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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第三章 汝の魂に安らぎを
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其の1 騎士の誇りを胸に抱き……

第3章に入ります


この章はリアがメインとなります


今までのおふざけリアは姿を消し


一人の騎士として物語が進みます


………たぶん


ではお楽しみください

 時空の裂け目を抜けた浩介達の瞳に飛び込んできた周囲の光景に全員はただ呆然と立ち尽くすしか出来なかった。


 種族も様々な幾百もの屍の山、元は美しい森林地帯であったろう場所が変わり果てた地形となり争いの壮絶さを無言で語っていた。


 目を覆いたくなるほどに足の踏み場もない死臭漂う戦場でただ立ち尽くす浩介達とは違い、リアの瞳は怒りで今にも爆発しそうだった。


「……酷すぎる」


 皐月は両手を口に当て愕然としながら震える声で呟く。


 焼け爛れ苦悶の表情を浮かべた者、身体の一部を引きちぎられた者、誰一人として苦痛から逃れられた者はおらず、死臭と共に怨嗟の念が周囲に充満し重い空気を作り上げていた。


 雅は戦慣れしているためか冷たい視線を浮かべ平然と周囲を見渡しているが目の前の光景に目を背けるニルは彼女を握る指先が小刻みに震えていた。


「ニル、戦場はいつもこのようなものじゃ。慣れろとは言わぬが恐れてはならぬ……恐れた者から命を堕とすからのぅ」


 幾千年もの月日を生きた雅の言葉には重みがあり、いつもと違う雰囲気にニルはなんと答えて良いか分からず言葉が詰まる。


「雅様、わたしは……」


 雅は小さく頷くとニルの手を優しく握りしめる。


「うむ、良いのじゃ。ニルのその感情こそが本来は正しいのじゃ……じゃがのう、この惨状はあんまりなのじゃ」


 雅の眉間に皺が寄る。


 圧倒的な殺戮、その言葉が適切だった。


 周囲を見渡す限り目に映る屍は同じ紋章を掲げている者達であり、その紋章はリアの襟元にも刺繍されている。


「ここまでなんて……あり得ない」


 リアの口許が震えていた。


 自分が守護する世界の戦力を自覚しているリアにとって決してあり得るはずのない惨劇、そして間に合うことの出来なかった自身への自責の念に握りしめた拳が震える。


「リア殿、彼等をこのまま放置するには余りに不憫ですのでわたくしどもで弔ってあげたいのですがよろしいでしょうか?」


 時空の裂け目を塞ぎ終え、具現化したセレス達が怒りと悲しみに暮れるリアに声をかける。


「……お願い、彼等の魂を眠らせてあげて」


 唇を強く噛みしめていたリアが小さく頷いた。


「分かりましたわ。貴方達も協力しなさい」


 四大精霊も余りの惨劇に哀しげな表情を浮かべながらセレスの言葉に真剣な瞳で強く頷く。


「…それではまいりますわ」


 セレスと四大精霊は瞳を閉じて胸元で両手を組み、それぞれが意識を集中し始めると彼女達が淡い光に包まれる。


「精霊界を統べる我とそれに従属する者達よ、我に従い、我の声を聞け、我の祈りを全ての彷徨う魂に捧げ、永遠の安息を彼等に与えよ………」


 セレスと四大精霊が淡い光から温かな波長を生み出し波紋のように周囲に広がっていき全てを包み込んでいく。


「…永遠の安息(エターナル・セレクト)


 包み込んでいた温かな波長の波が一気に集束し、光の柱となって彼等の魂と共に天高く立ち昇っていった。


「彼等に安らかな眠りの在らんことを……」


 セレスの言葉に全員が瞳を閉じ黙祷を捧げた。


 それぞれが護りたいモノの為に戦い命を散らした。


 先の争いで血を血で洗う地獄の刻を過ごした経験のある者達は彼等に安息が訪れていてほしいと強く願っていた。


 光の柱が終息し、死臭と怨嗟の念が立ちこめていた場が優しさに満ちた空気に包まれていた。


「彼等の魂は天に昇り安らかな眠りにつけましたわ」


 あれだけの魂を浄化させたセレスは少し疲れた口調ではあったがどこか安堵の表情を浮かべていた。


「…ありがとう、皇女セレス、そして四大精霊の方々。彼らも苦しみから解き放たれる事ができ感謝していると思います。この世界に生きる全ての者を代表してお礼を言わせて貰います」


 セレスと四大精霊を真摯な瞳で見つめたリアは腰に取り付けていた二本の剣を抜き取り交差させ地面に突き刺すと徐に膝を折り、深々と頭を下げて感謝の念を彼女達へと向けた。


 その一連の洗練された所作は美しく、騎士としての誇りを感じさせるものでリアの【フェンリルの騎女】の名に恥じぬ行為だった。


「汝の謝意、確かに承りました。顔を上げ、彼等に恥じぬ騎士道を汝の護るべき者に尽くしなさい。それが彼等の生きた証であり名誉を重んじることに繋がります」


 セレスは皇女としてリアは一人の騎士として接した。


 その光景は見るもの全てを魅了する。


 だが、その雰囲気を不穏な空気が破壊した。


 突如、出現した天を貫く光の柱に反応した者どもが周囲を切り裂く怒声となって響き渡ったのだ。


「貴様ら何やつだ!」


 多種多様の人種の者達が怒声をあげ浩介達に近付いてくる。


 味方ではないことは直ぐに分かった。


 恐怖と殺意を浩介達に向けているからだ。


 神聖な場を乱した一団にリアの瞳が冷たく光った。


 彼等の掲げる紋章を一瞥したリアはセレスに「…失礼します、皇女殿下」と声をかけると地面に突き立てた剣を強く握りしめ引き抜きながら起ち上がった。


「貴様らか…貴様らが、我が主の世界を蹂躙する輩はぁ!」


 リアが叫んだ。


 今まで見たことのない殺気に充ちた気配を身に纏い、リアは大地を蹴り彼等に向かい飛び出した。


 その瞬間、衝撃と共に大地が揺れた。


 リアの憤りに賛同するが如く、大地は揺れ、大気が震えた。


「うおぉぉぉ!!」


 リアが吠える。


 怒りと憎しみに満ちた雄叫びと共に彼女の持つ刃が華麗に宙を舞い、刃を向けられた名も知らぬ者達は自らの置かれた状況に気付く間もなく一人また一人と命を散らしていく。


 その姿は鬼神の如く勇ましくありながらも、その剣舞は見るもの全てを魅了するほど美しかった。


「…五護衆の真の力」


 皐月が呆然と呟く。


 先の争いで世界間を脅かし【フェンリルの騎女】の異名を与えられた力を目の当たりにした浩介達は言葉を失った。


 敵を切り裂く剣先の動きが目で追えなくなるほどの早さに達し、まるで一陣の風が吹き抜けていくようだった。


 キンッ。


 刃を鞘に収める音が響いた気がした。


 全身が返り血に染ったリアの周囲には生者はおらず、語る術を持たぬ肉片が散らばっていた。


「…仇は討ったわよ。我が同士達…安らかに眠りなさい」


 天高くを見つめリアは哀しげに仲間達に呟いた。



読んでいただきありがとうございます。


これからも宜しくお願いします。

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