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鍛冶師の仮面を被った魔王  作者: 苗村つめは
第一章
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26.第一回模擬戦

 ついに始まった戦闘訓練。

 取り敢えず、レインとアンナは自分たちの作った剣とは別の木剣で模擬戦を行うことになった。


 訓練では基本的に、レインが作った剣を使うが、模擬戦では慣れるまでは大怪我をしないように木剣で、慣れても刃を潰したもので行うとのこと。


 レインが作った剣は一体なんだったのか、と思わないでもないが、これは後の対魔獣戦の実戦訓練で使うらしい。


 今回の模擬戦ではレインは一本の木剣を持ち、アンナは二本。

 用意してあった剣と重量以外は大体同じものを用いる。


 戦闘型は、一応事前に決めたワルフの型と、フランの型をそれぞれ基本を練習したので、それをどう上手く活用するかが肝だ。


 向かい合わせになって立つレインとアンナ。


 親父は審判だ。


「じゃ、いいか。始めるぞ」

「いつでもどうぞ」

「はい。頑張る」


 親父の言葉に、二人は緊張感を崩さない。

 お互いになんだかんだで負けず嫌いなところがあるので、狙うは勝ち一択だ。


 レインとしては、年下に負けるのは流石に嫌だし、アンナはレインに良いところを見せたい。


 一触即発。

 二人はいつでも動けるように、親父の合図に耳を澄ませーー


「じゃ、はじーー」


 親父が言い切る前にカンッと高い音が木霊する。

 見れば、レインが振り下ろした剣をアンナが剣を交差させて受け止めていた。


「ちっ」


 レインは全力の攻撃を止められたことに舌打ちし、しかし動きは止めずに直ぐに右から斬りかかる。

 それに反応し、アンナは左の剣を掲げて受け止めーー


「う、わっ」


 ーーようとして、それがカツンと軽く音を立てて左から襲いかかったきたことに驚く。

 慌てて、レインの右脇を狙おうとしていた右の剣を引き戻して何とか受け切った。


 右からの攻撃は牽制。

 本命は、手首を回して左に切り替えた、内向きの横薙ぎだ。


 初撃を双剣で受け止められたのなら、分散させてしまえばいい。

 体格差もあるから、単純な力で押し切れると考えたのだ。


 予想は当たる。


 無理に片手で防御したアンナの剣は弾き飛ばされ、木剣の刃がアンナの細い首に迫る。

 レインは寸止めするつもりだが、いかんせん剣などろくに振ったことがないので、当たってしまうかもしれない。


 それを見た親父は、「やめ」と声を上げようとしてーー


「なっーー」


 アンナは、ふらっと後ろに倒れるように剣を避ける。

 マ○リックスのような回避だ。


 レインはアンナの身体能力の高さに一瞬驚くが、


「いたっ!?」

「は?」


 ごつんと鈍い音を立てて、アンナは後頭部から着地。

 アンナの可愛らしい悲鳴に、思わずレインは間抜けな声を出してしまう。


 身体能力は高いかもしれないが、アンナのドジが完全にそれを相殺していた。


(ま、取り敢えず)


 ペシっと剣先で軽くアンナの頭を叩く。


「や、やめ!勝者、レイン」

「うぅ〜」


 親父の宣言に、アンナは頭を両手で抑えて起き上がる。

 少し不満そうだ。


 レインに勝てなかったのが悔しいのだろうか。


「……練習したこと、何にもできなかった……」


 どうやら違うらしい。

 いや、もちろん負けたことは悔しいだろうが、それ以上に訓練を活かせなかったのが不満なのだ。


 対し、レインはそれを最大限に活かした。

 《技》も《剛》も組み合わせ、前に前に出てアンナを追い詰め、その上で不意を打つ。


 まさに、狡猾なワルフの如し。


 レインがそれを名誉に思うかどうかは別の話だが。


「まあ、そんなに落ち込むなって。結局俺の勝ちだったけど、転ばなければ別だったかもしれないだろ?」

「俺の勝ちってところは要らないと思うが、レインの言いたいことも分かるな。正直、あの回避は驚いた」


 がっかりと落ち込むアンナを親子二人で何とか慰めようとする。

 レインの微妙な言い方に親父は呆れた表情をしたが、レインの言葉には賛同した。


 そんな、少し必死な二人の様子に、純粋なアンナは一転して表情を明るくする。


「……ほんと?」

「ああ、本当だ」


 お世辞抜きで、レインもあの回避には正直焦った。

 短時間とは言え、訓練で得た戦闘知識を総動員した攻撃だったのに、まさかあっさりと空を切ることになるとは思っていなかったのだ。


 必殺の一撃。

 それぐらいに思っていたのに、あそこでアンナがうっかり転んでいなければ、左の剣でレインを切ることも出来たかもしれない。


 それは本心だった。


(あれだけの訓練で、『必殺の一撃』だとか、調子に乗りすぎだろ、俺。……今も、アンナに負けてたかもしれないしな……ちゃんと、特訓しよう)


 内心でそう誓い、レインは女の子座りのアンナに手を差し伸べる。

 すっかり元気になったアンナは、どこか嬉しそうレインの手を取った。


「ありがと」

「どう致しまして。……あー、親父、もう昼だし、今日は終わりにするか?」

「そうだな。じゃあ、また明日ここでな」

「いや、おかしくねえ?別にいいけどさ……」


 当然のように、明日の訓練もレインの家の庭でやることを宣言する親父。

 レインはそれに苦言を呈するが、親父はひらひらと手を振ってあっさりと帰っていった。


 それを見送り、スカートに付いた汚れを払うアンナのほうを向く。


「じゃ、昼ごはんにするか」

「うん。今日は、私が買い物行ってくるね」

「おい待て。お前だけじゃ、絶対迷うだろ。俺もついていく」

「むぅ……分かった」


 どうやら、いつの間にやらアンナの担当になった家事を責任持って行いたいらしく、レインの言葉に少しアンナは不満そうだ。

 しかし、ここでアンナを一人で行かせたりしたら、土地勘のないアンナはここに戻ってくることはできないだろう。


 それに、アンナは結構な美少女だ。

 一応治安のいい村だが、他所からやって来る者までそうとは限らない。

 万が一にも誘拐されたりすることは想定に入れておいたほうがいい。


 レインはそんな風に考えながら、武器を置くために家に入っていく。

 アンナもそれに付いて行きながら、レインが自分を一人で行かせてくれないことの不満を内心で吐き出していた。


(大通りくらい、ここに来る途中で見たから分かるし、このお家だって大きいから見失ったりしないのに……マスターは、私のことを信用してないのかなぁ。じゃなかったら、一人で行かせてくれるよね……って、もしかして逆に、私と一緒に行きたい、ってこと?ならーー)


 途中から不満が一転して乙女な思考になっていた。


 そうとも知らず、アンナが付いてきているか気になって振り返ったレインは、一人で百面相するアンナを視界に入れる。


(何やってんだ、こいつ……)


 思っただけで口に出さない分、レインはまだマシなのかもしれない。





以前掲載した、魔法の属性が途中から変わっている、という重大なミスに気がつきました。

後にに掲載された、「火」「水」「療」「星」「煌」「淵」が正しいです。


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