8.どうやら俺は規格外らしい
「いやぁどうしますかね?燃えてますよ凄い勢いで」
「早く消してよ!大惨事になっちゃうじゃない!」
「どうやって消すんだよ!」
目の前では未だに勢いが衰えていない火柱が音を立てて燃え上がっていた。
こんな勢いよく燃えてちゃ消防車でも無理だわ。
消防車も巻き込まれて二次災害起きるわ。
「アレがゆーまが出した魔法なら念じるだけで消えるから早く!」
「お、おぉ!任せとけ」
消えろ!
あっ消えた、消えたっていうか消滅じゃないかこれ。
消えろと念じた瞬間、何事もなかったかの様に巨大な火柱は消えていた。
「ゆーま大丈夫⁉︎死ぬ?死んじゃうの?死んじゃいやだー!」
「いや死なないんだけど、いきなりどうした?頭でも打ったか?」
いやぁそれにしても予想以上の大きさと凄さだったな。
イメージしたのとほとんど同じだったんだけどやり過ぎたみたいだな、反省反省。
「おかしいのはゆーまの方!あんなの出しててピンピンしてる方がおかしい!本当にゆーまが3歳児の人間だったら死んでるから!」
「まぁまぁ落ち着けって……そういや3歳児だったな俺、うっかり忘れてたわ」
本当ならそろそろ20くらいかな?
うわー体は子供、年齢は成人ってか。
某探偵か!
「本当に人間なのよね?今なら怒らないから正直に話そうよ」
「正直も何も俺は人間だよ、もしかしたら俺が知らないだけで人間じゃないかもしれないけど恐らく人間」
今思ったけど魔法が使える様になってるんだな。
いいね、もっと使ってみるのもいいかもしれないな。
慣れが大事だってフェイも言ってたし。
「もう驚かない、ゆーまは規格外だからそういう事にする!そうじゃないと頭が痛くなっちゃう!」
「そ、そうだな規格外であるのは俺も同感だよ。とりあえず魔物を倒す事は出来そうだから加減して魔法を練習するよ」
「加減してね?じゃないと洒落にならないから」
「はい」
反省しております、まさかあそこまで忠実にイメージ通りになるとは思ってなかったんです。
これからは気をつけますので何卒よろしくお願いします。
「じゃあ次はご飯だね、私はゆーまの魔力を食べれば大丈夫だけどゆーまはお腹空いちゃうもんね」
「そうだな、昨日倒した犬っぽい魔物焼いてみるか。もしかしたら食べられるかもしれないし」
食べられると言っても魔物だからな、ちょっと食べて次の日になっても身体に何も無かったら食料として考えるか。
魔物っていってもそんなにグロい見た目はしてなかったし捌いてしまえば……あっ捌くナイフがないや。
「なぁフェイ?何かを作る魔法とか無い?
魔物を捌けるナイフ的なものが欲しいんだけど」
「一応、創生魔法と呼ばれている物を作る魔法はあるにはあるんだけどね?凄い緻密な魔力操作が必要になってくるしゼロから魔力だけで物を作るには相当な量の魔力がいるの」
ふーん、難しそうだけどやってみる価値はあるか。
もし使える様になったら便利だしね。
ナイフか……簡単に考えれば刃があって持つ所があってだけど、この場合はサバイバルナイフの方がいいのかな?
「うっ、身体が……怠い?」
このくらいの大きさなんだろうな、とか思いながら想像のナイフを両手で持っていたら次の瞬間に想像通りの姿をしたナイフのずっしりとした確かな重みを感じていた。
出来ちゃったよ、こんな簡単に出来ちゃっていいのかね。
お陰で魔物を捌くことが出来るけどさ。
「なぁフェイ……ふぁぁぁ」
「どうしたの?アクビなんかして」
「出来た」
そう言って俺は手に持ったナイフをフェイの見える場所に置く。
あぁ、眠くなってきた。
ナイフを作ってから異常に眠たい。
「……⁉︎」
「あのーフェイさん?おーい」
「平常心平常心、ゆーまは規格外ゆーまは規格外ゆーまはおかしいゆーまはおかしい」
なんかもうごめんなさい。
「えぇと、その……」
「よかったねゆーま!これで魔物を捌く事が出来るね!流石ゆーまだね!凄いね!」
自分で自分を騙してるよね確実に。
フェイが可哀想になってきた、これからは気をつけよう。
これ以上やるとフェイが壊れかねない、いろんな意味で。
「と、ととと、とりあえず魔物を捌いてみようかなーなんて」
「あはは!あはははは!ゆーますごーいゆーますごーい……ふふふ!ふふふふふ!」
やばい、フェイが完全にぶっ壊れた。
そっとしておいてあげよう、これ以上壊すと戻れなくなるかもしれない。
原因俺なんだけどさ。
◆◆◆◆
「よし、捌けた」
所々深く切ってしまった所や引きちぎった所が目立つけど一応捌けたな。
それにしてもこのナイフ使いやすい。
切れ味も抜群だし、もしかしたら魔物を倒すことも出来るかもしれないな。
「……すぅ、すぅ」
「昨日魔物に襲われておいてよく寝れるな」
フェイは俺が枝や葉をナイフで切り取って繋ぎ合わせて作った簡易寝床ですぅすぅと寝息を立てていた。
何時間もぶっ続けで解体作業してるの見てるだけじゃ眠くもなるか。
「よし、二体とも解体し終えたし一体焼いてみるか」
この時のために集めておいた枝や枯葉を適当に纏める。
イメージ、小さめの炎、軽く燃え移るくらいの炎!
「はっ!」
俺の右手からビー玉くらいの火の玉がゆっくりと枯葉などを集めた場所に向かっていく。
少し時間がたってパチパチと音を立てて燃え始めた。
どうやら成功した様だ。
「それじゃあこの木の棒に突き刺してっと」
臓器を取り除いた魔物に木の棒を差し込み、
某肉焼きセットを思い出しながら作った先っちょがY字に分かれている枝の上に乗せる。
パチパチと火花が飛び散って少しずつ魔物の肉を焼いていく。
「意外と美味しそうな匂いなんだな」
少しずつ焼き目がつき始めていた。
魔物の肉だが特別臭い事はなく普通に焼肉の匂いが漂っていた。
そういえば今日何も食べてなかったな。
解体に集中してたからかな?
焼き始めること1時間、念には念を入れて焦げ目が出るまで焼いて完全に中まで火通ったのを確認した。
食べるか。
ナイフを取り出し端っこの肉を少しだけ切り取る。
切ってみた感じ凄く柔らかいな、よし。
「……美味い」
美味しかった、味付けが無いのが寂しいが本当に美味しかった。
やばい、少しだけ食べたから余計お腹空いてしまった。
でも、魔物の肉だから……
「ぐぎゅるる」
我慢の限界だった。
俺は夢中で肉を頬張った。
ナイフで切り取っては食べ、切り取っては食べを繰り返し30分経つ頃には魔物の肉を食べ終わっていた。
満腹感と疲れで木に登ることも忘れてそのまま眠りについた。