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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第三章 汝の魂に安らぎを
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其の8 戦乱の元凶

ある家庭が原因のこの争い……


一市民の方にはいい迷惑


フェンリルも犠牲者でした(笑)


お楽しみください




 リアと別れて皐月と共にニル達のいる部屋の前で浩介は何故か背筋に寒気が走るのを感じた。


「…なんだか、嫌な予感がする」


 浩介の言葉に皐月は首を傾げながら扉を開いた。


「おかえりぃなさい~」


 聞き覚えのある声と和やかに手を振る見覚えのあ女性の姿に皐月は無言のまま……。


 バタンッ。


 扉を閉めた。


「……アンタの予感、当たりだわ」


 額に手を当て深いため息をつく。


「俺にも声は聞こえた…なぁ、何でいるんだ?」


 声の主の存在に浩介はゲンナリする。


「知らないわよ」


 皐月はぶっきらぼうに答え、二人は目を見合わせると小さく頷きあって来た道を戻り始めた。


 部屋にいた女性の娘を連れてくるために……。


 そう、何故か部屋にエルズがいたのだ。


 多重世界の争いに干渉しないと公言していたはずのエルズが争いの真っ只中に来てしまっている。


「干渉しなかったんじゃないのか?」


 訝しげな表情を浮かべる浩介に皐月も頷く。


「…知らないわよ。けど、碌な事じゃない」


 エルフ界での彼女の言葉を思い返しながら浩介達は中庭で別れたリアの元へと歩みを早める。


 しかし………。


 背後から誰かに突如、二人は肩を掴まれた。


 歩みを止められ、二人はビクッと身体を震わす。


 気配すら全く感じられなかった。


 けれど、誰なのかは二人には想像が付いていた。


「何処に逃げようとしているのかしら?逃げられないわよ、お二人さん」


 その声にガックリと肩を落としながら二人は声の主であるエルズに嫌々ながら顔を向けるのだった。


「何しに来たのよ」


 ぶっきらぼうに尋ねる皐月にいつもの悪巧みを思いついたときの笑みを浮かべ二人の襟首を掴む。


「取り合えず部屋に戻りましょう。話はそれから……」


 半ば強引に二人の襟首を引っ張りながら元来た道を戻り始めるエルズに抵抗しようとジタバタと足掻いてみる。


 だが、リアの母親というだけあって振り解く事すらできずに引き摺られるまま部屋へと連れて行かれるのだった。


 バタンッ。


 扉が閉められ完全に退路を塞がれ、逃げることを諦めた二人は手近なソファに座り込み項垂れる。


 「碌な事じゃない」、皐月の言葉が浩介の脳裏を過ぎり間違いないだろうと直感で思った。


 聞くことすら躊躇するが聞かないと始まらない。


「…っで、わずか数時間ぶりで何の用だ?まさか、舌の根も乾かぬうちにエルフ界は多重世界の戦に干渉するなんて云わないよな?」


 笑顔を浮かべるエルズを見やる浩介は背筋に嫌な寒気を感じながら彼女に用件を話すように促す。


「そんなはずがあるわけないでしょう?ただね、貴方達にちょ~っと頼まれごとを聞いて貰いたくて、セレスちゃんに無理を言ってわざわざこの場所に転移して貰っただけよ」


 わざわざ頼み事をするためだけにエルズが別世界に来るはずがない。


 離れた場所で目元だけ出したニルが雅と共に先に彼女から内容を聞かされたのか苦笑している。


 その姿に碌でもない事だけは確かだと浩介と皐月は思ったのだった。


「…で、頼みごとってなに?」


 皐月が核心に迫る。


「う~ん、簡単な話よぉ。常闇の世界に行ってる私の部下の救出活動?みたいな……まぁ、どちらかというと拉致かしら?をして貰いたいのよ。なんせ、勝手に戦に参戦しちゃってるみたいだから」


 人差し指を頬に当てながら可愛らしく微笑むエルズに「部下って、あんた?ガッツリと他世界に干渉してんじゃねぇか!エルフの皇女さまぁ?」とツッコみを入れたくなる浩介だったが、その感情を必死に押さえなんとか自制する。


 なぜなら、ワクワクしながら浩介がどんな反応をするかを楽しみにしているエルズの表情を見てしまったからだ。これではツッコミを入れたら負けなようなものだ。


 身も心もボロボロにされる。


 ただ、その悲痛な心を皐月がジト目で代弁した。


「他世界に干渉してんじゃない?しかも、ガッツリと…」


 浩介は心の中で皐月に喝采を送る。


 期待に応えてくれなかった浩介を残念そうにチラ見しながらエルズは仕方なく説明を始めた。


「あの人って、馬鹿なのよねぇ……娘が行くなら俺も行く!って飛び出しちゃった挙げ句、間違って常闇の世界に行ってしまって………もう、イカせてあげるのは夜だけっていつも言ってるのにねぇ」


