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そして、彼女に鎖で繋がれ異世界を旅をする! ?  作者: 村山真悟
第四章 多重世界は魂の連なり
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其の38 相違な思考

フェンリルと雅の口調が同じ……(^_^;)

雅は浩介により初めて人化したので少し幼い感じでフェンリルは皇女らしさを醸し出しているつもりなのですが……表現力が乏しくてすいません

(o_ _)o

皆様の表現力に縋る他力本願な作者です


では、お楽しみください



「行ってらっしゃいませ」


 玄関前で深々とお辞儀をする女中達の姿にフェンリルと雅は楽しげに手を振りながら満面の笑みを浮かべ歩き出す。


 少し離れた街並みが彼女らの瞳にキラキラと映り込み、高鳴る鼓動が頬を紅潮させていく。


「お主はこの街に来たことがあると言っておったのう?なら、街を案内してくれぬか?」


 口調や表情は冷静さを装ってはいるフェンリルであったが、彼女の特徴的な獣耳と九尾の尻尾は無意識の内に周囲の喧騒に忙しなく反応している。


「妾に任せるのじゃ!」


 自信満々に胸を張る雅の姿が微笑ましい。


 そんな二人の手を握りながら歩くディーバの姿はどこか母性を醸し出しているように見える。


 その表情は柔らかな笑みを携えており、二人の会話を愛おしげに聞いていた。


「では、雅様に案内して貰いましょう」


 ディーバが雅に頬笑みかけると彼女は満面の笑みを浮かべ店の一角を指差し走り始める。


「先ずはあの店に行くのじゃ!」


「おぉ!良い匂いがするのぅ!」


 ディーバの手を離れて駆け出す雅の後をフェンリルが釣られるように追いかけていく。


 その姿を見つめながらディーバは口元に手を当て走って行く二人に声をかける。


「転ばないでくださいよぉ」


 その声に走りながら二人が手を振って答える。


「「だいじょうぶなのじゃ~」」


 元気よく返事する二人であったが…。


 ドタ、ドタ、ドターーーバタンッ!ズシャー!


 けれども、やはりというか見事というのか期待を裏切らない二人は……全く同じタイミングで盛大に転けてしまう。


 雅は受け身も取れずに顔から地面に突っ込んでいき、フェンリルは咄嗟に両手で顔を覆ったため腕に擦り傷を負った。


「………はぁ、だから言ったのに」


 見事にスッ転んだ二人の後ろ姿に先程までの慈愛に満ちた表情など微塵もなくなり、手の掛かる子を持つ母親の気持ちになるディーバであった。


「…うぅ、痛いのじゃ」


 頭から盛大に転けた雅が痛そうにおでこを押さえていると、ふいに彼女の頭上に影が出来た。


「……お嬢ちゃん達、大丈夫?」


 長い黒髪の女性が心配そうに見つめていたのだ。


「うん?お主…」


 地べたに座り込みながら擦り剥いた腕をペロペロと舐めていたフェンリルが女性の雰囲気に何かを感じ取り、訝しげな表情を浮かべ警戒する。


「うん?どうしたの?」


 フェンリルの瞳に首を傾げる黒髪の女性は地面に垂れそうになる髪をそっと手で押し上げながら二人に頬笑みかける。


「ほひぇ~、美人さんなのじゃ!?」


 彼女の姿に雅はおでこの痛みを忘れて瞳を大きく見開きながら驚いた表情を浮かべる。


「ふふふっ、ありがとうお嬢ちゃん」


 ニッコリと微笑みながら雅の頭を優しく撫でる彼女の姿を盗み見ながらフェンリルは無意識に感じた違和感について思考を廻らせる。


 女性の存在に何かが引っ掛かるのだ。


 ただ、それが何なのかが分からない。


 そんなもどかしさを感じながら彼女を見つめていると少し離れた場所からディーバが早足で二人に近付いてくる。


「もう、だから言ったじゃないですか!」


 開口一番で発せられるディーバのお説教に雅とフェンリルはシュンとした表情で俯く。


 その光景に優しげな微笑を浮かべながら彼女はディーバに声をかけた。


「あら?お母さんですか?」


 その問いに一瞬、思考が停止する。


「…えっ?あぁ~、まぁ……」


 ディーバは苦笑しながら頷いた。


 確かに二人の外見は年端もいかない少女の姿ではあるが、実際は古き時代から生きる大精霊と一つの世界を束ねる皇女であるのだから返答に窮してしまうのは仕方ないことである。


