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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第三章 汝の魂に安らぎを
54/112

其の20 過去の記憶・9

遅くなり申し訳ありません


今回、少し長いです


今後も不定期更新となりそうです


では、お楽しみ下さい


 どれくらいの時が流れたのだろうか。


 アトロポスの額から汗が滴り落ちる。


 意識を集中していなければ彼等を押さえ付けることが出来ない状況に、アトロポスはこれ程までに手を焼かせられるとは考えてもいなかった。


 それだけ彼等、帝の魂に潜む人格達の強さに驚かされていた。


「あんたの魂にいた奴等……しつこいわよ」


 舌打ちしながら出て来る言葉は愚痴しかない。


「であろうな…彼等は歴史の中で偉業を成した者達ばかりであるからな。余も彼等には苦しめられた」


 アトロポスの邪魔をせぬように瞳を閉じ微動だにせずにいる帝の口元が微かに緩む。


 彼等との苦闘の日々が思い出されたからだ。


「この器の者も苦労しておったわ」


 既に数多くある歴代の帝の意識に取り込まれた清廉の帝と呼ばれた人格を懐かしむように呟いた。


「…ったく、他人事みたいに言ってるけどあんたも十分、迷惑かけてるわよ…主に私に……はぁ」


 深い溜息が漏れる。


 この隔離された世界を維持するだけでもかなりの力を消耗しておりアトロポスはかなり限界を感じていた。けれど、気を抜けば世界が崩壊する。


 それどころか、魂から解き放たれた彼等にアトロポスですら取り込まれる可能性すらある。


 これ程までに緊張感に包まれたのは何時ぶりだろうかと集中する意識の片隅で過ぎるのを感じながらアトロポスは最後の切り離しに意識を向け直す。


 帝の魂から主要な人格を切り分けそれぞれの存在を認識する。彼等を顕現し従わせなければ封印も滞ってしまう。


 一人一人を認識し束縛しながら捉えていく。

 

