其の12 母娘の繋がり
久々の連投です。
お気づきの方もいるとは思いますが
エルズの家名が誰かと一緒です
いつものように身体を鎖で縛られ床に正座させられた状態の浩介、それは皐月を怒らせた結果なのだがかなり理不尽だと本人は思っていた。
なにせ、初対面の女性にいきなりキスされたのだから不可抗力なんだ!……と考えていた浩介であったがよくよく考えてみればリアの時も同じだったなと思いだし項垂れる。
「…エルフ族には痴女しかいないのか」
項垂れながらも正面に座るエルズを思わずチラ見してしまう辺り浩介の節操のなさもなかなかの物だと言えた。
「やっぱ、すげぇな……あの胸」
思わず呟いた声を皐月に聞かれキッと睨まれる。
「あんた、どんだけ節操が無いの?反省しなさい!」
怒鳴りながら手元の鎖を軽く引っ張る。
「ぐぇ!?……ごめんなさい」
浩介は身体を絞め上げられ情けない声を出した。
皐月の正面のソファの背もたれに両手を投げ出し優雅に足を組むエルズが、そんな二人のやり取りを楽しそうに見つめていた。
「浩介、悪かったなぁ~。だが、美味しかったぞ」
悩ましげに舌を出し唇を舐めるエルズの仕草に少し離れた場所に座るニルは深々と帽子を被り目元近くまでスカーフで顔を覆い隠しながら小声で呟いた。
「…楽しんでる…絶対わざとね…嫌な予感しかしないもの」
好き放題やっているが最後には後始末をやらされるのが目に見えているニルは常識人に良くある胃の痛みを感じていた。
「なんだか、すっごい格好じゃのぅ?特に胸元は、はち切れそうではないかぁ。おぉ~!すごい柔らかいのじゃ!」
エルズの傍に座り足をブラブラさせながら彼女の服装に興味津々の雅は躊躇なく彼女の豊満な胸を揉み、その柔らかさに瞳をまん丸にして驚いている。
「教育上良くないからあんまり見るもんじゃありません」などと何故か親目線で心配する浩介であったが、当の本人は「おぉ~!グッジョブだ、雅!」と小さな声を上げてしまっているので説得力が全くない。
「貴方の服装もかなりの物だと思うわよ」
エルズの言葉に何故か喜ぶ雅であった。
確かに雅の服装も花魁風であるため、かなり際どく見えるが彼女自身の精神年齢の影響かイヤらしさを全くと言っていいほど感じさせないでいた。
けれど、一人だけ不機嫌な者がいるため徐々に屋敷が不穏な空気に包まれていく。
その原因を作り上げてるのは勿論、皐月だった。
「…私だって脱いだらすごいんだから」
傍の床に正座する浩介に聞こえなぐらいの小さな声でブツブツと呟きながら険悪な表情でエルズを見つめる。
「そのような目で私を見るな。戯れただけじゃろ……これでも一応は他世界の皇族であるんじゃがな~。まあ、よい。それより何故、通達もなしに我が世界と其方の世界を繋げた?事によっては世界間の問題になるぞ」
先ほどまでの微笑みが成りを潜め、君主としての鋭い視線を皐月へと向け本題を投げかける。
先の争いで犠牲になった異世界の住人のことを思えば突如、他世界との空間をなんの通達もなく繋がれれば猜疑心を生むのは当然のことと言えた。
エルズの問いかけに険悪な表情を浮かべていた皐月の瞳が急に彼女から目線を逸らし視点の彷徨わせる。
「…まさかと思うが通達を出し忘れたなどとふざけたことを言うのでは無いだろうな……」
呆れた表情で皐月を見つめるエルズの瞳を挙動不審な態度で視線を逸らす彼女に自分の予感が的中したことを悟った。
「…お主、本気か?其方は、一世界の皇族であろう?」
額に手を当てながら天を仰ぐエルズに頬を膨らませながら小さな声で言い訳を始める。
「だって仕方ないじゃない…慣れてないんだから。元々、アイツの仕事なのに出て来る気配ないし……」
ブツブツと文句をたれる皐月にエルズが静かにキレた。
「言い訳は無用だ。我が同胞に被害が無かったから良いものを、もし何かあれば其方の命を貰うところだぞ……なんなら今すぐにでももらい受けてもよいが?」
エルズは殺意の籠もった瞳を浮かべ皐月を見つめる。
「…っ!?」
その瞬間、室内の空気が張り詰め、その場にいたそれぞれが瞬時に態勢を整え二人の次の行動を見守る。
返答次第でこの場が修羅場と化すのは明白だった。
「そうね…わたしが悪かっ……うんっ?」
その瞳を一瞬だけキッと睨んだ皐月だったがエルズの正論に自分の未熟さを気付かされ謝罪をしようとした瞬間。
バンッ!
