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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第三章 汝の魂に安らぎを
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其の5 悪逆皇女フェンリルの弱み

フェンリルの容姿と名前で想像つくと思います。

……そうです。

九尾とフェンリル最悪の組み合わせですね~。

神殺しと国滅ぼし……

まともなはずがありません。

けれど、弱みもあります。


そんな弱みのお話です。


ではお楽しみください。





 いま、謁見の間でリアを筆頭に皐月と浩介は一歩下がった位置で床に膝を付き頭を垂れていた。


 統治者との謁見ということで武器の類い、指輪と【八咫烏の太刀】はニルに預けているためこの場にいるのは三人だけだった。


 高い位置にある玉座に座り、足をブラブラとさせながらフェンリルは退屈そうに謁見を申し出た浩介達一行を見下ろしている。


「…なにをそんなに怒っているのじゃ?幻覚についてか?あれはお主らが未熟じゃったから嵌められたのじゃぞ?」


 膝をつき最大の敬意を持って接していたリアの拳がプルプルと震え「…この、馬鹿主が!」と苦々しく呟く。


 自らの手で皐月を殺してしまうところだったのだ。


 リアの怒りは当然のことと言えた。


 浩介達にとって、この世界の統治者であるフェンリルとの出逢いは最悪だった。


 特に悪質きわまりない幻覚に、守護者であるリアですら主に対してかなり憤慨していたが、怒りに震える彼女を冷たい視線で一瞥するとフェンリルの怒声が響き渡る。


「未熟者が!もし、あれが現実であったならばお主は五護衆としての矜持すら忘れ、全てを滅ぼすつもりかぇ!!現にお主は味方を自らの手でその命を絶つところじゃったのじゃぞ!」


 リアはチラリと皐月を見つめ、その喉元に薄らと残る刃の痕に怒りは成りを潜め、自分の未熟さに項垂れてしまう。


 確かに、フェンリルが止めなければ今頃、皐月はこの世に存在しなかっただろう。


 けれど……と浩介は思った。


「…あれは酷すぎないか?」


 思わず口に出していた浩介をフェンリルは「…ふ~ん、お主か」と興味深げに翡翠色した瞳が彼に向けられる。


「我が世界の神器に認められし者か……ふむ、男に興味はないが酷いとは聞きづてならんのぅ。我の守護者を此処まで追い詰めたのは貴殿にも責任があることじゃからな」


 痛いところを彼女に突かれ浩介は眉間に皺を寄せる。


「早い段階でグレンデルの力を使っていれば、自分の置かれた状況を把握できていたはずじゃ。さすれば誰一人苦しむこと無く、この場に辿り着けたはずじゃが?はて、はて?我の考えは間違っておるかのぅ、浩介殿?」


 わざとらしく小首を傾げながら浩介に問いただす。


「…いや、間違っていない」


 フェンリルの言葉は正論だった。


 警戒を怠らなければ、グレンデルの力を最初から使っていたなら、こんな事にはならなかったはずだった。


 その言葉にフェンリルはしてやったりとニンマリと口許を緩ませ勝ち誇ったように笑う。


「ふふふっ、お主らはホントに未熟者よのぉ」


 その高笑いに「ブチッ!」と何かがキレる音と共に誰かの怒りが頂点に達したのを感じた。


 誰なのかは言うまでも無かった。


 皐月である。


 彼女は徐に立ち上がり両手に力を込め手元から鎖を出現させると、それらはジャラジャラと音を立て這うように広がっていく。


「ったく……黙って聞いてれば、言いたい放題いってくれるわね?アンタの、その腐れ獣耳と尻尾を引き千切ってやろうか?…あぁん、フェンリル?…私を誰だと思ってんの?」


 その巻き舌の怒声にフェンリルの獣耳と尻尾がピンっと逆立ち、その瞳が虚ろになっていき先程までの高笑いと余裕が消えていく。


 身体中から嫌な汗が流れ手足はブルブルと震えている。


 ジャラジャラ!


 その音に何故か安心する浩介とリアは目を合わせる。


 〔うん、キレてるね………〕


 普段とは勢いが違う鎖の動きに二人は項垂れた。


 〔…死んだな〕


 ゴンッ!ギュッ!!ガタ、ガタ、ガタ。


 鎖に縛られ、玉座から引きずり下ろされ階段で容赦なく頭を打ち付けられビクビクと痙攣するフェンリルに先程までの威厳や余裕はもはや微塵もなかった。


「お、おぬし、我はこの世界の統治者、お、お、皇女で在るぞ。それを縛るなど………ごめんなさい」


 フェンリルは自分を見下ろす皐月の冷たい視線を避けるように俯きながらガタガタと震え出し即座に謝る。


 威厳もへったくれもない、命あっての物種である。


 本能が生存を優先させる。


 その触り心地の良さそうなモフ耳はシュンと垂れ下がり、フサフサの九尾は股の下に震えながら隠れている。


「…あんたこそ、分かってんの?帝の代理である私の柔肌に傷つけた意味……高くつくわよ。そうねぇ……1回、死んでみる?」


「……なっ!?」


 満面の笑みを浮かべながらギリギリとキツく縛りあげていく皐月の表情に青ざめるフェンリル。


 それを見下ろす瞳は笑っていなかった。


 フェンリルの脳裏に走馬燈が過ぎる。


 確実な死が迫ってきている……なぜなら、皐月の殺意に満ちた瞳が彼女にマジだと告げていたからだ。


「われが悪かったのじゃ~!!ゆるしてくれぇ~!われはまだ死にとうなぃ~!」


 とうとう、泣き出したフェンリルを冷たい視線で見つめていた皐月の表情は笑顔から無表情な顔へと移り変わり睨みつける。


「泣くぐらいなら最初からすんじゃないよ!アンタの悪ふざけは昔から悪質すぎるのよ!今度やったらマジで殺すぞ!この糞ガキがぁ!分かってるの!返事はぁ!」


 グリグリとフェンリルの頭を容赦なく踏みつける皐月の姿に誰もが無言となり……否、ドン引きだった。


「は、はいっ!皐月お姉様!お、お許しくださぁい!」


 一つの世界を束ねる皇女が恐怖に打ちひしがれながら綺麗な土下座をする光景に「……部下がいなくて良かった」とつくづく安堵するリアであった。


 とてもでは無いが部下達には見せられない姿であった。




読んでいただきありがとうございます。


徐々にでは在りますがブクマが増えてきており、読者の方には感謝に堪えません。


今後とも宜しくお願い致します。

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