「…よし、全員を捉えた。アトロポスの名において汝らに命ずる、汝らを我の力によって顕現する」


 アトロポスの力が空間を歪め帝の意識から解き放たれた四人の人格達が謁見の間に顕現を始める。


 〔…すごい〕


 圧倒的な力の本流にミユルは茫然と呟く。


 彼女と同じ能力を持ちながらも圧倒的に違う力量の差にミユルだけでなくサツキも軽く舌打ちした。


「妾をも凌駕するか……」


 自らの力に自信があったサツキだったがアトロポスには到底、及ばないことを肌で感じ取ったのだ。


 けれど、その力ですら辛うじて彼等を押さえることしか出来ない事実もまた二人に底知れぬ畏怖の念を憶えさせるのだった。


「ひゃっはぁ!久し振りの肉体じゃねぇか!いいね、いいね!たぁだ、これだけは戴けねぇなぁ~」


 左右の色彩が違う瞳を持った男が最初に顕現され、狂喜に満ちた笑みを浮かべ周囲を見渡す。


 だが、自らの顕現された両手足を縛る鎖に視線を向けると、心底うんざりした表情を浮かべ床に座り込んだ。


「なぁ?この鎖いらなくねぇか?」


 ジャラジャラと鎖を鳴らしながらアトロポスに突きつける。


「…あんたがグレンデルね」


 帝の魂に触れてからしつこくアトロポスの邪魔をしてきた存在であり、彼女の予想通り真っ先に顕現してきていた。


「まぁねぇ、っで、どうする?封印でもすんのか?まぁ、抵抗させて貰うけどねぇ……」


 口元に笑みを浮かべるグレンデルの気配に不覚にもアトロポスは寒気を感じた。だが……。


 ポコッ。


「いい加減にする……」


 グレンデルの背後から新たに顕現された少女が彼の頭を軽く叩いた。


「…言ってなぁ」


 グレンデルが振り返ると無表情で頬を膨らませる少女の姿があった。


「見栄っ張り、天邪鬼、照れ屋さん……」


 グイッとグレンデルの顔を両手で押さえ無表情な瞳で真っ直ぐに見つめながら淡々と彼の性格を列挙していく。


 恥ずかしさのあまり徐々に顔が紅くなっていくグレンデルにアトロポスはキョトンとした表情を浮かべる。


「…あんた、だれ?」


 少女の視線がアトロポスに向く。


「…顕現したのはあなた……わたしは顕現された身、この、バカが失礼した…だから、身の程を教えてる」


 グレンデルと同じように両手足を縛る鎖をアトロポスに見せつけるが会話が妙に成立しない……。


 額に手を当てて溜息交じりに途方に暮れるアトロポスを尻目に少女は無表情のまま首を傾げる。


〔あっ、また誰か顕現してくる……〕


 その声に視線を顕現を始めた存在へと向けた。


 今度は二十代ぐらいの女性が微笑を浮かべながら顕現し、少女の頭に手を乗せて間延びした声を発した。


「あの人はぁ~名前を名乗れって言ってるのよぉ~トリニティちゃん……ってか久々の肉体っていいもんねぇ~。なんだろぉ~、この開放感!」


 ジャラジャラと鎖を鳴らしながら、これでもかと言うぐらいトリニティと呼ばれた少女の頭をガシガシと撫でる。


「うるさい…頭撫でるな…子供じゃない……アイシス、やめて…ホントに恥ずかしい」


 その行動にトリニティは若干、イヤそうな表情を見せたがそれは親しい人ぐらいにしか分からない位の微かな反応であった。


「いやぁ~!可愛いわぁ~、照れちゃってもう!」


 アイシスと呼ばれた女性がトリニティの仕草に何故か狂喜乱舞し更に彼女の頭をガシガシなで回す。


 その光景にアトロポスは何度も瞬きを繰り返す。


「更に騒がしくなった……何なのよ、一体?」


 もう、呆れるしかない。


「余の意識の中でも騒がしかったのだ……これは必然であろう。お主も一度に全員を顕現したのだ……諦めるがよい」


 帝の苦笑がハッキリと物語っていた。


 諦めろと……。


「彼奴らって歴史に名を残した帝達よね?」


 騒がしくなった空間を溜息交じりに見つめる。


「そうであるな……」


 帝の言葉数が少なくなる。


「威厳ってなに?」


 アトロポスの質問に帝が沈黙する。


「しょうがないんじゃなぁい~。当時は平和だったんだしぃ~、治世が安定してれば認められたからねぇ~。私なんて、安寧の帝なんて呼ばれてたしぃ~。この娘なんて沈黙の聖帝よぉ~。只単に無口なだけなのにねぇ~」


