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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第三章 汝の魂に安らぎを
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其の21 過去の記憶・10

今日二度目の投稿です


前回の半分ほどとなっております


では、お楽しみ下さい


 他者の魂が混じり合う感覚は不思議なものだとサツキは心の中で呟いていた。心の中に他者が介入する感覚は実に新鮮であったが不安も感じていた。


〔…不思議な感覚じゃな〕


 幾つもの記憶を有しているサツキにとっても初めての感覚であり何故だか自然と笑みが溢れるのがおかしかった。


 所詮は一人だったのだ。


 幾つもの記憶を有していても、それはあくまでサツキの記憶であり帝のような他者ではなかった。


 その意識が徐々に帝の魂に納められていく。


〔…暖かい、妾はこの感覚を忘れていたのかもしれぬ……妾が求めていたモノは帝の存在そのモノだったのか?〕


 サツキの感情が何故か朦朧としてくる。


 帝の意識とサツキの意識が溶け込み、どちらの思考で考えているのか判らなくなり始めた瞬間。


 ジャラリ。


 何かがサツキの意識を縛り付けた。


 意識を音のした方へ向けたサツキは目に映る自分の姿に現実へと引き戻されるのを実感した。


 意識全てに漆黒の鎖が食い込んでいるのだ。


 身動きするたびに鎖の擦れる不快音が耳につく。


〔護印か…〕


 サツキを封ずるそのために創られた封印術式、帝の器となれる存在が現れなければ解ける術はない。


 一気に不快感がサツキの意識に押し寄せる。


 今までの安堵感に近い感覚をバッサリと切り捨てられたかのような喪失感が彼女を襲った。


「あんまりじゃな……」


 小さく呟きながらため息をつく。


 けれど予想の範疇ではあった。


 サツキは分かたれた肉体に宿る人格へと意識を向ける。今までの記憶の中で唯一安らいだ彼等との記憶が思い出される。


 サツキの記憶、これだけは残しておきたかった。


〔あやつらには悪いことをしたのぅ……〕


 短い期間、旅をした二人を思い出す。


 彼等と過ごした時間を彼女自身、意識の奥深くで見つめていた。生まれたてと言っても過言でない、その意識の一喜一憂する姿に目を細めた。


 だからこそ、残してやりたかったのだ。


〔…まぁ、バレておったしな。悪いようにはせんじゃろうて。アトロポスもついておるしのう〕


 味方ではないにも拘わらずサツキはアトロポスには信用に値する何かを感じていた。


 それは直感としか言いようがなかった。


 アトロポスが帝達を相手にしている間、自らの意識を幾つかに分けそれぞれに人格を持たせた。


 そのヒントになったのは帝達である。


 個別の意識と人格、サツキの魂に存在するのは全てサツキ自身の意識と記憶であり、それらに別の意識と人格を想像することを思いついたのだ。


 ノーナとして目覚めた今ではサツキとしての記憶は他人の記憶を見ているようであり説明しようのない奇妙な感覚だった。


 サツキは自らの内に二人の人格を形成した。


 一人目は純粋にノーナの別人格であった。


 これは彼等と過ごした記憶から創造した。


 そして、もう一人の人格は帝の魂を求め続ける記憶を無意識内に植え付けた人格を創り上げた。


 それらがどう動くは予想がつかない。


 あえて人格達の意志に任せようと思い、彼女はノーナとしての制約の一切を封じた。


 護印に封じられた自分自身と出逢ったときに人格達が何を感じるのかに興味があったからだ。今の自分とは違う感性がこの世界に何をもたらすのか……サツキは微かに笑みを浮かべる。


 何時ぶりか判らない。


 今までのノーナとしての宿命、帝を狂おしいほど愛し、その愛のための障害を無慈悲に排除する。


 それが彼女の存在意義であった。


 どれだけの命を奪い世界を闇に陥れてきた判らない……けれど、それが自らの意志だったのかと問われれば今のサツキは疑問を感じていた。


 アトロポスとの出逢い。


 彼女に封じられようとしている現実。


 サツキの意識は何かが変わろうとしていた。


〔しばしの間、世界から離れるのも良いかもしれぬな……妾は疲れているのかもしれぬ……さて、妾と帝のいない世界はどうなるのかのぅ……〕


 徐々に意識が鎖に支配されていく。


 耳障りな鎖の不快音に眉を顰めながらサツキは自分と帝の存在しない世界を想像しながらゆっくりと瞳を閉じていく。それに合わせるように痛みや苦しみ、感情すらも鎖は奪っていく。


 そして、サツキは全ての感覚を封じられ無意識による深く永い眠りにつくのだった。


            *


 アトロポスは帝の魂と混じり合うサツキの意識を鎖を通して静かに見つめていた。


「…あんたの世界、私が見届ける」


 小さく呟いたアトロポスに瞳を閉じていた帝が微かに笑みを浮かべる。


「何がおかしいの?」


 不機嫌そうに尋ねる。


「うむ、余もノーナもこの瞬間を待ちわびていたのかもしれぬと思ってな。ノーナの願いは余の命、余の願いは世界の安寧……まさに、今この瞬間が互いの願いが叶ったのでは無いか……とな」