 「ふぅ」とため息をつきながら感慨深げに遠くを見つめるエルズだが、その言葉にはツッコミどころ満載だった。


「他人の夜の生活に興味ねぇよ!ってか、そいつ馬鹿なのか!?それに娘って……まさかと思うが参戦してるのはリアの親父か!?だとしたら本物の馬鹿だぞ!?」


 思わず怒濤の如くツッコんでしまい、満足げな表情を浮かべながら頷くエルズに浩介の心は罪悪感に呵まれる。


「あら~?やっぱり男の子ねぇ。私の旦那、気になる?あの人ったら夜になるとすごいのよぉ~」


 頬を染めながら「うふっ」などと淫靡な声を出しながら更に浩介を煽ってくる。


「……興味ねぇよ」

 

 そして、浩介は真っ白に燃え尽き撃沈した。


「…馬鹿親子なのじゃ」


 雅の言葉に全員が無言で同意する。


 何処の世界を捜しても余所様の家庭の事情に巻き込まれたがる物好きなどいるはずもない……誰もがそう思っていた。


 だが突如、淡い光を放ちセレスが具現化した。


 彼女が姿を現したことで、今まで他人事であった考えが自分達の身に降りかかることになるとは誰も夢にも思っていなかった。


            *


「主殿……」


 申し訳なさそうに声をかけてくるセレスに浩介は嫌な予感しか浮かばず思わず視線を逸らした。


「今回の戦の元凶が分かりましたわ」


 耳を塞ぐ浩介に対してエルズは愉しそうだった。


「実はですね……」


 聞かなくても分かる気がした。


「エルズさんの旦那様が原因ですわ」


 半ば想像通りの答えに「……やっぱりかぁ」と、その場の空気が一気に残念な感じになってしまった。


 皆、うすうす気付いてはいたが敢えて口に出さなかっただけであり、はっきりと聞いてしまうと正直ゲンナリとしてしまう。


「…だろうな」


 その言葉だけが精一杯だった浩介である。


「…エルズ、どう責任取るのよ。家庭の事情が世界間の問題に発展しちゃってるじゃない!どうすんのよ、ホントに…」


 常闇の世界が侵攻してきた原因、エルズの旦那が「この方法なら理って関係なくない?」の無責任な一言が発端だったのだから目も当てられない。


 元々、精霊とエルフは相性が良いためか昔から交流が盛んだったため、精霊使いの多くはエルフ達が占めていた。


 今回の【扉】を使った侵攻方法は一部のエルフの案である事はうすうす勘付いていたものの、発案者がまさかの中立世界の皇女の旦那とは誰も想像すらしていなかった。


 使役契約された精霊の多さに不審に思ったセレスは理由を付けて浩介から離れると、精霊界で事の真相を調べ始めていた。


 その矢先にエルズから旦那の話を聞かされたのだ。


「ごめんねぇ~、うちの旦那ってば馬鹿だから思ったことを直ぐに実行しちゃうのよぉ……うふふ、でもそんな積極的なところも彼の魅力なのよねぇ」


 恍惚とした表情を浮かべながら話すエルズにその場にいた誰もがドン引きする。


「…あんた、頭にウジでも沸いてんじゃないの?」


 呆れる皐月に照れるエルズが不憫に思えてくる。


 思いつきの案が統治者を動かして世界間の問題に発展しているため、家族の事情などの戯言が通用するはずもない。


「だぁから、頼みに来たのでしょう。浩介はセレスの主人であり、四大精霊の具現化に成功している精霊使いでしょう」


 嫌な予感がほとばしる。


 よくよく考えてみれば、セレスとの主従契約のきっかけを作ったのは紛れもなくエルズである。


 セレスを陥れ、強引に浩介と主従契約を結ばせた。


「…まさか、このためだけに……嘘だろ!?」


 バレたみたいねと悪戯っぽい笑みを浮かべるエルズに驚愕の事実を理解した浩介は唖然とする。


「だって必要だったもの……浩介がセレスちゃんにお願いすれば使役契約の精霊達は契約者の命令を拒否できるし、上位の四大精霊は同じ属性の精霊達を管理することができて一石二鳥……でしょ」


 ニコッと微笑みVサインをするエルズに浩介は唖然としながら頭を抱える。


「…でしょ、じゃねぇよ!?」


 エルズの腹黒さに怒りがこみ上げてくる。


 よくよく考えれば思い当たる節がありすぎた。


 一つ一つを思い出していくとエルズの行動は一貫しており、旦那の話を聞いて全てが繋がった。


 フェンリルの願いも一応は叶えることもできる。


 全てが丸く収まってしまうのだ。


 まさに腹黒女、此処に極めり……だった。


 満面の笑みを浮かべるエルズとゲンナリとした表情を浮かべる他の者達、対照的な両者に溜息しか出てこない。


「あぁ、そうそう忘れてたわ!」


 ポンッと手を叩き思い出したかのようなエルズに「…まだ、何かあるのか!?」と不審げな表情を皆が浮かべる。


「フェンリルちゃんには内緒で解決してね。ホントに世界間の問題になっちゃうから~」


「「おせぇよ!!」」


 皐月と孝介の怒声が虚しく木霊すのだった。 


 

 

読んでいただきありがとうございます。


ブクマ、評価ありがとうございます。


皆様の期待を裏切らないよう努力していきますので今後もよろしくお願いします。

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