 ガシガシとトリニティの頭を撫で、当の本人は無表情なまま頭を右に左に振らされていた。


〔…痛くないのかしら〕


 思わずミユルが呟く。


「…痛い。でも、止まらない…諦めが肝心」


 トリニティがミユルの問いに答える。


〔…不憫〕


 思わず涙ぐんでしまうミユルだった。


「あと一人ね……」


 グレンデル、アイシス、トリニティ、アトロポスが帝から顕現した人格はあと一人だった。


 ただ、ここまで個性的な人格達だと思っていなかったアトロポスは最後の一人にも不安を覚えた。


「…まさか、こんな人格ばかりじゃないわよね?」


 アトロポスの溜息交じりの呟きに帝は何故か視線を僅かに逸らし口を噤んだ。その仕草に嫌な予感しかなかった。


「…久々の肉体だな」


 長身の男が自らの肉体を見つめながら顕現し姿を現した。最後の人格であるバルドルであった。


 長い銀髪を後ろに無造作に縛り、灰色の瞳は何かを探るように周囲を見渡し、そして自らの両手へと視線を向ける。


 ジャラジャラとなる鎖を見つめながらバルドルはガックリと肩を落とし俯いている姿にアトロポスは思わず…。


「…辛気臭い奴ね」


 呟いてしまった。


 他の三人に比べかなり、いや驚くほど静かだったからだ。ただ、バルドルからは三人とは違う、言いしれぬ雰囲気を感じた。悪い意味で……。


「…お前が俺を顕現したのか?」


 彼の視線がアトロポスを見つめる。


「ええ、そうよ」


 その言葉にバルドルの口角が少しだけ上がる。


「…キモい」


 その表情に何故か背中に鳥肌が立つアトロポスであった。けれど、その言葉にバルドルは無言で俯きながら肩を震わせる。


〔な、なんだか怖いんですが…〕


 ミユルですら悪寒が走ったのか声が震えている。


「…落ち込んでいるのだ。此奴は繊細であるからのう……余に免じて察して貰えぬか?」


 繊細の言葉の意味を間違えてないかとアトロポスは思ったが何だか拍子抜けした気分になりポリポリと頬を掻きながら謝罪する。


「…ごめん」


 その一言にバルドルの震えていた肩がピタリと止まり、魚の腐ったような灰色の瞳がアトロポスを陰気に見つめる。


 これはアトロポスの主観に過ぎない。


 実際のバルドルの心情は驚きと感動に満ちておりアトロポスに向けた陰気くさい視線は感謝の念を称えていたのだ。


「喜んでおるわ……」


 ボソリと呟いた帝の言葉にアトロポスとミユルの表情が引き攣った。


「…えっ?あれで」


〔呪ってるようにしか見えない……〕


 そんな二人の発言を余所にトリニティ、アイシス、グレンデルの三人は珍しげに彼を見つめる。


「珍しいなぁ、バルドルが笑ってやがる」


「ほんとぉ~だねぇ~!?」


「世界が滅びる前兆……」


 最後のトリニティの言葉に現実味がありすぎてアトロポスは苦笑いを浮かべるに留まった。


「…んで、こいつの偉業はなに?」


 正直、何かを成し遂げられる人物には見えない。それどころか疎まれてしまう存在ではないのかとバルドルの一つ一つの動作にアトロポスはそう思ってしまう。


「こいつぁ、智賢の帝だぁ。ひゃっはぁ!笑えるだろう、此奴の姿じゃ想像もつかねぇけど歴代の帝の中で最もまとも(・・・・)なやつなんだぜぇ」


 ミユルとアトロポスの二人は目が点になる。


「…まじで、どんだけ酷いのよ」


〔…でも猊下だけは違うはず〕


 自分の主である帝だけは違うと祈るような視線をミユルは帝へと向ける。何故か優しい瞳で返されてしまった……。


「お主ら……」


 溜息交じりの声が彼等の視線を集める。


 その瞬間、彼等の気配が変わった。


 殺気に充ちた視線がサツキに突き刺さる。


 それぞれに思うことがあるのだろう。


 空間の雰囲気がガラリと変わり肌が焼け付くようなヒリヒリとした感触が肉体を持たないミユルにさえ感じられる。


「帝殺しか……」


 その言葉にサツキの頬がピクリと反応する。


 発したのはグレンデルだ。


「お主らの主観ではそうじゃろうな……」


 否定するつもりはなかった。


 サツキの感情を理解することは彼等には出来ない。彼等は帝の意志に過ぎなかったからだ。


 張り詰めた空気が辺りを包み込む。


 だが……。


 ゴンッ!


