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鍛冶師の仮面を被った魔王  作者: 苗村つめは
第一章
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EX. お正月スペシャル! アンナの日記

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。

 

 ある日。


「はははは!流石、天然ヒロインアンナ!今日もまんまと引っかかった!」


 そんなことを叫びながらレインは、風呂上がりに牛乳を一杯グイッとやろうと思ってキッチンに向かった。日々、一日一本だけ配給される牛乳を飲む権利を欲するレインとアンナは、とあるルールの元に熾烈な争いを繰り広げていた。


 一つ、牛乳は風呂上がりに飲むこと!


 これだけである。


 レインは、常にアンナよりも先に入るよう努力し、今はアンナが入れ替わりで風呂に入っている為、その隙をついて牛乳を飲もうという寸法である。


 単にアンナが早く入れば良いだけの話なのだが、レインが言った通り天然ヒロインのアンナは、そんなくだらないレインの企みにも気づけず、今日も連敗記録を更新しようとしていた。


 しかし、それに有頂天の大人気ない子供、レインは、冷蔵庫(実は国宝級の家電で、いわゆるオーパーツです。特に重要ではない為これといって描写はないので、ここで。)に牛乳を取りに行く途中、キッチンで、異様に自己主張の激しい何かを見つけてしまった。


「ん?何だこれ」


 あの、醤油モドキをしまっている洗い場の足元にある引き出しの戸に挟まっている、何か。レインは、屈んで手を伸ばし、ソレを掴んだ。


 ソレは……


「ぶッ!?何じゃこりゃ!」


 ーーアンナの日記だった。


「………いやいや、アンナが日記を書く?ハッ、ないな。どうせ、白紙の束と化しているだけだろ。記名も無いし」


 なのに、何故レインには、今彼の手にある日記がアンナのものだと分かったのか?簡単だ。前世一生引きこもり兼オタクのレインが、日記なんてものに触れる機会は無かったから、消去法でアンナだということになっただけである。


 そして、自身も日記なんて書いたこともないくせに、アンナのことは馬鹿にするレイン。しかし、白紙の束などと言っておきながらも地味に、いや、とても気になるのは人の性なのだろうか。牛乳という、異世界におけるお宝(牛がマジで少ない。この配給の牛乳も次長老にしか配られていない)のことも忘れて、レインはペラリ、日記をめくった。


「え、あれ?以外と書いてあるな」



 ○月✖️日


 ーー季節は碧。しんしんと降る雪が、木製の屋根に積もり、人を押しつぶそうとする、雪国の人にとっては絶望的、そうでなければ子供たちに喜ばれる季節である。


 ジーナ(犬)は野原で雄叫びを上げながら駆け回り、ニャンコ(ニャンコ)はコタツで丸くなると思っていたら紙のように薄く伸びて仰向けになる。そのせいでコタツに入れない。うちの猫は少しぽっちゃりしている。碧が終わるまでに早く減量してほしーー以下、頭のおかしい文章が続くーー



「お前はジーナとニャンコになんか恨みでもあんのか?というか、冬自体になんか恨みでもあんのか!お前の出身地は、別に雪国でもないのに!!」


 ペラリ。



 ○月✖️日


 ーーチャオ!アンナです!今日はマスターに御飯を教えてもらえた。声も出ない程感動してたーー



「ちげぇよ!あんな黒焦げの目玉焼き見たの初めてだっただけだよ!しかも、『チャオ!』って何!?」


 ペラリ。



 ○月✖️日


 ーー今日はティリの皮で服を作った。マスターはとても裁縫が上手で、花咲く梱包材を詰めた暖かいコートを発明したらしい。すごくあったかくて良いけれど、マスターにそれを言ったら、「親父は、『梱包材を何で服に入れたんだよ。まあ、暖かいから良いけど』って言ったんだよな……。まあ、プチプチが服になったらゾッとするかも………。側から見たら、俺もそんな感じかもな、ハハッ」って言ってた。どうしてだろうか?ーー



「……」


 ペラリ。



 ○月✖️日


 ーー眠いーー



「そんなこと書くぐらいなら寝ろよ!」


 ガラッ(・・)



 ○月✖️日


 ーー日記、やめようかなーー


「……やめれば良いじゃん?ってか、何でこんなどうでもいいことしか書いてないんだ?」

「ーーどう?」

「アホか。何故俺がこんなものを読まねばなら………ん?」


 レインは、自分の前方から聞こえてきた声に疑問を抱く。「何故、お前がそこいる」と。


 声の主、先程まで風呂にいた筈の、居候少女ーーレイン曰く天然ヒロインのアンナが立っていたのは、冷蔵庫の前だったのだ。レイン的に、百歩譲って風呂の外にいるのはまだ良い。しかし、そこに立ってちゃいけない。お前だけは、ソレを開けちゃいけない!


 いつの間にか髪まで拭いてホクホクしながらレインにドヤ顔を向けるアンナは、ゆ〜っくり、ゆ〜っくりと冷蔵庫の両開きの扉に手を伸ばしていた。そこには、レインの毎日の楽しみが、幸せが、日々珍獣(アンナ)の相手をして溜まった疲労を癒してくれる絶対の存在が。


「や、やめろぉおおおおおおッッッッッツ!!!」


 そう叫び、手を、伸ばす。


 しかし、あと一歩、届かない。アンナの白い両手を掴む直前、全ての希望(牛乳)が入った、扉から、光が木漏れ出す。


 そして、


「私の、勝ち!」


 ポンッ!グイッ!!ゴクッ!!!ぷはッ!!!!


 アンナが、


 軽快に蓋を開け、


 勢いよく口に入れて、


 牛乳を、


 ノミホシタ。


「ぁ、ぁぁ」


 愕然とした表情のレイン。


 それを見て、アンナは、普段無表情のくせに誰が見ても分かるくらい口元を緩めて、


「トラップ」


 と、一言言った。 


「は?」

「うん。マスターが気になりそうなところに置いて、マスターが読むように仕向けたの。で、シャワーだけ浴びて、帰って来て、こっそりマスターの横を通ったの」

「…………………ゔ」





 ーーその後、キッチンでバタンキューした少年を慰める、白い口髭を付けた少女がいたとかいないとか。




改めまして、明けましておめでとうございます。


今回は、短編となりました。確か、前々回の話では冬ということだったので、「季節的にいけるんじゃね?」ということで出させていただきました。


家族がガキ使見てゲラゲラ笑っている中一人このくだらないストーリーを考える私。なかなか寂しい構図です。


前回のあとがきで、次回、第6話では、もっとまともなヒロインに……と言いましたが、結局『アンナの日記』になりましたし、今のところ、恐らく珍獣アンナが登場するのは間違いないと思います。


今回は内容が結構グダりましたが、本編の方は大丈夫です……多分。


次回投稿日は、活動報告にある通りです。


それでは、今年もよろしくお願い申し上げます。次回第6話にて皆様にお会いできたら嬉しいです。

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