 瞳を開きアトロポスを真っ直ぐに見つめる。


 その瞳は優しげな慈愛に満ちていた。


「ただ……不確定要素が大きすぎる。本来、他次元の世界に関与できないはずだった……けど、あんた達を私は自らの次元に導こうとしている」


 すでに帝の躰は朧気な存在へと変化しており、数刻もしないうちにこの世界の帝の肉体は瓦解する。


〔…猊下〕


 不安げな表情を浮かべながらミユルは薄らと背後が透けて見える帝を見つめていた。


「其方も余と共にいくのだ……そうであろ?」


 帝の問いにアトロポスの視線がミユルに向けられる。自分の姿をした存在に見つめられミユルは声を発するのを躊躇した。


 その願いが叶わぬ可能性が脳裏を掠めたからだ。


「肉体が完治するには時間がかかる…その間、あんたには帝の魂の傍に居て貰う……万が一の為に」


 アトロポスが神妙な顔をしているが微かに口元が緩んでいるのがミユルには判った。


 当然だろう。


 自分の身体なのだから。


 ミユル自身も微かに笑みを浮かべる。


 なぜなら、ミユルが求めていたことだから……。世界が分裂し多重世界になった時ですらミユルには帝の側を離れるという選択肢はなかった。


 だから……。


 帝の魂と共に居られる事が嬉しかった。


 悠久の時を共に過ごせるのだ。


〔…感謝します〕


 床に膝を付き頭を垂れる。


 顔を上げるのが恥ずかしかった。


 けれど、愛しき人の声が間近で聞こえミユルは思わず身体をビクッと震わせる。


「…余と共に」


 その声にミユルは自分の感情を悟られまいと気を引き締めながら顔を上げる。


 だが、無理だった……。


 顔を上げ、その瞳に映る姿は自らに手を差し伸べ優しげな微笑を浮かべる帝の姿を見た瞬間、全てを忘れた。


 不安……その言葉は眼前の存在によって忘れ去られてしまうには十分すぎるほどであった。


〔…はいっ〕


 思わず返事をする。


 その顔が紅く染まっていようと今のミユルにはどうでもよく感じてしまった。


 頬を染めながら震える指先でミユルは差し出された帝の手にそっと触れる。


 その瞬間、帝の肉体は淡い光に包まれ青白い球体へと変化し彼女の胸元で佇む。


 ミユルは一瞬、驚きに満ちて表情を浮かべたが、すぐにその球体を愛おしげに抱きしめ帝の暖かな意識を感じるのだった。


 それはミユルにとって言葉に出来ない喜びと彼の愛おしさに時が過ぎるのを忘れるほどであった。


 どれだけの時が過ぎたのだろうか。


 ミユルにとってそれは一瞬のようでありながら無限に続く悠久の時のようにすら感じた。


 けれど、その姿を見つめていた者が申し訳なさそうに声をかけてくる。ミユルの聴覚に届いてはいたがこの瞬間を失いたくない思いが強く……彼女の声は無視された。


「お~ぃ、そろそろ……うん、判ってたけど……判ってたんだけどさあ……無視かい……もぅ、いいわ……ご馳走さま……」


 二人だけの世界に浸る姿を見ながらアトロポスは少し照れ気味に頬を掻く。


「とりあえず、いきましょうか……あんた達の器が見つかるまであんた達は私の支配する空間で管理するから……って、聞いてる?はぁ~……」


 微動だにしないミユルに呆れた表情を浮かべながらアトロポスは小さくため息をつくと片手を振り二人を無視して空間を凝縮し始める。


 凝縮されていく空間を制御していたアトロポスに今まで桃色に包まれていた場所から声が聞こえた。


〔…アトロポス、汝に頼みがある〕


 不意に帝の意識が語りかけてきたのだ。


 その口調にミユルもアトロポスを見つめる。


「…まぁ、予想はつくけどね」


 何を言おうとしているのかは直ぐに分かった。


「安心しなさい。ロイもサツキも私が責任を持って扱うわ……それに、こいつらの管理をして貰わないと……ね」


 神々しく輝く四つの箱に視線を向ける。


 封じているとはいえ扱いを間違えれば世界を崩壊させてしまうかもしれない代物であり厳重な管理が必要であった。


 それらを二人に任せるつもりでいた。


 それにアトロポスにはサツキの置き土産にも興味を引かれていた。あの最中で何を想い、あれ(・・)を創造したのか関わってしまった以上は最後まで見届けたかった。


 幸いにもこの世界の肉体を依り代としている。出来過ぎではないかとの疑問が脳裏を過ぎるがアトロポスは覚悟を決めていた。


「…だから安心しなさい」


〔そうか、余の友を宜しく頼む……〕


 安堵した声にアトロポスは苦笑する。


 魂だけになっても彼は帝なんだと……。


 凝縮された空間がアトロポスの掌に集まり、停止していたときの流れが緩やかに動き出す。


 その場所はアトロポスが創り上げた謁見の間ではなく帝達の世界へと顕現されていく。


 瞬間、辺りを立ちこめる血生臭い香りが鼻をつく。今までアトロポスが創り上げた空間に過ぎなかったため、それらのモノは再現されていなかった。


 けれど、現実は醜悪なモノであった。


 戦闘により飛び散った肉片とどす黒く染まった血溜まり、生と死の狭間を思い知らせるには十分なほどの死の香りに満ちていたのだ。


 その場所で……。


 アトロポスは血溜まりに倒れ込む男と意識を封じられボンヤリと佇む少女を上空から冷たい瞳で見下ろすのだった。

  

読んでいただきありがとう御座います


(o_ _)o


ブクマ、評価ありがとう御座います


モチベーションが上がります


(´V`)♪


今後とも宜しくお願いします


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