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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第二章 異世界の統治者達
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其の9 親しき間柄


 ミユルの暇つぶしに付き合わされた浩介達は疲れた表情を浮かべながら来客用のソファに深々と座り込んだ。


 ただ一人、小馬鹿にされたと思った皐月は簀巻きにされたまま、目を回しているリアをいつも通りゲシゲシと蹴りたくっていた。


「もう、なんなのよ!一体、何しにきたっていうのよ!あぁ~、もうイライラするぅ~!」


 ストレスMAXの皐月を横目に「ミユルの暇つぶしだろ…」と認識している浩介と従者はは深いため息しか出ない。


「ものの見事にやられてますね…」


 常識ある従者の一言にため息以外は思いつかない浩介は情けない表情でなんとなく雅に視線を向ける。


「主殿、この茶菓子は美味いぞぉ」


 屋敷の正式な関係者が持ってきた飲み物と茶菓子を頬張りながら満足げな表情を浮かべる雅に浩介と従者は癒やされていた。


「唯一の救いだな…」


「ええ、癒やされますね」


 目元を細めながら精神年齢の低い雅の仕草に安堵する。


「それはいいとして俺達はこれからどうするんだ?」


 半狂乱の皐月には期待せず、浩介は名前どころか目元以外、顔すら見たことのない従者に今後を尋ねる。


「そうですね。予定では明日にはエルフ界からの使者がこの屋敷に尋ねてくることになっていますが……」


 従者の言葉に浩介の脳裏に疑問が浮かんだ。


「使者ってのは自由に空間の裂け目を行き来することが出来るのか?皐月の説明だと世界を選ぶことが出来ないて言ってた気がするんだけど?」


 バルクナールの誘致者達の説明をする際にそんなことを言っていたのを思い出した浩介は首を傾げる。


「あぁ、そうですね。それは意図せず時空の裂け目に入り込んでしまった場合ですね。今回の場合は皐月お嬢様が事前にこの屋敷とエルフ界との通行可能な空間を固定されていますので問題はないと思いますよ」


 従者の説明に皐月の血脈のすごさに驚かされる。


「…あいつって実はすごいんだなぁ…」


 日頃の皐月のキレっぷりを目の当たりにしているどころか、被害を被っている浩介にとっては迷惑以外この上ない能力が実はかなりの力を持っているのだと教えられた。


「なんじゃ、主殿は皐月の力を知らなかったのか?あやつは帝の代理の一人でもあるからのぅ。それぐらい出来て当たり前じゃ」


 茶菓子を口いっぱいに頬張りながら当たり前のように説明をする雅に「じゃあ、帝の意志を継ぐ俺の存在ってなんなの?」という疑問が過ぎったが敢えて考えないようにした。


 なにせ、嫌な予感しかしない。


「ところであいつの力って争いの時も使えてたのか?」


 話題を変えようと発した浩介の質問に雅の茶菓子に伸ばした手が止まり、従者は眉間に皺を寄せる。


「確かに出来た可能性はありますね……ただ、あの時代の彼等の境遇を考えると……」


 口ごもる従者の言葉に「あぁ…」とグレ記憶から浩介は失言だったと気付きバツの悪そうな表情で項垂れる。


「そうじゃのう……能力はあったかもしれんが、彼奴の性格上では使うことはなかったはずじゃ」


 少し遠い目をしながら性格に合わない感傷に耽った表情を浮かべる雅であったが茶菓子に伸ばした手は確実に獲物を捕らえている。


 おいしそうに茶菓子を頬張りながら過去に想いを馳せる雅に「思考と行動が一致してないだろ?」と浩介と従者が思わずツッコミを入れそうになったが二人とも常識ある人間だった。


 何も言わずに苦笑しながら雅を見つめる。


 そして、視線を皐月へと移した浩介は感傷的に呟いた。


「あぁ見えて、色々と苦労してるんだな……」


 自分のストレス発散のためにリアをゲシゲシしている皐月を生暖かい目で見ながら浩介は何とか彼女の行動を正当化しようと試みてみるが……やはり、無理だった。


 無抵抗なリアをいたぶる今の皐月からはそんな高尚な考えで行動しているようにはとても思う事が出来ない。


「……いや、いやいや騙されないぞ、明らかにアレってストレス発散だよね?あんまり深く考えずに行動してるよね?ってか喜んでる時点でリアもダメな娘だよね?」


 リアに対しての余りに無慈悲な行動に二人に問いかけるが、雅は聞こえない振りをしながら茶菓子に手を伸ばし、従者はわずかに見え隠れする瞳を泳がせながら視線を合わせようとしない。