 アトロポスがサツキの頭を容赦なく叩く。


「……っ!?」


 涙目になりながら恨めしそうに見つめるサツキにアトロポスは冷たい視線で見下ろす。


「…あんたらの主義主張はどうでもいいのよ。ここは私の世界、私が創造する世界、事情なんか知った事じゃない、その殺意……あんたらも……いい加減にしなさい」


 アトロポスが視線を四人に向けた瞬間、彼等を縛っていた鎖が白い光を放ち束縛していく。顕現された肉体から何かが砕ける嫌な音が鳴る。


 けれど誰も呻き声一つ出すことが出来ない。


 それだけの威圧感が空間を支配していた。


「…私を誰だと思ってる。貴様ら程度の力で私に刃向かうな、不愉快きわまりない」


 その瞳、口調からは一切の情が抜け落ちていた。殺意などと言った生ぬるいモノではない。


 先程まで見せていた人間味など微塵も感じられない。正に支配者の体を有していた。


「…この依り代に負担をかけずに事をなそうと思っていたが……無理やりでもあんたらを押さえ付けるしかないなら…どうする?」


 冷たい瞳がその場にいる者達に畏怖を与える。


「…皆の者、従え。今世の帝の勅命である」


 状況を見つめていた帝が言葉を発した。


「しゃあねぇなぁ……」


「そうだねぇ~」


「…異論ない」


「それが賢明だろう……アトロポス、其方に一つだけ聞きたい事があるのだが?」


 グレンデル、アイシス、トリニティの三人が殺気を納める中でバルドルだけはアトロポスを見つめ問い掛ける。


「…何かしら」


 三人の様子に威圧的な態度を静めバルドルを見つめる。けれど、彼の瞳はアトロポスに不快感を感じさせた。


 何故だかは分からない。


 けれど、アトロポスはどこか真理を突いている…否、真実を語っているのでは無いかとすら感じていた。


「…お主の行動は多次元の世界に介入するものだ。お主が最善と思える行動がこの世界を崩壊に導くかもしれん。確かにこの世界は歪な箱庭であるかもしれないが多次元の者の力は互いの世界の均衛を、いや消滅すら考えられる。それはたとえ高次元の存在(・・・・)が干与していてもだ」


