其の2 不謹慎な乙女心
やはり、少しはギャグをいれたい
タイトルから察して下さい……
では、お楽しみください
皆がリアの剣技に魅了されていたが彼女を捉えることが出来ない中で雅だけは彼女の動きを目で追うことができていた。
その視線はリアの握る二振りの剣に向けられており、周囲の敵を一掃し終えた彼女は刃を拭うことなく鞘に収めた。
普通の剣であれば拭わなければ血飛沫によって錆びつき切れ味も格段に悪くなる。
けれど、リアの使っていた剣は二振り共に刃こぼれ一つ無く、血飛沫すら彼女の神速の剣技により刃を拭う必要性がないほどであった。
「見事な剣技じゃったのぅ。リアに使われるその刃達は幸福者じゃ」
瞳を細めリアを褒める雅に彼女は微かに微笑む。
雅の視点はリアの持つ刃に向けられ彼女にしか理解できない感情を持って見つめられていた。
実務に特化した両刃の剣は誇らしげに鞘に収まっている。
「神剣に認められて、この子達もきっと喜んでるわ」
愛剣の柄を優しく撫でながら雅に軽く一礼した。
リアは自分が守護する世界にきてからその雰囲気は明らかに変わったように見えた。
それは仕方のないことかもしれない。
多くの仲間を失い、彼等を守護する立場にあったリアにとって今は、リア個人ではなくフェンリルの騎士、五護衆のリアとして責務を果たすためにこの戦場に立っている。
どれだけの敵を葬っても彼等は戻ってこない。
その無念さを一身に背負い、リアは周囲を見渡す。
戦火を交えてそう、時間は経過していない。
「…この場所だと皇都までほ大して距離がないわね。こいつらが後方部隊の斥候なら本隊は今頃、皇都に侵攻中か……」
リアの脳裏に最悪の現状が過ぎり眉間に皺を寄せた。
かなり、芳しくない状況だった。
「今から向かえば間に合うわよ……急ぎましょう、リア」
皐月がリアの肩を叩くと彼女も小さく頷く。
「わたくしたちは主殿の指輪で待機、致しますわ」
具現化された状態でのセレスと四大精霊は浩介の体力と精神を常時、摂取しなければならない。
その事を懸念したセレスの提案だった。
「そうね、その方が良いかもしれないわね。いざという時にアンタがぶっ倒れたらせっかくの戦力も意味をなさないからねぇ……」
ジト目で見つめる皐月に昨日の件で心配をかけた浩介は身体を小さくしながら申し訳なさそうに項垂れる。
「…悪かったよ。身の丈に合ってない行動だったと反省してるよ…あっ、あと看病してくれてありがとな」
浩介の感謝の言葉にプイッと視線を逸らしながら呟く。
「ま、まぁ反省してるなら良いのよ。倒れられるという私が困るから、ただそれだけだからね!」
その横顔は耳まで真っ赤になっていた。
「わたしも!わたしも、看病したぁ!」
サラが元気よく手を上げながら浩介に向かってくる。
「あ~ぁ!サラちゃん、ズルいですわ!」
抜け駆けしたサラを追いかけディーネも近づく。
「…ノ、ノーミも…か…看病した」
「した…」
言葉数の少ないノーミとシルフィの二人も浩介の周りに纏わり付くように近付いてくる。
「うん、ありがとうな。皆のおかげで元気になれたよ」
それぞれの頭を優しく撫でてやると皆、嬉しそうな笑顔で浩介に抱きついてくる。
「ホントにすっかり懐かれたわね。ここまで精霊がアンタに懐くなんて思ってもみなかったわよ」
精霊達に揉みくちゃにされる浩介を呆れ顔で見ながら皐月は少し微笑みを浮かべていた。
少しだけ張り詰めていた空気が和らいだ気がしたからだ。
「貴方達、いい加減にしなさいな。指輪に戻りますわよ……では主殿、わたくしは精霊界にいったん、戻ります。彼女達は指輪で待機させますので何かあればお呼び下さい」