「…はぁ、図星かぁ」


 この世界にきてため息が増えた気がする浩介だった。


            *


 それから三日の月日が過ぎた。


 いつもの来客用のソファに座り、温かい飲み物を飲みながら朝の一時を従者と共に過ごしていた。


「……来ないな、使者の人」


 遠い目をしながら呟く浩介に従者はため息をつく。


「ですね…」


 交わす言葉も見つからず、ただ浩介に合わせるように相づちを打つ従者は彼と同じく遠い視線を外の景色に向けながら現実逃避をしていた。


 誰も来ない。


 本来、二日前の予定であったはずのエルフ界からの使者が屋敷に来る気配が全くない。


 理由も分からない。


 ただ、無意味に時間だけが過ぎていく。


「ふあぁ~、おはようなのじゃ」


 欠伸をしながら二階から降りてくる雅に二人の視線が彼女に向けられる。


「あぁ、おはよう」


「おはようございます、雅様」


 二人の声に小さく頷きながら、眠そうな目を擦りつつ浩介の側に座ると近くに控えていた女中が直ぐに温かい飲み物を雅に差し出す。


「うむ、ありがとうなのじゃ」


 雅の礼の言葉に女中は洗練された仕草で頭を下げ、三人の邪魔にならぬ位置で姿勢正しく立ち傍に控える。


 温かい飲み物を口にしながら足をブラブラと揺らす雅を優しげな瞳で見つめていると浩介はふと言ってはならない言葉を口にする。


「なぁ、俺達何してるんだろうな?」


 二人が眉間に皺を寄せる。 


「朝のティータイムを過ごしてると思いますよ……誰かさんが使者に連絡するのを忘れていたために無意味な時を過ごしていますね」


 従者は小さくため息をつく。


「…そうじゃな、まさか何の連絡もしてないとはな。彼奴には呆れてモノも言えぬ」


 雅も首を横に振りながら呆れた表情を浮かべる。


 それが誰なのかは決まっている。


 朝から晩まで書類整理に追われている旅の経路を決めた皐月である。


「もうい~やぁ!書類なんか見たくないぃ~!」


 二階から聞こえる奇声を聞きながら三人は深いため息と共に誰もが項垂れ下を向くのだった。


 遠くで小鳥たちが楽しそうに鳴くのを聞きながら浩介は皐月のいる二階の部屋へと視線を移す。


「なぁ、余りここにいない方が良くないか?」


 従者と雅が顔を見合わせ同じように二階に視線を向け、先ほどの奇声が妙に静かになっていることに気付く。


「ふむぅ、静かすぎるのじゃ」


 胸元で腕を組みながら呟く。


「嵐の前の静けさというモノかもしれませんね……浩介様の言うとおり何か起きるかもしれませんね……」


 三人が顔を見合わせる。


 この何日かで皐月の奇行に慣れてしまっている彼等は彼女が次に何を行うか大方の予想が付く。


 思案下に考え込む二人に浩介は苦笑しながらカップの中身を空にするとテーブルに置き女中に声をかける。


「ご馳走さま、美味しかったよ…街にでも行くか?」


 笑顔でお辞儀をする女中を横目に浩介は立ち上がる。


「はい!はいっ!妾は昨日行った定食屋に行きたい!」


 その提案にソファからピョンっと立ち上がった雅は浩介の腕に掴まり自分の行きたい場所を明確にした。


「そうですねぇ。確かに朝食もまだですし、いいかもしれません。雅様はあのお店のパンケーキがよっぽど気に入られたのですねぇ」


 優しげな眼差しを浮かべ雅を見つめ微笑む。


「そうじゃ!あの甘い香りと口の中に広がるバターとシロップのハーモニー……うう、たまらんのじゃ!早く、早く、主殿行くのじゃ」


 急かすように浩介と従者の背中を押す雅に二人は「はい、はい」と苦笑しながら屋敷を後にするのだった。


「雅が食事にここまで執着するとは意外だったなぁ」


 二人の前を楽しげに歩く雅の後ろ姿を見つめながら呟く浩介の言葉に横を歩く従者も小さく頷く。


「そうですねぇ、彼女は言わば武器の精霊のようなモノですし食事の必要性は確か無かったと思いますね」


 二人の会話を聞いていたのか歩きながら後ろを振り返る雅はよほど楽しみなのかニコニコと満面の笑みを浮かべている。