 かなり遠回しな言い方だとアトロポスは感じた。


 バルドルの疑念は確かに理解できる。


 けれど、信じたくはなかった。


「つまりは…私の行動全てが別次元…高次元の存在に決められた事象に過ぎないと言いたいわけね」


 回りくどい言い分に少し嫌気がさした。


 だが、正論ではあった。


 その事を考えた瞬間、アトロポスの意識に霞がかるのが判ったからだ。


「理解していて何よりだ……だが、足りない」


 バルドルの瞳がアトロポスを見つめる。


「なにが足りないと…」


 何故か視線を避けることが出来ない。


「アトロポス、其方も運命付けられているのだ」


「…っ!?」


 衝撃的だった。


 なぜなら、この世界においてアトロポスの存在は高次元に最も近い存在だったからだ。


 けれど、バルドルの言葉を信じるならばアトロポス、彼女ですら高次元の存在の思惑に荷担していると言えた。


「…そんな、でも……可能性はあるわね」


 さすがと言うべきだろうか。


 バルドルが智賢の帝と云われるだけはあった。


 考え込むアトロポスにバルドルはさらに追い打ちをかける。その時になって漸くアトロポスは彼の瞳に不快感を抱いた理由が分かった気がした。


 真実に最も近いのだ。


 自らの疑惑を見ぬ振りをした報いかもしれない。意識に霞がかった時点で気付くべき事柄だった。


 だが、アトロポスは気のせいと後回しにした。それが今、自らに振りかかったのだと知らされたのだ。


「ならどうしろと…」


 漸く、それだけを口にする事ができた。


「知っていればよい…我等では太刀打ち出来ぬは道理、ならば知ることこそが必要なのではないか?」


 バルドルの瞳、口調は淡々としていた。


 けれど、心に訴えかけてくるのを感じた。


 それが真実であると……。


「サツキ、あんたも気付いてたの…」


 何となくだからアトロポスはサツキの悪足掻きに意味があるのではないかと感じてしまった。


「…いずれ判るのじゃ」


 それだけ答えるとサツキは口を固く閉じた。


 それは答えてしまえば全てが終わってしまうのではないかと言う不安に駆られてしまうほどだった。


「判ったわ」


 短く答えたアトロポスに満足げに口角を上げたバルドルは静かに瞳を閉じ瞑目した。


「なら、アトロポス…其方に我の意志を任せる。我は智賢の帝、汝の…否、我等の存在意義を其方に委ねる」


 淡い光が彼等を包み込む。


 アトロポスが屈服させようとしていた彼等、帝の意志達をバルドルがまとめ上げた瞬間だった。


「汝らに問う…汝らは我の封印に異議を唱える者か?」


 アトロポスが彼等に問う。


「「否」」


 全員が否定する。


 彼等の中でバルドルの存在の意味をアトロポスは知る事となった。彼等の中で最も確信を知る者がバルドルで在ることは紛れもない事実であった。


「我、時を司る者…汝らは我の理に殉ずることに、封ずられることに異論を唱える者か?」


「「否」」


 即答であった。


 まるで、意思が統一されたが如く否定する。


 今までの喧噪が嘘の如く静まり返る。


 ある意味、不気味であった。


 これまでの個が全に変わった如く彼等の意志は統一されアトロポスの問いに即座に答える。


 違和感を憶えた。


 何者かの作為を感じる。


「グレンデル…汝は自らの意志により我の理に従い封ずることを願う者か?」


 あえて個別に問いただすことにした。


 それも、最も個性的な存在に…。


「まぁ、しゃあ~ねぇわなぁ。ただ、俺なりの筋は通す。たとえ、全員の意志だとしても俺なりの方法で見極めさせて貰う」


 グレンデルの言葉に少なからずの安堵感を感じたアトロポスは微かに微笑みを浮かべた。


 統一された意志に見えていたものの、それぞれの感性が失われていないことに安堵したためだ。


「安心したわ…あんたがあんたらしくあるなら心配はなさそうね。この世界に私は干渉する気はない。あんた達が解決するべき事柄だと思ってる…」


 皆の視線を見つめながらアトロポスは徐に四つの箱をそれぞれの帝の元へと導いていく。


 白光に包まれた箱に最初に触れたのは、やはりというべきかグレンデルであり彼は鎖をジャラジャラと鳴らしながら楽しそうな表情を浮かべアトロポスを見つめる。


「じゃあ、先に行くわ。あぁ、そうそう俺は真眼の帝、この眼で真実と虚像を生み出す者……お前の真実を見極めさせて貰う。じゃあな、早いとこ転生して取り込んでくれや。ヒヤッハ~!」


 箱に取り込まれていくグレンデルを見つめていた残りの三人も微かに頷き箱へと触れ取り込まれていく。


「…また、会える。それまでの封印、またね」


 無表情に手を振るトリニティ。


「そうねぇ~、トリニティちゃんの姿見れなくなるのは残念だけど~また逢えるだろうしねぇ~。じゃあねぇ~」


 手を振り微笑みながら取り込まれていくアイシス。そして、最後に残ったバルドルの陰気な瞳がアトロポスを見つめる。


「しばし、考える時間が持てるのも一考だろう……アトロポス、汝にも必要な時間であろう?」


 バルドルの問いに沈黙で答える。


「ふむ、いずれ……また出会えるであろう」


 箱に手を添えバルドルは意識を集中する。


 全ての帝が箱に収められ空間を静寂が包み込む。


「さてと、漸く準備が出来たわね……」


 アトロポスが帝とサツキを見つめる。


 帝の魂にサツキの存在を封印する、全てはこのためだけの準備に過ぎない。


 帝の魂の中にいた彼等のために余計な時間を割いてしまったが無意味だとはアトロポスは思わなかった。


 全てを理解するにはバルドルの言葉通り時間が必要である事が分かり意識の片隅に残る高次元の存在……。


 考えなければならないことは山ほどあるのだ。


 だからこそ、早く終わらせなければならない。


 この世界を維持するのもそろそろ限界を感じてきていたからだ。二人をもう一度見やるが焦りは感じられなかった。


「あんた達も……いいみたいね」


 アトロポスは静かに深呼吸する。


 少しでも意識を乱されれば全てが崩壊する。


 そしてアトロポスは瞼を閉じ、二人の意識を一つの魂に混ぜ合わせる術式を構築し始めるのだった。

 

読んでいただきありがとう御座います


(o_ _)o


ブクマ、評価頂けると有り難いです


今後とも宜しくお願いします

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