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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第三章 汝の魂に安らぎを
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其の4 虚構の血脈

ようやくリアの主登場です


ただ、今までの登場人物の中で


断トツに、狂ってます


必要なんで書きましたが………


とりあえず、お楽しみください




 なにが起きたのか分からなかった。


 大地を蹴る激しい衝撃音に足取りを止めた浩介達は迫り来る存在の気配に嫌な予感を禁じ得なかった。


 遙か彼方にいたはずのリアが目前に迫っているのだ。


 刃を握った手をダラリと伸ばしながら大地を踏みしめる音だけが徐々に近付いてきてることを知らせている。


 神速の域に達しているリアの姿は残像だけが辛うじて三人の目で認識することが出来た。


〔…主殿、リアの刃が泣いているのじゃ。彼奴は精神を操られ妾達を認識できておらん〕


 迫り来るリアの深い闇に満ちた瞳に雅は哀しげな口調で彼女の愛剣等の悲痛を感じ取り嘆いていた。


「……俺等で止めれる自信がないんだが」


 先程のリアの剣舞を見ていた浩介が呟く。


 味方としては心強いが敵になった場合、これ程の恐怖はない。


 狼狽する浩介達の目前でリアの口許が微かに歪むのを見た。


 その表情は獲物を捕らえた獣のようであった。


 為す術もなく皐月の乗った馬の首がリアの刃によって切り落とされ地面に崩れ落ちる。


 全てが一瞬で浩介もニルも何一つ反応できない。


 痙攣しながら倒れる馬から投げ出された皐月に刃を向けるリアに気付いた浩介は太刀を引き抜く。


「リア!!やめろぉー!」


 浩介は叫びながら馬上から飛び降り、駆け出した……けれど、間に合うはずもなかった。


「……り、リア?」


 そのまま地面に投げ出された皐月の首元に流れるような動作でリアの無慈悲な刃が添えられる。


 彼女が手首を捻るだけで皐月の死が確定する。


「……フェンリル様?」


 何かに気付いたのか薄皮一枚で刃の動きがピタリと止まる。


 薄らと滲んだ血が刃を染めた。


「リア?」


 皐月の声が恐怖で微かに振るえている。


「…フェ…リル…様?」


 何かを呟きながら糸の切れた人形のようにリアは力無く地面に崩れ落ちた瞬間、皐月の姿に気付き驚愕するが直ぐに意識を失った。


              *


「…なんだったんだ?」


 意識を失ったリアを介抱しながら浩介は呟く。


 リアの身に何が起きたのか分からないまでも、彼女が皐月の命を奪わなかったのがせめての救いだった。


 もしも……あのまま、リアが剣を振るっていたら彼女は自責の念で自ら命を絶ったかもしれない。


 けれど、何かが彼女を止め意識を失わせた。


〔主殿、此奴の刃共と話しがしたいのじゃが……〕


「…あぁ、俺達も何が起きたのか知りたい。雅、出てきてリアの剣と話をしてくれるか?」


〔…わかったのじゃ〕


 腰に履かれた太刀が浩介の前で具現化する。


 哀しげな瞳を浮かべながら雅は血の付いた刃を自らの裾で丁寧に拭うと優しく愛でた。


「お主等もつらかったのぅ……すまんのじゃが、お主等の主の身になにが起きたのか妾に教えてもらえぬか……」


 そっと、二振りの剣を胸元で抱きしめ瞳を閉じる。


 淡い紫色の光が二振りの剣を包み込むと浩介の意識に聞き慣れぬ声が聞こえた。


〔……わたしはルーブ、お袖を汚し申し訳ありません〕


 凜とした声に戸惑いがあったルーブと名乗った一振り目の剣は先ず雅に謝罪した。


 ルーブは皐月の喉元に刃を向けた剣だったからだ。


〔わたしはキーブ、お会いできて光栄です〕


 哀しげで儚い口調で挨拶するもう一振りの剣はキーブと名乗り、戸惑うルーブを心配していた。


 どうやら二振りの剣が雅に挨拶をしたらしい。


「……ルーブにキーブじゃな。良い面構えをしておるな。リアが大切に扱っておるのは妾も喜ばしいのじゃ……それはいいとして、お主等は何を見た?リアは何に支配されたのじゃ?」