屋敷の扉を勢いよく開きリアが帰ってきた。
「ただいまぁ~、皿洗い疲れたぁよぉ。皆の裏切りもん。払ってくれてもいいじゃん………うん?どったの?」
ガックリと肩を落とし、疲れた表情で恨み節を吐きながら一触即発の場の空気を読まずにソファにドカッと座り込む。
妙な雰囲気に気付いたリアは周囲を見渡す。
「お主、リアか!?どうしてここにいる?」
リアの存在に先ほどまでの殺意が吹き飛び勢いよく立ち上がると、驚いた表情を浮かべるエルズの額に嫌な汗が浮かび始めた。
リアの存在に室内の張り詰めていた空気が一気に緩み、一応にほっとする面々の中で一人だけ額に手を当て大きくため息を吐くニルの姿があった。
「…最悪だわ。すいません、もう大丈夫ですから……申し訳ないんですが胃薬をもらえますか?」
場の空気に飲まれ一歩も動けずにいた女中に声をかけるとハッと我に返り、ニルに小さく頷くと逃げるように奥へと消えていく。
「あれぇ?母さま、どったの?」
リアはキョトンとした表情を浮かべ、何故この場所にエルズがいるのか分からない様子で彼女を見つめる。
ただ、浩介はリアの口から出たエルズに対しての有り得ない言葉を決して聞き逃さなかった。
「エルズがリアの母親ぁ~!?」
叫んだ浩介にエルズの拳が脳天を直撃する。
「様をつけろ!様を!一応、皇族なんだから。唇を赦したからと言って呼び捨てを赦した覚えは無いぞ」
苦笑しながら軽く殴る彼女ではあったが浩介からしてみれば「…無理矢理奪われたんだが?」と理不尽さを感じるのだった。
けれど、彼女の額から溢れる尋常で無い冷や汗を見つめ娘が苦手なんだと分かり思わずニヤリと笑う。
「ところでエルズ様は娘に会って何でそんなに汗をかかれてるんですかねぇ~」
あえて浩介は様を強調する。
「ギクッ!?な、何のことだ?わたしはべ、べつに」
狼狽える姿が先ほどまでの余裕ある姿と比べ、かなり滑稽な姿に見えるが彼女は小さく「ごほんっ」と咳き込むと少ない威厳を何とか絞り出し話題を変える。
「と、ところでリアは何故ここにいる?確か、フェンリル様の世界に行ったはずだが……そうか、帝の意志を継ぐ者。神器を浩介に取り込ませたのだな」
浩介を横目に見ながら彼が得た力の根源に気付き、冷や汗を流しながらも「…だからか」と何かに納得したように頷く。
「お主らは今、フェンリル様の世界が他世界の侵攻を受けようとしているのは知っているか?」
エルズの言葉にリアが敏感に反応する。
「どういうこと?フェンリル様の世界に何処の馬鹿が…」
リアの視線が険しくなりエルズを見つめる。
「常闇の皇子の世界だな……他世界の関わりは余り持ちたくは無いのだがフェンリル様には恩があるのでな。情報だけは収集させていたのだ」
娘の不始末の尻ぬぐいをするためなどとはおくびにも出さず、一世界の皇女らしく発言するが、リア以外の者達にはバレバレであった。
「そうよねぇ、何をしでかすか分からないものねぇ」
皐月は「勝った」とばかりにエルズに詰め寄る。
「まぁ、ここまで性癖が似てれば心配になるよなぁ」
浩介もニヤニヤが止まらない。
立場が逆転されたことに気付いたエルズは小さくため息をつきドカッとソファに座り込む。
「分かった、分かった。通達が無かったのは不問にしてやろう……ったく、こんな隠し球を持ってたとはねぇ。参ったよホントに」
女中が差し出したタオルで顔を拭き終えたエルズは真面目な表情でリアの主の世界の今の現状について話し出した。
読んでいただきありがとう御座います。
次回から少しずつではありますが真面目な方向へと進んでいきたいと考えています。
今後とも宜しくお願いします。




