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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第二章 異世界の統治者達
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其の1 武器選びと女中

最初にスイマセン。


旅に出る、旅に出ると書いておきながらまだ屋敷内の話になってしまいました。




 リアの主のいる世界に旅立つために数日の間、色々と準備をしなくてはいけないらしくリアや皐月はその段取りに追われていた。


「空間転移で一発じゃないの?」


 この世界に皐月と来たときはそんな手間はなかった気がしたため、自室で忙しそうに書類に目を通す皐月に声をかけると「あぁ?」とすごい目で睨まれた。


「あぁ、もう間違っちゃったじゃない!いい、本来は他の世界を行き来するには手順ってもんがあるの?勝手に人の家に入ったら捕まるでしょ?それと一緒よ」


 煩わしそうに投げやりな言葉使いではあったが書類に目を通す作業を継続しながら浩介に説明してくれた。


「うんっ?そうなると意思造りの皇子の世界は?」


 思ったことをそのまま疑問を口にする。


「うんっ?あぁ良いのよ、あの世界は。都合が悪ければ無かったことにするはずだから勝手に入り込んでも直ぐに出るだけだしね」


 言ってることとやってることに矛盾がありすぎじゃないかと思いながらも皐月の説明は的を得ていた。


 確かに彼奴ならやりかねない。


 人の家に土足で入っても家主が何も起きなかったと選択すれば、その世界は無かったことになる。


 それが出来るのが家主である意思造りの皇子の能力であるのだから仕方が無い。


「まぁ、明日ぐらいには旅立てるから……アンタそういえば、武器は使えるの?一応、魔物ぐらいは出るわよ」


 書類から目を離さずに当たり前のように言ってのける皐月に浩介は唖然とした。


「へっ?魔物?」


 慌ててグレ記憶を引っ張り出し確認すると何種類かの魔物知識が意識に流れ込んでくる。


 記憶の知識は争い終結までで止まってはいるが、各世界に適応した魔物や精霊といった類いが存在する事を知ることが出来た。


「まぁ、エルフ族のリアが存在するんだから居てもおかしくはないんだろうが…俺、武器なんて扱えないよ」


 その言葉に皐月の視線が書類から離れ信じられないといった表情を浩介に向ける。


「はぁ!?マジなの?」


「うん、そりゃあ魔物なんて居ない平和な世界で生きて(引き籠もって)きたんだから武器なんて手にする機会はないわな。」


 平然と言ってのける浩介に皐月はがっくりと肩を落とし両手で頭を抱え始めた。


「ったく、変態で無能ってどんだけよ?」


 身も蓋もない言葉に浩介は苦笑した。


「いや、とりあえず変態は余計だから……」


 思わず突っ込みを入れた浩介をキッと睨みつけた皐月は直ぐに頭を抱え込み大きなため息をつきながら考え込む。


「あんた、確かグレンデルの能力は使えるわよね?」


「これか?」


 意識を両目に集中させ色彩の違う瞳を生み出す。


「あぁ~、いちいち見せなくていいから鬱陶しい。その能力で武器庫に行って適当に選んできて。その眼だったら自分に適した武器が見つかるはずだから」


 それだけ云うと犬でも追い払うかのように片手を振り、浩介を部屋から追い出しながら書類との格闘を再開する。


「いや、だから武器を使ったことな………分かった。後は何とか自力でやってみる」


 皐月の気配が「これ以上邪魔をするな」と無言で浩介に圧力をかけてきたため、それ以上何も言わず部屋を出た。


 気のせいか皐月の気配に殺気が混じっていた気がしたが『君子危うきに近寄らず』の名言を浩介は実行することにした。


 武器庫までの道のりは直ぐに分かった。


 グレ記憶がしっかりと憶えていたらしい。


「まぁ、元々この世界の主だしな。そういえばグレンデルの奴、武器とか使えたのか?記憶には武器、使ってる感じは全くしないんだけどな…まっ、なんとかなるだろ」


 深く考えることを諦めた浩介は厳重に閉じられた武器庫の前に立ち軽く手を添え、力を集中させる。