 二振りの剣が黙る。


 息を飲み意を決してルーブが呟く。


〔……闇です〕


 震える声で答えるルーブに雅の表情が険しくなる。


 予期はしていたがリアですら飲み込まれてしまう闇、それだけの力を保持できるのは多重世界で一人しかいない。


 常闇の皇子が関与したことは明白だった。


 だが、他世界で血脈の力を行使することは出来ない。


 そのための異世界の住人達なのだ。


「…なぁ?他世界で他の血脈の力を使うことは可能か?」


 浩介は刀剣達の会話を皐月に説明しながら質問した。


「……不可能ね、中心の世界の干渉なしには無効化される……けど、そうねぇ。統治者が力を失ってしまったら可能になるのかもしれないわね……まぁ、不可能でしょうけど」


 統治者の力を失うことができれば、その世界の血脈は途絶えたことになり他世界の血脈の力が関与できるのかもしれない。


 けれど、それが出来たのならば三百年もの争いが続くことはなかったのだ。


 あくまで可能性があるということだけだった。


〔主殿が何かの気配に気付き私達を構えました〕


 ルーブが話し始める。


〔…森を抜けた先の小高い丘で主殿は何かを植え付けられました。私達は見ることは出来ませんが感じることは出来ます……主殿が見た光景が引き金になったようです〕


 キーブが補足する。


 その説明を皐月にしていると周辺を斥候に出ていたニルが戻ってきた。


「…戻りました。この近辺に敵の気配は感じられません。あと先程、言われてました小高い丘でこれを見つけました」


 斥候に出ていたニルはリアの足取りを追い、小高い丘で何かを見つけたらしく皆の前に粉砕された指輪らしきモノを差し出した。


〔それ…風の指輪…幻覚、見せる…強力〕


 ニルが差し出した指輪にシルフィが答えた。


「風の指輪か…どんな幻覚を見せたか分かるか?」


 皐月とニルは指輪の名を聞き怪訝そうな顔をする。


 なぜなら、基本的に精霊の祝福を受けたモノが粉砕することはあり得なかったからだ。


 ただし、祝福した精霊の意思を無視した使い方をすれば精霊との契約を破棄することになり破損することはある。


 目の前にあるのは粉砕した指輪……精霊すら嫌悪する幻覚に二人は嫌な予感を隠しきれなかった。


 考え込んで無言だったシルフィが浩介に声をかける。


〔…具現化…していい?〕


「…あぁ、いいよ。顕現せよ、シルフィード」


 指輪から光が放たれシルフィが顕現する。


 だが、彼女の瞳は哀しげに指輪を見つめていた。


「…この子…ツラかった…だから命を絶った」


 そっと指輪を抱きしめる。


「…主従契約…契約者、死ぬか、破棄するまで…従う…けど…この子、命、絶って拒否した……残酷、ホントに観るの?」


 三人は目を見合わせ小さく頷く。


「…分かった…手、繋いでて、お願い」


 小さくか細い手を浩介は優しく握りしめる。


「うん…じゃ…みせる、でもホントに残酷、覚悟して」


 シルフィは片手で指輪を抱きしめ意識を集中すると三人の意識にリアに見せたあの皇都の映像を具現化した。


「…うっ、うぐぇぇ」


 その瞬間、死臭、阿鼻叫喚、憎悪、五感全てを刺激する幻覚に浩介は視線を逸らし堪えきれず嘔吐した。


「…ひ、酷すぎる………うっ!」


「いゃあぁぁぁ!!」


 皐月も林に駆け出し涙を流しながら嘔吐し、ニルは顔面蒼白で奇声を発しながら頭を掻きむしっている。


「……もういい」


 浩介の声にシルフィは映像を即座に遮断する。


 彼女はツラそうに目を伏せ、涙している。


「……ごめん。ツラかったな、シルフィ」


 感情にまかせ思い切り抱きしめてやった。


「……あんなのイヤ…この子…可哀想」


 シルフィにはあの映像だけでなく映し出していた精霊の感情も読み取ったらしく浩介の裾を掴み、声を上げて泣いていた。



            *


 幻覚の影響か三人の顔は蒼白のまま項垂れていた。


 あれではリアでは堪えることが出来ないだろうと浩介は未だ意識を失っている彼女を見つめる。


「…あの幻覚を見せて闇を心に植え付けるなんてサイテーな奴だな。堪えられるわけがない……くそっ!」


 拳を地面に叩きつける。


 不安げな様子でシルフィが浩介を見つめる。


「あんたはぁ~!精霊に心配させるな!ところで、ニル?小高い丘から皇都は見えたの?」


 シルフィの頭を撫でながら浩介に叱咤する皐月は思い出したくもない小高い丘の光景を振り払うように首を振りながら尋ねた。


「……いいえ、あの場所からでは皇都を一望することなどで出来ません。まだ、距離がありますから……」


 それはリアなら知っていて当然の知識だった。


 けれど、彼女はその場所なら皇都が見渡せると確信を持っていたということになる。


