7.それがあればきっと魔物は大丈夫
「さっきのはなんだったんだ?」
「よく分かんないけど、私がゆーまを助けようと思って突撃したらゆーまの中に入っちゃったみたいなの」
なるほど、だから人型の炎みたいになっていたんだな。
よく考えれば人と精霊が融合?したことになるのか?
よく分からんが。
「まぁいいじゃない!魔物を倒す事も出来たんだから!」
「それもそうだな、フェイありがとう助かったよ」
あっ、照れてるかわいい。
「い、いいから早く戻りましょ!」
「そうだな、そうだ!こいつらどうする?」
そう言って俺は若干焼けている2匹の魔物を指差す。
もしかしたら食えるかもしれないからな……俺としては取っておきたいな。
「ゆーまが決めたら?」
「じゃあ持っていくか」
最悪毛皮だけでも使えたらいいのにな。
切り取るナイフも無ければ解体する度胸も無いけどな。
何かの役に立つかもしれないからな。
「寝床よりも魔物退治をどうするかが問題な気がする」
「頑張ってねゆーま」
「何言ってるんだ?フェイもだぞ?俺が守りきれなかったりしたらどうするんだよ、せめて自分の身ぐらい守れる様にならなきゃな」
本当に異世界なんだな。
改めて実感したよ。
「ゆーまは血とか大丈夫なの?」
「大丈夫そうだな……最近たくさん血を見たからかな?」
魔物という事もあるだろうけど別になんとも思わないからな。
自分の血なら二回目だし。
「今日は木の上にでも登って寝た方が良さそうだな」
「寝てる間に来ちゃったらおしまいだもんね」
おしまいとか言うなよ恐ろしい。
今日は早く寝て明日に備えよう。
魔物の事も魔法の事も明日考えれよう。
今日は疲れた。
俺とフェイは川の近くへ移動し、寝られそうな木に登り落ちないように身体を木に括り付けて眠った。
◆◆◆◆
「起きてゆーま、朝だよ」
「ん……おはよう」
どうやら何事もなく夜が明けたらしい。
ここなら大丈夫かもな。
よし、滑らないように気をつけて降りなきゃな。
「よいしょっと」
さぁてどっちから手をつけたもんか……昨日の魔物も大事だけどやっぱり魔法の方が大事だよな。
自分の身を守れなきゃ意味ないし。
「フェイに魔法について詳しく教えて欲しいんだけどさ、何か知ってることある?」
「えっとね、やっぱり慣れてないと昨日みたいな咄嗟の場面で発動しなかったりするから魔力を扱う操作から始めた方がいいと思うの」
確かに、大事な場面で出なかったりしたら意味ないもんな。
魔力を扱う操作?ってはやる価値がありそうだ。
「その魔力を扱う操作と言うのは?」
「簡単に言うとね?ゆーまの体内に魔力が循環しているからその魔力を外に出したり中に入れたりを繰り返すだけで凄く魔法が使いやすくなる」
魔力を出し入れする……話は分かったけど魔力を出し入れする方法が分からないからな。
まずは出し入れする方法から覚えなきゃな。
「どうやって出し入れするんだ?まぁ、見ての通り俺は3歳児で魔法の知識に疎い」
「本当に3歳児なのかは疑問だけどあなたに魔力が流れているのは私がちゃんと見たし、火属性の魔法適正値が上がっているとはいえ火の玉を具現化する事もできたからやり方さえ覚えれば簡単に出来るようになるよ」
あの時はビックリしたな、イメージが大事!とか投げやりなこと言われても出来たからね。
意外と魔法とかに向いてるのかもしれないな。
「一回私がゆーまの魔力を外に出すからその感覚を忘れないように覚えてね」
「おーけー、頼んだ」
フェイは俺の手のひらの上に座り俺の指にそっと手を添えた。
数秒後、指先が少し痺れる様な感覚に襲われた。
うわ、ピクピクしてる。
「今結構な量吸い取ったんだけど体に変化は無い?」
「あぁ、なんか指先が痺れたぞ?長い時間血を止められた後みたいな感じだったな」
痺れている方の手を握ったり開いたりしてみる。
いやぁ痺れた痺れた、まだ若干痺れてるもん。
この感覚を思い出して反芻すれば魔法が使いやすくなるってわけね!
「痺れて……それだけ?痛みとか身体中が怠いとか眠くなってきたとかは⁉︎常人なら動けなくなる量吸い取ったんですけど⁉︎」
「動けなくなる量も吸い取るなよ!余裕で動けるから問題無いけど動けない時に魔物来たらどうすんだよ!俺死ぬぞ⁉︎」
「ニゲル」
逃げるなよ、そこはここは俺に任せて先に行けとかカッコよく決めるとこで……あっ、俺逃げられないや。
「よし、とりあえず魔法使ってみるか!慣れも大事だろうし」
「がんばってね!」
火のイメージ、燃える真紅の炎。
どでかいのじゃないと倒せない敵もいるかもしれない。
大きく、熱く、強く!
燃えろ燃えろ燃えろ!燃やし尽くせ!
「メラガ○ア‼︎」
どこかで聞いた某RPGゲームの技名を叫ぶ俺。
なんというか疲れたな、これが魔力を使うってことか。
50メートル全力疾走くらい疲れたな。
「ゴォォォォォォ‼︎」
「へ?なになに⁉︎すっごい音がするんだけど!魔物⁉︎」
「ゆーま……あれ見て」
フェイが指差す方向へ顔を向ける。
するとそこには……超巨大な火柱が空に向けて放たれていた。
俺がやったの?大きく強くってイメージしたけどさこれはやり過ぎなんじゃないの?
火柱は止まることなく空へと伸びていく。
「ねぇゆーま」
「ど、どど、どうした?」
「魔物が来た時アレ撃てば勝てるよきっと」
そーだね、あれで耐えられるやつは魔王かなんかだな。
確実に魔物の域を超えてるやつだわ。