 ギィィ。


 錆び付いていたらしい扉が不快音を鳴らすのを眉間に皺を寄せながら浩介は扉を開く。


「あぁ、ヤダヤダ。この錆び付いた感じ許せねぇわ。この世界に潤滑スプレーなんてのはねぇのか全く」


 工業系出身者にとって、この不快音は看過できない。


 そのうち暇を見て何とかしようと固く心に決め、武器庫に足を踏み入れた浩介は唖然とした。


「この中かから選べって、どんだけ数があんだよ」


 天井までの高さは優に数十メートルも有るにも拘わらず、その高さまで山積みされた刀剣の数々、正面に視線を移せば反対の壁が霞んでよく見る事が出来ない。


 どれだけの広さと武器があるのか想像できない。


「自分に合った武器を探せって無謀じゃねぇか」


 ぶつぶつと文句を言いながら、とりあえず近くにあった刀を手に取ってみると浩介の瞳が記憶を掘り下げていく。


「あぁ、そういえばこんな能力だったな」


 浩介の意識に手に取った刀の歴代の所有者の記憶が流れ込んでくるのを感じながら自分が得た能力を今更ながらに思い出す。


 いま握りしめている刀はどうやら多くの戦場で活躍した業物らしかったが、その刀には血生臭さが一切感じずにそれどころか高潔な優雅さと気品を感じた。


 歴代の所有者はその多くが女性らしく刀の優雅さや気品といったモノは、その影響を受けているのかもしれなかった。


「まぁ、手にも馴染むようだし…これでいっか」


 とりあえず、見様見真似で刀を振ってみる。


 シュッ。


 風を切る音が妙に心地良かった。


 その音を聞いて浩介は何故だか、心が躍るような高揚感と懐かしさを感じた。


 実際に初めて手にする武器でも有るにも拘わらず不思議と恐怖を感じることがなかった。


 元々、この刀を自分が所有していたかのような感覚が浩介の意識を刺激して思わず小さく頷く。


「うん、お前に決めた。これからよろしくな、相棒」


 柄の部分を軽く叩きながらこれから自らの身を護ってくれるであろう(相棒)に声をかける。


 例え無機質な物にも愛情を持って接する。


 そうすれば答えてくれる。


 それは浩介のモノに対する考え方だった。


 そばにあったその刀の対であろう漆黒の鞘に収めると浩介は他の武器に目もくれず武器庫を後にする。


 不快音と共に閉まりゆく扉の奥で微かなざわめきが聞こえてくるのに浩介は気付くことはなかった。


 それは刀剣達の囁きであり、主を得た刀への羨望と選ばれなかった哀しみに満ちているようだった。


 完全に扉が閉じられると室内は目映い白光に包まれた。


 その瞬間、室内はガラリと様変わりし屋敷の最深部でもある厳重に管理された宝物庫へと変化した。


 そして最も奥に納められていた筈の太刀が消えていた。


 持ち主を失った台座だけが残されており、あるべき太刀は浩介の手に握られている物だった。


 幾千年もの時とこの多重世界を見つめ続けた神剣【八咫烏の太刀】であり、自らの意思によって選び手を決めるその太刀は帝の意志を継いだ浩介を嬉々として選んだ。


 太刀の無くなった空虚な台座に近付く影があった。


 その服装は宝物庫に似つかわしくない出で立ちであり、それは屋敷の女中が着るメイド服姿だった。


「彼女は私より猊下を選んだのね……まぁ、いいわ。とりあえずお嬢様に報告に行かなきゃ。あの人も異世界に無事に着いたようだし」


 哀しげに台座を見つめていた女中は肩まで伸びた黒髪を手で払うと無表情な瞳で壁に手を当て静かに瞳を閉じた。


 壁に歪みが生じ捻れ始める。


 そして、切り裂かれるように空間が広がっていく。


 その光景はまるで皐月の使う空間転移のようだった。


「…お嬢様の執務室の前」


 目的地を呟き女中は躊躇なく空間へと足を踏み入れる。


 彼女がその空間に踏み込んでしまうと歪み捻れていた壁は元の状態に戻り静寂だけが周囲を包み込んでいった。


 まるで何事もなかったかのように……。

呼んで下さってる方々に感謝しております。


拙い文章ですが頑張っていきたいと思いますので今後もよろしくお願いします。

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