母親のように四大精霊に指輪に戻るように促すセレスに「やだぁ~」、「そうですわ」「…ノーミ…いたい」、「…残る」等とブツブツと文句を言いながらも静かな口調で放ったセレスの「…帰りなさい」の一言ですぐに従う辺りが可愛らしい彼女達だった。
「じゃあねぇ!」
「失礼、致します」
「…ノーミ…帰る」
「バイバイ…」
浩介に別れを告げるとそれぞれが光の球体となり指輪へと吸い込まれるように消えてゆく。
指輪が小さく光を放ちながら形を変え、四種類の色の異なる宝石が四隅に現れ、その中心には翡翠色した少し大きめな宝石が姿を現した。
「その宝石が彼女達ですわ。指輪をしているかぎり彼女達と意思疎通も出来ます……では、失礼しますわ」
説明し終えるとセレスは優雅にお辞儀をして姿を消した瞬間、浩介は身体が極端に軽くなったように感じた。
「なんか、えらく身体が軽く感じるな……」
「それはそうじゃろ、今まで四精霊を具現化し続けておったからな。それだけ負荷が掛かっていたのじゃろ。妾も太刀に戻るから更に身体が軽く感じるはずじゃ……主殿、おやすみなのじゃ」
口許に手を当て小さく欠伸をしながら光り輝くと浩介の腰に太刀が姿を現した。
「おぉ!?身体がえらく軽くなったな」
浩介は身体の状態を確認するように腕を回し屈伸する。
「後はどうやって向かうかよね……リアは問題ないとしても私達はついて行けないし……」
考え込む皐月にニルが二頭の馬を従えてどこからか戻ってきた。
「リア様が滅した彼等から失敬したのですが……私の見る限りでは、この二頭は比較的、速そうでしたので連れて参りました」
何故かニルに懐いている二頭の馬を優しく撫でながら微笑む彼女に皐月は呆然とする。
「仕事が速いわね……」
「皆様の従者ですから」
ニルは当然のように皐月に答える。
「急ぎましょう。嫌な胸騒ぎがする……時間が惜しいわ。私は先に行くから後から付いてきて」
皇都の方角を見つめながらリアは険しい表情を浮かべると大地を踏みしめ勢いよく走り出した。
「ちょ!?リア!あ~ぁ、もう。私達も急ぎましょう……って、なによ!この忙しいときに!」
ニルから手綱を受け取り馬に跨がる皐月に浩介はおずおずと手を上げ、二人を見つめながら小さく呟いた。
「…俺、馬に乗れないよ」
「……」
無言になる皐月に何故かニルは頬を赤らめる。
「…大丈夫ですよ、私はそのためにいますから。そ、その私の、か、身体に掴まって頂ければだ、だ、大丈夫です」
少し恥ずかしそうなニルに二人は首を傾げるものの、我に返った皐月がいち早く声を荒げる。
「なら、ニルはこいつをお願い!あ~ぁ!ったく、リアってばもうあんなとこまで走ってるじゃない。五護衆ってどんだけ人外じみてるのよぉ?」
既に遙か彼方を走るリアを見つめため息をつきながら手綱を握りしめ追いかけるように走り出す。
「で、では、わたしたちもまいりましょう。私の背中につ、つ、掴まってく、下さい」
ギクシャクしながら馬に跨がると浩介に手を差し伸べ、背中に誘導すると彼の手を自分の腰に回すよう促す。
「…ごめん。迷惑かけるけど宜しく。ニル」
背後からの浩介の声にニルはビクッと身体が跳ねると少し顔を後ろに向けコクリと頷く。
「ひゃ、ひゃい。わかりました。かなり飛ばしますから、し、しっかり掴まっていて下さい。」
言われた通りに浩介はニルに密着するように掴まった。
それに反応するかのように「ひゃあ!?」と奇妙な声を上げたニルだったが表情を隠すようにスカーフを目元まであげ、帽子を深々と被り直すと手綱を握りしめ前を見つめた。
「ではまいります」
浩介に声をかけ勢いよく馬を走らせ、風を切るように戦場跡を駆け抜け皐月の後を追いかけていく。
ただ、何故か微かに見える耳が真っ赤に染まっていたのだった。
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