「何時からだ……」


 それが問題だった。


 もし、リアだけでなく自分達も幻覚を見せられていたのではないかと浩介の脳裏に疑問が過ぎった。


「…この子…記憶、見た…敵……いなかった」


 シルフィの言葉に全員が驚愕する。


「ま、まってシルフィ……じゃあ、リアが倒した敵って……」


 シルフィは小さく頷く。


「…存在…しない…私達、だけじゃない…雅様…も、見てた」


 精霊だけでなく神剣である雅まで騙していた。


「妾もなのか!?……信じられんのじゃ」


 瞳を見開き信じられない様子で呟く。


 長い年月を戦場で生きてきた雅の感覚まで騙すことは並の者では不可能に近く、幻覚では必ずどこか術者の癖が出るはずなのだが違和感を全く感じさせない幻覚……。


 哀しげな瞳でシルフィは指輪を見つめる。


「…だから、この子、心……病んだ……利用された」


 シルフィの瞳から大粒の涙が溢れる。


 彼女を浩介は優しく抱きしめながら頭を撫でる。


「…ありがとうな、もう大丈夫だ」


 泣き続けるシルフィを優しく見つめながらも、雅ですら騙すことの出来る者の存在に背筋に寒気が過ぎるのを感じた。


 今ですら幻覚の範疇なのではないかと疑心暗鬼になる自分を戒めながら浩介はあることを思い出した。


 シルフィを優しく撫でながら瞳を閉じて意識をグレ記憶に直結させると帝の血脈の力を呼び起こす。


 他世界での血脈の力は無効化されるが唯一、その理に抗える方法がある。帝の血脈の力である。


 帝の血脈は全ての血脈の本流であり理に左右されない。


 帝の血脈を身に纏い浩介は色の違う両眼を見開き、気付かれぬように周囲の記憶を辿っていく。


 林の奥で何かの意識を感じた。

 

「…シルフィ、このまま聞け」


 シルフィを抱きしめながら耳元で囁かれるいつもと違う口調の浩介に彼女は何かを察しコクリと頷く。


「…俺の見ている光景をシルフィにも見せる……敵を討て」


 瞳を閉じてシルフィに自分が見ている光景を共有する。


「……この子の仇、討つ!出でよ、我に従いし風の民、我の命に従い敵を討て!静かなる沈黙(クィエットサイレンス)!」


 浩介に抱かれながら小さく詠唱を呟き終えると、相手をキッと睨みつけ片手を向けた。


 その瞬間、相手は苦しそうに喉元を押さえながら口をパクパクとさせて悶え苦しむと力無く地面に倒れた。


「…アイツの周りの、空気、全て、吸い出した……苦しめば良い。この子の、苦しみ、それ以上だったから……」


 指輪を抱きしめシルフィは愛おしそうに撫でる。


「なにがおきたのですか?そ、それにその目は?」


 シルフィによって倒された何者かに視線を移したニルはすぐに浩介の瞳の異変に気付き驚いた表情を浮かべる。


「そういえば、ニルには見せたことなかったんだっけ」


 苦笑しながら瞳を元に戻し説明すると「…あははっ」と何故か乾いた笑いをニルは浮かべていた。


「っで、あれが首謀者なのね……」


 目を見開き苦しみに喘ぎながら窒息死した相手を嫌悪感に満ちた瞳で皐月は見つめる。


「あぁ、まだ俺達は幻覚の世界にいたみたいだ……」


 浩介の言葉にグニャリと景色が歪む。


 次の瞬間、舗装された煉瓦造りの街道に佇んでいた。


「…………」


 誰もが言葉を失い茫然と立ち尽くす。


「シルフィ、お前も騙されていたんだ……セレスですら騙されていたから仕方がない……最初からだったんだよ。俺達が見たフェンリルの騎士達の亡骸も……全て幻覚だったんだ。俺達はこの世界に降りたってから一歩も動いてないんだ」


 浩介の説明に誰もが理解できないでいた。


「……で、でも……誰が?」


 皐月が信じられない様子で呟く。


「……はぁ、悪趣味にもほどがあるよな。一人しかいないだろ?精霊界の皇女や雅まで幻覚で騙せる奴なんてな」


 帝の血脈の力で過去の記憶、全てを見通した浩介は深いため息混じりに「…ホントに趣味が悪い」と呟きながら倒れている者を指差すと窒息死した相手がムクリと何事もなかったかのように起き上がる。


 服の汚れを払いながら微笑むとグニャリと姿を変えた。


 白銀の髪を肩まで伸ばし、透き通るような白い肌を露わにしながら大きめの翡翠色した瞳を持つ少女が楽しそうに微笑んでいる。


 その容姿のもっとも特徴的なモノは頭に獣耳を生やしピクピク動かし、お尻にはフサフサとした九本の尻尾が愉しげに揺れていた。


「ようこそ、我が世界へ」


 満面の笑みと悪女じみた口調で彼らを歓迎する少女、フェンリルはただ満足そうに彼らを見つめるのだった。


読んでいただきありがとうございます


ブクマ、評価もらえるとうれしいです


今後とも、宜しくお願い致します


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