まずは情報収集だ
新井探。高校1年生である。
「参ったものだ。このまま勉強を頑張ったとしても、待っているのは社畜か……。それが現状ベストな選択というもが悲しい話だな…」
と、呟きながら、彼は学校の帰り道の途中、自転車を止めた。
公園の滑り台の下が光っていたのだ。まるで何かを吸い寄せるような巨門のように。
「ん? 何だこれは?」
自転車のスタンドを上げ、探は謎のゲートへと歩み寄る。そして、その光のゲートへと触れる。
すると、手が消えた? いいや、引っ込めれば手は出て来る。ゲートの光で手が隠れただけであった。
「特に痛みもないか。よし、この先へ探検して見るのも悪くないな」
その光のゲートをくぐった。その先にあるのは……。
白銀の機械ばかりの世界。まるでSFにあるような未来の世界のような場所だった。
「ここは……。俺は未来にでも来たのか?」
目の前に人影が横切っていく。探はその人影の主を目にした。
瞳孔が開き、絶句した。行きかう人々誰もが身体の一部を機械で構成されているではないか。
「全員、サイボーグなのか……?」
「ちょっとお兄さん、ぼーっとっ立っておくと危ないよー」
探が振り向いた先には15歳そこらの少女の姿が。彼女も例外ではなく、左腕と両脚が機械仕掛けになっていた。
「あぁすまん。更に悪いがいくつか質問がしたい。いいか?」
「うん。特に急ぎの用はないし、いいよ」
彼女は別にいいやと気軽に返答した。探は日本語が通じるのだと分かり、彼女との会話を試みる。
「ここはどこだ?」
「サイバリアって町の住宅街だけど?」
「そうか。では、日本と言う国を知っているか?」
「ぜーんぜん。そんな国あったっけ? 調べてみよ」
少女は機械仕掛けの左腕にあるボタンをタッチし、ヴァーチャルモニターを出す。モニターに文字を入力していき、検索をしている様子。
「う~ん。ない? いや、あった」
「! 日本という国がこの世界の歴史上に存在するのか?」
「ううん。わふ~伝説っていう漫画に出て来る、架空の国のことみたい。あたしが生まれるだーいぶ前に出た漫画だよこれ」
「そうか……。(漫画の世界の架空の国だと……。つまりあれか。俺は漫画の世界と現実世界が入れ替わったような世界へ来たということになるのか? いいや、その判断は時期尚早。まだまだ情報が少な過ぎる……)」
5秒ほど思索した上で、探は改めて口を開く。
「図書館がどこにあるか教えてくれないか? 調べたいことがある」
「図書館かぁ。友達の家に行くにはちょっと遠回りになるけど、時間的に大丈夫かぁ。うんいいよ。連れて行ってあげる」
「有り難い。俺の名は……(一応本名を名乗るのは止めておくか)。タクだ」
「あたしはレーネ。んじゃ、早速図書館に行こうっか」
2人は歩き出す。探はチラと後ろを振り向く。光のゲートがまだ残っていたのだ。
(消えそうな気配もない。あそこを潜ればまた向うへ戻れそうだな……。まぁいい。この世界が現実世界より快適ならば、こちらへ引っ越すのもあり。逆に元の世界の方がマシならば、戻ればいいだけの話だ。兎にも角にも、情報収集だな……)
こうして、探はレーネという少女の案内の下、図書館へと向かうのだった。
この世界の情報を仕入れる為に。
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