「確かに妾は食事をする必要性はないのじゃが、妾が食事をすることによって主殿の生命力を奪わずに済むのじゃ」


 笑顔で何かとんでもない言葉を聞いた気がした。


「…なんだって?雅、初耳なんだが?」


 驚いた表情で立ち止まり雅の肩を掴み振り返らせる。


「うんっ?言っておらんかったかのぅ?妾は主殿の生命力を糧としておるんじゃが?神剣なんじゃから無償で震わせるわけなかろうに……どうした主殿?顔面蒼白にして」


 可愛らしい顔で小首を傾げる雅に浩介は言葉をつなげる。


「そういう事は最初に言おうな……気付いたら生命力奪われすぎて死んでたなんて洒落になんないからさ」


 最近、妙に身体がだるいと感じていた浩介は雅の言葉でようやく理解することが出来た。


「…すまんのじゃ」


 どうやら怒られたと思ったらしくシュンとなりながら浩介の服の裾を握り締め下を向く。


 先ほどまでの元気の良さを微塵も感じさせない程の、どんよりと沈んだ空気に逆に浩介が慌てた。


 雅は二十代の容姿に反して精神年齢は未熟で、そのためか喜怒哀楽があまりにも極端すぎた。


 何も言わずにうろたえる浩介に雅は怒ってると判断したのか徐々に肩を震わせ泣き始める。


 どうしようもなくなった浩介は従者に助けを求めると「しかたないですねぇ」と呟き雅に近付く。


「雅様、浩介殿は怒っているわけではないのですよ」


 中腰になり俯く雅に視線を合わせながら彼女独特の優しさに満ちた声で語りかける。


「うっぐ、ほ、うんぐっ、んとなのか?主うんぐっ、殿はホントに怒っておらぬのか?」


 声を詰まらせながら涙目の雅は従者を見つめる。


「ええ、大丈夫ですよ。ほら、顔を上げてください」


 優しく微笑みながら雅に頷く。


「…うん、ありがとうなのじゃ」


 そう言って顔を上げる雅を首元のスカーフを外し、涙と鼻水でグチャグチャな雅の顔を従者は優しく拭いてあげる。


 まるで母娘を見ているようだった。


「雅、悪かったな」


 頭を掻きながら雅に謝る浩介はダメ親父にしか見えない。


「いいのじゃ。妾も伝えてなかったのが悪かったのじゃ。主殿は今までの主殿と違って優しいから大好きなのじゃ」


 可愛らしい笑顔で愛の告白をされ、今度は違う意味で狼狽える浩介に従者はおかしそうに笑う。


「そういえば、初めて素顔を見たな」


 おかしそうに笑う従者の素顔をマジマジと見つめる。


「そうじゃな、すんごい美人さんじゃ」


 瞳をまん丸にしながら雅も驚いた表情をする。


 キョトンとしながら自分を見つめる二人を見つめ返す彼女の顔は浩介の予想通り笑顔が似合う可愛らしい顔付きだった。


 ただ、どことなく誰かに似ている気がした。


「…もしかしてだけど?リアと同じエルフ族か?」


「はい、そうですよ」


 つばの広い帽子を取るとピョコンととがった耳が飛び出す。


「そういえば、名前を名乗っていませんでしたね。私はあの屋敷で従者兼護衛をしています。ニル・スキールと言います。どうぞ、気安くニルとだけお呼び下さい」


 にっこりと微笑みニルは帽子を被り直す。


「じゃあ、改めてよろしくニル」


 浩介は片手を差し出し握手する。


「ニル、よろしくなのじゃ」


 勢いよく似るに抱きつく雅にニルは苦笑しながらも優しく辞意に満ちた瞳で頭を撫でる。


「それじゃあ、行くのじゃ」


 元気よく歩き始めた雅だったがふと立ち止まり、後ろを振り返ると左手をニルの腕に右手を浩介の腕に絡ませ二人を引っ張るように歩き始めた。


「みんな一緒に仲良く歩くのじゃ」


 雅の口調はどことなく嬉しそうだった。



読んでいただきありがとう御座います。

(o_ _)o


なんだか、最初に書こうと思っていたモノとは別物へと変化していってます。

(~。~;)?


あれ?シリアスな話の予定だったのに……。


大丈夫、何とかなるさ。



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