「お二人とも元気が良いですね。あら?」


 女性は雅に続いてフェンリルの頭を撫でようと腕を伸ばしたがフェンリルはついっと彼女の手を逃れて距離を開けた。


 フェンリルに距離を開けられ彼女は少なからずのショックを受けた表情を浮かべる。


「嫌われたみたいですね……」


 少しだけ哀しげな表情で彼女がはにかむ。


「フェンリル様、どうなされたのですか?」


 心配する彼女に対してフェンリルのあまりに失礼な態度にディーバは眉間に皺を寄せて尋ねた。


「…うむ」


 どう表現すれば良いのか分からずにフェンリルはディーバに対して説明することが出来ず呻ることしかできない。


 ただ、フェンリルの名を聞いた彼女は驚きの表情を浮かべ信じられない様子で口元に手を当てた。


「えっ、フェンリル様……えっ?もしかして、あの(・・)フェンリル様なのですか?」


 驚いた表情を浮かべる彼女にフェンリルだけでなくディーバも警戒の色を強め自然と彼女とフェンリルの間に割り込んだ。


「…あなたは?」


 ディーバの問いに場の雰囲気が緊張感に包まれ、ヒリヒリとした気配に一触即発の空気が彼女らの間に沸き起こる。


 だが…。


「そのくらいで許しては貰えませんか?」


 張り詰めていた空気を裂くようにふいに男性の声が聞こえハッと声のした方へと振り返ったディーバはその光景に唖然とした。


 なぜなら彼女の直ぐ傍に執事服に身を包んだ初老の男性が困ったような表情で彼女らを見つめていたからだ。


「…えっ、そんな、気配なんて微塵も…」


 その存在に気付けなかったことに動揺を隠せないディーバとは対照的にフェンリルは彼の姿に少し安堵した表情を浮かべた。


「そういえば、この世界にはお主がおったのじゃったのう…相も変わらず気配を絶つのに優れておるものじゃて……のう、エレボス・レア」


 フェンリルの言葉に対して表情を変えることなくエレボスは深々と礼節に応じたお辞儀を返す。


「こんな場所でお会いいたしますとは…お久しぶりで御座いますね。フェンリル皇女様」


 顔を上げたエレボスはチラリと雅を盗み見ると直ぐにディーバへと視線を向け直す。


「私達は怪しい者では御座いません。私はこの世界の皇女に仕えるしがない執事に過ぎない存在で御座いますから」


 姿勢を正すその洗練された所作と敵意のない眼差しにディーバは自然と警戒心を和らげていく。


 何より主であるフェンリルが親しげな口調で会話する姿に敵意を感じられなかったことが大きい。


「エレボス・レア様……」


 ふとその名を聞いたことがある気がした。


 どこでだっただろうかと記憶を手繰り寄せるが、ハッキリと思い出せずに不快感を感じてしまう。


「あぁ、ディーバは初めてじゃったな。此奴はこの世界の、ふむ皐月の部下じゃのぅ……強いぞ」


 ニヤリと笑みを浮かべるフェンリルにエレボスは苦笑交じりの表情を浮かべる。


「…もう、昔のことで御座いますから。それより、どうしてこちらの世界に?」


 エレボスの瞳が微かに鋭さを増す。


「ふむ…それはな「観光じゃ!」…おぃ」


 フェンリルが答えようとした瞬間、雅が遮るような大きな声で黒髪の女性に笑顔で答えたため思わず突っ込んでしまう。


「そうなの?それは楽しみね」


「うん!」


 元気よく頷く雅の天真爛漫な笑顔に思わず女性の表情も綻んでしまう。


 その光景に呆れた表情で額に手を当てて何とも言えない深い溜息を漏らすフェンリル。


