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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第三章 汝の魂に安らぎを
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其の6 努力と理不尽

意外とフェンリル良い奴でした


ただ、彼女の努力……不憫です


全て浩介が悪いんです


ではお楽しみください。


「…でっ?何であんな事したの?」


 本来、座るはずでない玉座で足を組みながらフェンリルを冷たい瞳で見下ろす皐月の視線に彼女は震えた。


「…い、いや、あ、あれはですね」


 しどろもどろになるフェンリルは正座をしており、身体は鎖でギリギリと縛られている。


 皇女としての存在感などまるでない。


 しかも、何故かリアは皐月の傍に立っている。


 よほど腹に据え兼ねたようで今回ばかりは、たとえ主と言えどリア自身の意思としてフェンリルは諦めていた。


 ただ、彼女にも明確な理由はあったのだが……それを説明するにはあまりにも信用が足りなさ過ぎた。


 自業自得といえばその通りである。


「…ところであんた引き籠もってたんじゃないの?まぁ、あいつの、業罪の皇女のせいだけどねぇ……」


 小さくため息をこぼしながら額に手を当てる。


 自分自身のもう一人の人格である彼女の存在にため息しか出てこないのは情けないばかりだった。


 実際、神器を引き受けてから皐月は彼女の意識すら感じたことがなく不審には思っていた。


「…その話になると色々と説明をしないといけないのじゃ。われだけで決めて良いことではないからのぅ」


 少し思案下な表情を浮かべるフェンリルに「…うん?」と皐月は先を促すように見つめる。


「…常闇の世界は間違いなく我が世界に侵攻しておる」


 フェンリルの言葉に全員の顔が曇る。


「だが、そんな気配は全く感じなかったぞ。街中も平和そうに感じたし……兵士達も駐留していた」


 謁見の間にくるまでの間、馬車の中から見た街の光景は侵攻を受けているようにはとても見えなかった。


 平和そのもので安堵に胸を撫で下ろしたぐらいだ。


 けれど、フェンリルは沈痛な表情を浮かべている。


「……確かに表面上は平和そのものじゃ。だが、奴らは理の抜け道を見つけ出したのじゃ…」


 理の力、つまりは他の世界では統治者の血脈の力が無効化されるという点でありフェンリルは頭を抱えた。


「……どういうことなの?」


 さすがに皐月も世界を揺るがす事案に興味を持った。


 フェンリルはチラリと浩介を見やる。


「お主、確か精霊と契約しておったの?」


 突然の質問に気を抜いていた浩介は慌てながら頷く。


「…お、おぅ。けど、それがどうしたんだ?」


「使役契約の精霊達が大量に召喚された話を聞いておらぬか?」


 フェンリルの問いに思い当たる節があった。


 この世界にきてセレスが多くの精霊達がこの世界に召喚されていると言っていたのを思い出したのだ。


 てっきり戦の戦力として召喚されたのだと思い、それほど気にはかけていなかった。


「そういえばセレスがそんなことを言ってたけど?それがなんか関係するのか?戦で精霊術士が召喚するのは当たり前のような気がするんだが?」


 浩介の答えにフェンリルは明らかに彼を馬鹿にしたような表情で見つめ大きなため息をついた。


「はぁ、お主は馬鹿か?数百もの精霊を呼び出したのじゃぞ?先の戦でもせいぜい数体が限度じゃった……それが数百じゃ!それにお主達はどうやってこの世界までやってきたのじゃ?」


 フェンリルの言葉に誰もが息を飲んだ。


「精霊の力で【扉】を開いた?」


 浩介の答えに「うむ」とフェンリルは頷く。


「けど、理の力の無効化は?」


 皐月の疑問にフェンリルはため息をつく。


「自分達の世界では血脈の力が使えるのであろう?ならば、術を自分達の世界で発動させて【扉】に投げ込めばどうなる?しれたことよ、他の世界でも術が発動する。しかも、兵士の命を失わずにすむ……被害は相手の世界だけ、これほど効率の良い戦はないのじゃ」


 疲れた表情で説明するフェンリルに、その場にいる誰もが驚きを隠しきれなかった。


「しかも、【扉】はランダムに開かれる。いま、この瞬間にもどこかで襲撃を受けているやもしれぬ……そのための幻覚じゃったのだがのぅ。お主らが見事にハマってしもうて無駄骨じゃ」


 ガックリと項垂れるフェンリルに誰もが言葉をなくす。


 フェンリルの幻覚は受けた者の起きてほしくない現実を見せつけ、その者に仲間殺しをさせる。


 かなり、卑劣な幻覚である。


 だが、戦では卑劣さが仲間を救う。


 一つの世界の皇女としては正しい選択かもしれない。


 現に五護衆であるリアですら仲間である皐月に刃を向けて躊躇なく殺そうとしていた。


「…まぁ、納得はいったわ。【扉】を使って進入する者に対して自動で働く幻覚……仕方ないとはいえ、どうにかならないの?」


 少し鎖の縛りを緩める。


 せめてもの皐月の優しさだった。


「難しいのぅ……精霊界の皇女とでも契約せぬかぎり精霊達を従わせるのは不可能に近いからのぅ」


 首を横に振りながら自分の案に否定的なフェンリルに対して皐月とリアが浩介を凝視する。


「……なぁ、精霊界の皇女と契約してたら問題ないのか?」


 不審げな表情でフェンリルは浩介を見つめる。


「なんじゃお主、皇女と契約でもしとるのか?まぁ、所詮は使役契約じゃろ?今回の場合は主従契約でないと意味が無いのじゃ……皇女が主従契約など結ぶわけもないし無理なのじゃ」


 かなり否定的に自分の荒唐無稽の提案を破棄する。


 現実的に考えて確かに不可能と言えた。


 精霊界を統べる皇女が一個人と主従契約など本来は決してあり得ることではない……ただし本来ならでだ。


 ただ、此処には奇跡的に運よく浩介がいた。


「……セレスとなら主従契約してるけど?」


 さらっと言った浩介の発言にポカァーンとだらしなく口を開け、彼を見つめるフェンリルの蓬けた姿があった。


「えっ?なんでじゃ?ありえんじゃろ?精霊界の皇女じゃぞ?そこらの精霊と違うのじゃぞ?しかも、主従契約じゃぞ?」


 信じられない様子で続けざまに質問するフェンリルに対して浩介は苦笑いしながら頷くしか出来なかった。


 正直に言って運が良かったとしか言いようが無い。


「…うん、主従契約してる。あと、言いにくいけど四大精霊も顕現して使役してる……うん、全員」


 浩介の説明にフェンリルは瞳を見開き声を上げる。


「はぁぁぁぁぁ!?」


 その叫び声に皐月もリアも苦笑いするしかなかった。



読んでいただきありがとうございます。


ブクマ、評価ありがとうございます。


(*´ω`*)


今後とも宜しくお願い致します。


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