であった。
視点の定まらない瞳でボンヤリと佇む少女の姿にシグルスの意識では激しく警笛が鳴り響く。
危険だと知らせていた。
行動しなくては。
気付かれる前に動き出さなければ。
焦る気持ちとは裏腹に身体が動かない。
ガタガタと震える身体に鞭打ちながら自らを奮い立たせるように意識を集中させる。
その時だった。
〔あせるな、ロイ・キルケ……全て終わったのだ。汝の願いは我の手により叶えられた…〕
起き上がろうとするシグルスに語りかけるように彼の意識に誰かの声が響き渡る。
「だが、サツキは…うっぐ」
立ち上がりかけた瞬間、激しい痛みが彼の身体を蝕み、彼は力無く血溜まりに倒れ込んだ。
力無く倒れ込むシグルスに対して意識に語りかけてくる声が呆れたため息を吐いたのが判った。
〔はぁ…だから、動くなってのに…〕
何故だろうか。
その声に恐怖は感じなかった。
震えていた身体が徐々に落ち着いていく。
「漸く落ち着いたか…」
ボソリと呟いた声が意識にでは無くシグルスの耳元で直接に聞こえた。
それは声の主の気配が近くにいる証拠であった。
幻聴でないことは理解できる。
そして、その声の主が現実に存在する者だという認識だけは瀕死の状態とはいえシグルスには理解することが出来たのだ。
ただ、不思議な感覚だった。
その暖かな感触に思わず身を委ねそうになってしまい自分が無意識のうちに無防備になっていることに今更ながらに気付いたのだ。
だが、しかし…。
微かに視線を動かしシグルスは気配を感じた存在へと視線を移し信じられないとばかりに唖然とした表情を浮かべてしまった。
「…ミユルか?」
信じられなかった。
今、目の前に立っている存在に対して理解が追いつかずシグルスの思考は完全に停止してしまう。
その瞳にしっかりと焼き付いている。
無残な姿で血溜まりに倒れ込む彼女の姿。
命の灯火が消える最後まで抗った彼女の姿。
脳裏に焼き付いて離れぬ彼女の死に様……けれど、現実は助かるはずのない彼女がシグルスを見つめていたのだ。
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