「…はぁ~、興を削がれたのじゃ…まぁ、あながち間違いではないしのぅ。ところでお主らはこれからどうするのじゃ?」


 エレボスはフェンリルの心労を察し、微苦笑を浮かべながら彼女の問いに答える。


「はい、今から屋敷へと客人をお連れするところで御座います。あぁ、そういえば御紹介が遅れましたね。こちらのお嬢様は我が世界のお客人で上山美弦様と申します」


 エレボスの紹介に雅と楽しげに会話をしていた美弦は周囲にニコリと微笑むと頭を下げた。


「ご挨拶が遅れましたね。私は上山美弦と言います。別の世界を束ねるフェンリル様にお会いできて光栄の極みです」


 その言葉にフェンリルは皇女の雰囲気を漂わせて軽く頷いて答えるのだが、その表情は少し訝しげなものであった。


「ふむ、妾はフェンリルじゃ。宜しく頼むのじゃ…それは良いんじゃがお主のその違和感…うぅむ、気のせいじゃろ…いや、何でも無いのじゃ」


 フェンリルは何かを確認しようと口に出そうとするが、その何かに確信がが持てず躊躇する。


 その姿にエレボス敏感に反応して即座に雅と楽しげに話していた美弦に声をかけた。


「美弦様、そろそろ宜しいですか?」


 じゃれついてくる雅に苦笑していた美弦はエレボスに軽く頷いてみせると雅の頭を優しく撫でる。


「今度は一緒に遊びに行くのじゃ!」


 雅はヒシッと美弦の身体に抱きつき上目遣いに彼女を見つめると雅に対して笑顔で頷く。


「うん、約束ね。それでは皆さん失礼いたします」


 深々と頭を下げ別れの言葉を口にするとエレボスを先頭に屋敷へと向かって歩き出していく。


 その後ろ姿を見つめながら先程まで美弦にじゃれついていた雅の表情が一気に険しくなった。


「あの美弦とか言う娘から漂っていた匂い……急がなくてはならんかもしれないのじゃ」


 その言葉にフェンリルも頷く。


「……お主も気付いたか、あの違和感」


「当然じゃ…我を誰と思ってる」


 フェンリルに顔を向けた雅は真剣な表情で頷くと彼女の手を握り、その視線を離れていく二人から街並みへと向け直した。


「……うんっ?」


 その行為にフェンリルは小首を傾げる。


 何かが違う気がした。


 互いに意思疎通が出来ていると思っていただけにフェンリルは雅のその行動に嫌な予感を感じた。


「……お主、まさか」


 そんなはずはないと信じたい。


 けれど、雅の言った言葉「漂っていた匂い(・・)」に一抹の不安が過ぎる。


 雰囲気や違和感といった表現ではなく、あくまで匂いと表現したからだ。


 獣人であるため匂いに敏感である。


 そして感覚を呼び起こす。


 確かに美弦から匂いはした。


 そう、甘い匂いだ。


 ジト目で雅を見つめ、全てを察した。


「……………」


 思わず言葉を失うフェンリル。


 どれだけ、雅が真剣な表情をしていても今のフェンリルには滑稽にしか映らない。


 そんな落胆するフェンリルを余所に雅は真剣な表情で街並みを見つめ、そして決意の言葉を発した。


「彼奴はあの店のパンケーキを食っていたのじゃ。急がねば売り切れるやもしれん!」


 やっぱりかと項垂れるフェンリルだった。


読んでいただきありがとうございます

(o_ _)o


筆の遅い作者ですが見捨てずにいて頂けますと嬉しく思います。


では、失礼いたします

<(_ _)>

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